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北海道新聞・日曜文芸欄の「書棚から歌を」のコーナーをよく見ています。
執筆担当者は北海学園大学教授の田中綾氏。
今回は釈迢空こと国文学者・民俗学者の折口信夫の歌を取り上げていました。
「きさらぎのはつかの空の月ふかしまだ生きて子はたたかふらむか」釈迢空
2月20日の夜、月をしみじみ見上げながら、わが子はまだ「生きて」、必死に戦っているのだろうかと祈るような思いを言語化していると田中綾氏は説いています。
わが子とは最愛の養子・春洋(はるみ)。学問上の弟子で、国学院大教授でもあったそうです。
春洋(はるみ)は太平洋末期の1945年、硫黄島の激戦で亡くなりました。享年38歳。
多数の死傷者・犠牲者を出してまで、なぜ日本は「戦争」を選んだのか。
田中氏はその答えを日本近現代史を専門とする加藤陽子著の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」に求めています。
日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、太平洋戦争と、近代日本はまさに「戦争」という選択肢を軸に歴史を生きて来ました。
でも、たとえば日ロ戦争ではロシア側が積極的で、日本はむしろ戦争から回避しようとしていたことが明かされていて、大変興味深いと田中氏は注目していました。
今、日本は、釈迢空が詠んだこの歌の世相に一歩一歩近づいているような気がしてなりません。
加藤陽子著「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」
*加藤が中高生に行った5日間の集中講義の記録で、2009年に単行本で上梓され、2016年に文庫本で刊行された。第9回小林秀雄賞を受賞している。