「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

仕事、 家族失う働き盛り -- 認知症 長寿国の現実 (4)

2012年07月06日 20時49分21秒 | 介護帳
 
 57才の料理人の男性は、 51才のとき 念願の自分の店を開きました。

 が、 その直後に やる気が失せ、 疲れも取れなくなり、 うつ病を疑いました。

 54才で 若年性アルツハイマーと診断されます。

 店をたたみ、 妻が働いて 家計を支えました。

 けれども、 疲れ切って追い詰められた 妻の求めで離婚。

 現在は生活保護を受けながら、 ボランティアとして 料理の腕を振るっています。

 でも最近は 料理の段取りを考えるのが 難しくなってきました。

 65才未満で発症する  「若年性認知症」 は、 全国で約3万8000人。

 働き盛りの発症例が増えています。

 認知症本人だけでなく、  「介護離職」 という形で 仕事を失う現役世代もいます。

 介護休養の制度も、 実際には 利用するのに気が引けたり、

 会社の協力にも限度があるのが 現実です。

 やむなく解雇された人は、

 世間から置き去りにされ、 価値のない人間になったような 気がするといいます。

 介護・ 看護が理由の退職者は、 2006年からの1年間で 約15万人。

 02年の1.5倍に増えており、 多くは40~50才代です。

 認知症が 現役世代に与える 影響は大きく、

 仕事, 子育て, 住宅ローン, 老親の介護など、

 現役には 高齢世代と異なる問題があります。

 しかし支援が乏しく、 家庭崩壊なども起きているのが 現実です。

 国が 6月に打ち出した新対策には、

 就労継続など 若年性認知症への支援がうたわれています。

〔読売新聞より〕
 
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成年後見  量も質も不足 -- 認知症  長寿国の現実 (3)

2012年07月05日 20時56分00秒 | 介護帳
 
 「息子に殴られる。 助けてください」

 認知症の80代の女性が、 ショートステイの職員に訴えました。

 体のいたる所に あざがあります。

 自治体の担当者が 女性を特養に入居させ、 親子を離しました。

 長男は 熱心に介護していましたが、

 病状が進む母を 受け止めきれず、 暴力に走ってしまったのかもしれません。

 別の80代の女性は、 本人が分からない間に、

 1000万円以上あった預金が 3年でほぼゼロになっていました。

 息子が 借金の返済に使ったのです。

 認知症の被害者は、 高齢者の家庭内虐待の 半数を占めます。

 背景には、 家族の介護負担があります。

 高齢者の判断力の 低下部分を補い、 できるだけ 自立した生活を送るため、

 成年後見制度が導入されました。

 けれども 認知症高齢者が200万人を超え、 一人暮らしも増加するなか、

 量も質も追いついていません。

 ある80代の女性は、 NPOと 「任意後見契約」 を結びました。

 将来、 判断力が落ちたとき 後見人になってもらうため、

 170万円あまりを預けました。

 しかし 約束は果たされず、 6年後 アパートの部屋には、

 腐った食べ物が散乱し、 尿臭がこもる中に 女性が座りこんでいたのです。

 預金が頻繁に引き出され、 健康状態も悪化していました。

 弁護士らが協力して NPOと契約を解除、 社会福祉士が後見することになりました。

 成年後見の申し立ては 年3万件を超えましたが、

 制度を悪用した 詐欺事件などが相次ぎます。

 財産の着服は 2年足らずで550件、 被害総額は約55億円に上ります。

 98%は親族が後見人ですが、 法律家の不正も目立ちます。

 ケアを家族任せにせず、 第三者の後見人に 繋げる仕組みが必要です。

〔読売新聞より〕
 
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初期の症状を把握  集中支援 -- 認知症  長寿国の現実 (2)

2012年07月05日 20時55分25秒 | 介護帳
 
 台所の床に 魚の骨が散らばり、 浴室には汚れた衣類が 積まれていました。

 「上の階から水が漏れている」  という苦情で、

 地域包括支援センター 〔*注〕 の職員が、

 90才代の夫婦が暮らす アパートを訪れたときのことです。

〔*注: 市町村が設置する 福祉の総合相談窓口。〕
  
 問題はないと 夫は言いましたが、 妻の肌着は 便を漏らした跡で 汚れています。

 二人とも 認知症の疑いがありますが、

 その自覚がなく、 介護保険の利用も断られました。

 早めの支援があれば、 普通の暮らしが続けられるのに。

 支援が乏しく 在宅で暮らせない 現状を変えるため、

 国は 認知症の新対策を発表しました。

 5年間で、 看護師や作業療法士などによる  「初期集中支援チーム」 を

 全国に配置します。

 地域包括支援センターが拠点となって、

 認知症が疑われる高齢者宅を 訪問して支援を行ないます。

 激しい症状が出た際に 往診などに当たる、

 「身近型認知症疾患医療センター」 も整備します。

 福井県では、 11年前から  「初期集中支援」 に取り組んでいます。

 65才以上の高齢者がいる 家庭を訪問し、

 認知症の可能性や 生活状況などを調べます。

 疑いがあれば受診を促し、

 介護サービスや財産管理などの 福祉サービスの利用も勧めます。

 認知症が進むと出やすい 徘徊などの症状や、

 介護疲れしないための サービスなども説明します。

 しかし こうした取り組みを 全国で行なうには、

 人材確保や育成など 課題もあります。

 2000年に介護保険が始まりましたが、

 認知症に関しては  「空白の10年」 と言われています。

〔読売新聞より〕
 
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徘徊の父  精神科頼み -- 認知症 長寿国の現実 (1)

2012年07月03日 20時00分36秒 | 介護帳
 
 うつろな目で、 両手をベッドに縛られ、 見舞いのたびにやせ細っていきます。

 入院前はピンピンしていたのに、 足がもつれて立ち上がれません……。

 精神科病院で 自分の父親の姿を 目にしたとき、 男性は足がすくみました。

 この男性の父親は、 69才のとき認知症と診断され、

 やがて徘徊するようになります。

 息子である男性に、 ステッキで殴りかかってくることもありました。

 母親も倒れ、 男性は次第に限界になっていきます。

 かかりつけ医に勧められ、 精神科病院に入院させました。

 その結果が、 冒頭の光景です。

 男性は 必死に介護施設を探し、 半年後に転居させました。

 「当時は知識も支援もなく、 追い詰められた。

 もっと 在宅への支援があれば、

 父から人間らしい生活を 奪わずにすんだのに ……」

 認知症の人の 精神科病院への入院は、

 1999年の3万7千人から、 2008年には5万2千人に増えました。

 うち半数が 6ヶ月以上の長期入院で、

 本人の体力や気力を 落とす危険性があります。

 平均入院期間も 2年7ヶ月に及びます。

 しかし 認知症で入院した人の6割は、

 居住先や支援が整えば  「退院可能」 でした。

 精神科は そもそも治療の場なので、 患者が暮らすのに適してはいません。

 事故を防ぐため 管理的になるし、 プライバシーもありません。

 にも拘らず、 長期入院が増えるのは何故でしょう。

 在宅への 医療や介護サービスが不十分なうえ、

 介護施設も 対応に困ると 入院に頼りがちだからです。

 病院で症状が落ち着いて 介護施設へ移っても、

 暴れたり 他の入居者に迷惑をかけ、 病院に戻される例は 少なくありません。

 認知症の人は 環境が変わると症状が悪化しやすい という特徴を、

 施設側も理解して 対応する必要があります。

 一方 病院側に対しても、 統合失調症の入院が減った分、

 経営のために 認知症高齢者でベッドを埋めている、 という指摘もあります。

 退院できる状態になっても、 疲弊した家族の元へ 支援なしに戻すのは困難です。

 本人と家族の関係が壊れていない 早い段階から、 在宅への支援を始めないと、

 長期入院はなくなりません。

〔読売新聞より〕
 
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高齢者の救急 (3) -- 介護と連携  急変に備える

2012年07月02日 20時07分51秒 | 介護帳
 
 高齢者の救急入院で多いものに  「誤嚥性肺炎」 があります。

 細菌などを含んだ唾液が、 誤って気管側に入って 起こる肺炎です。

 ある病院では、 80才代の救急患者の3分の1を 誤嚥性肺炎が占めます。

 誤嚥性肺炎の原因は、 脳卒中の後遺症や 高齢者のために、

 飲食物を食道側に送るとき 喉がなめらかに動かなくなるためです。

 未然に防ぐには、 医療と介護の連携が必要です。

 担当のケアマネージャーが 高齢者の異変を 速やかに察知して、

 家族に連絡し、 病院に繋げるなどの例があります。

 病院で誤嚥性肺炎が発見され、 手遅れにならずにすみました。

 この病院では 患者が入退院を繰り返さないよう、

 摂食・ 嚥下訓練を行なっています。

 専用のゼリー食や、 とろみがついた食べ物を使い、

 誤嚥しにくい食べ方や 体の姿勢を指導します。

 自宅や施設では、 口の中の細菌を減らす 口腔ケアが再発防止になります。

 普段からケアを担当している 訪問看護師, ヘルパー, ケアマネージャーと、

 担当医らが話し合う会議を 3ヶ月ごとに行ないます。

 顔と顔が見える 関係ができていると、

 異常に気付いた時に 早めに病院に対処できるからです。

 地域での 医療と介護の話し合いの輪が 広がってほしいものです。

〔読売新聞より〕
 
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食べこぼしを減らすには

2012年07月01日 22時41分31秒 | 介護帳
 
 ある介護施設で、 食べこぼしを減らす取り組みを 進めています。

 きっかけは、 入所者が食事のときに付けている エプロンです。

 「赤ちゃんの前掛けのよう。

 尊厳を傷つけているのではないか」

 介護職員が 看護師や理学療法士らを交えて、

 エプロンを外すにはどうしたらいいか 話し合いました。

 その結果、 エプロンをする人は 一人もいなくなりました。

 会話や笑顔も増えるので、 家庭でも 食べこぼしを減らすことは大切です。

 まず大事なのは、 食事中の姿勢を安定させること。

 椅子に座ったとき、 足裏が踵まで しっかり床に付くようにします。

 足が浮いていたら、 足元に踏み台などを置きます。

 また、 背もたれや肘掛けと体の間に クッションを挟んで、 体を安定させること。

 正しい姿勢は、 誤嚥のリスクも減らすことにも 繋がります。

 皿と口の距離も 大切です。

 皿を手で持ち上げられなければ、 皿を置く位置を 少し高くします。

 皿と口が近づくと 食べやすくなります。

 このほか、 昼食前に 口の周りや舌を動かす 体操を行ない、

 カラオケや本の音読も 取り入れています。

 声を出せばお腹もすくし、 姿勢の安定に必要な 腹筋も鍛えられます。

 食べ物を口に運ぶまでに 箸やスプーンからこぼしてしまう場合は、

 作業療法士や理学療法士に 相談しましょう。

 食べる姿勢や、 手に麻痺があっても

 持ちやすいスプーンや すくいやすい形状の器などについて 尋ねます。

 口に入れたあとに こぼれる場合は、 歯科医師や言語聴覚士に 相談します。

 食べ物を喉へ送り込む 舌の機能が衰えているなら、

 食べ物を 舌の奥の方に入れるなどの 工夫をするだけで、 効果があります。

 認知症の場合には、 食事中であることを忘れ、

 食べ物を口に入れたまま こぼすことも。

 「続きを食べましょう」 などと 声かけをするといいでしょう。

 食べこぼしが続き、 低栄養で 全身の機能低下にならないためにも、

 周囲の支えが必要です。

〔読売新聞より〕
 
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胃ろう中止  「患者意向尊重」

2012年06月29日 20時20分48秒 | 介護帳
 
 日本老年医学界は、 胃ろうなどの栄養補給について、

 導入や中止, 差し控えを判断する際の 指針を示しました。

 人口栄養補給を導入する際は、

 「口からの摂取が可能かどうか 充分検討する」 などと指摘。

 延命が期待できるとしても、 本人の意向などにそぐわない場合、

 複数の医療者と 本人・家族が話し合った上で 合意すれば、

 差し控えが可能としました。

 一度開始したあとでも、 苦痛を長引かせるだけの 状態になったりしたら、

 再度話し合って 合意すれば、 栄養の減量や 中止もできるとしました。

 医療側に対しては、

 患者側が適切な選択ができるよう、 情報提供することを求めています。

 近年、 胃ろうが急速に普及しました。

 認知症で 終末期の寝たきりの患者でも、 何年も生きられる例が 増えています。

 そのような延命が 必ずしも本人のためになっていない、 との声が出ていました。

〔読売新聞より〕
 
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口から食事、 こだわって

2012年06月28日 21時54分52秒 | 介護帳
 
 口から食べることは、 楽しみ, コミュニケーションに加え、 免疫力も高めます。

 高齢者施設で関心事の1位は どこでも食事。

 ところが 口から食べにくくなると、 一番の楽しみが禁じられ、

 胃ろうなどがされます。

 でも胃ろうをしても 口からは食べられるので、 諦めてほしくありません。

 口から食べるには、 噛んで 呑み込まなくてはなりません。

 噛むときに必要なのは、 食べ物を認知する能力です。

 食べ物が口に入った瞬間に、 食べ物の種類によって、

 その固さなどに合った 噛み方を判断します。

 他に、 噛む力, ほおや舌の動き, 唾液も必要です。

 歯も大切ですが、 歯がなくても 噛む能力がある人はいます。

 噛むことの目的は、 食べ物を唾液と交ぜながら 呑み込める形にすることです。

 刻んだ食べ物を 口に入れるだけでは 呑み込みやすくなりません。
 

 ある女性は、 胃ろうを入れた途端、 元気がなくなってしまいました。

 最期まで口から食べられるように、
 医師, 歯科医師, 歯科衛生士, ケアマネージャーらが連携し、

 食べる支援をした所があります。

 マッサージや口腔ケア, 入れ歯の調整,食べるときの姿勢の矯正などをして 4ヶ月、

 普通食が食べられるようになりました。

 胃ろうは抜き、 1年後にはステーキを食べたのです。

 口から食べるには、 本人の意志がないとできません。

 だからこそ 食べることは生きることなのです。

〔読売新聞より〕
 
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心に寄り添うケアを (3)

2012年06月26日 20時04分12秒 | 介護帳
 
(前の記事からの続き)

 認知症の薬は、 これまで ドネペジル (アリセプト) だけでしたが、

 昨年、 ガランタミン, リバスチグミン, メマンチンが 新たに加わりました。

 認知症を治すことはできませんが、 進行を遅らせることができます。

 メマンチンは 異なる作用の薬なので、 他の3種と併用もできます。

 副作用は、 最初の3剤は 吐き気や食欲不振, 中には落ち着かなくなる方もいます。

 リバスチグミンは張り薬なので、 かぶれが出ることもあります。

 メマンチンには、 目まいや眠気, 便秘などが見られます。

 BPSDの軽減に、 漢方の抑肝散 (よくかくさん) が よく使われます。

 認知症の精神症状に 非常に効果があるとされ、 副作用も少なく、

 攻撃性が抑えられた時に 意欲が回復される方もいます。
 

 認知症のリハビリには、

 脳機能に働きかける 「脳トレーニング」、 記憶を引き出す 「回想法」、

 体と脳の働きの関連に 注目する  「認知運動療法」 などがあります。

 リハビリは 楽しくなければ効果はありません。

 家族やスタッフが褒め、 認めてくれることが大事です。

 やり遂げて嬉しいという 達成感が必要です。

 リハビリは 前頭葉の活性化につながります。

 年齢を重ねても、 海馬で 神経細胞が新たに作られる という報告もあります。
 

 個人だけでは支えきれなくなるのが 認知症介護。

 遠慮なく相談すれば、 道は開けるでしょう。

 家族の健康も考え、 ケアと医療の連携も必要です。

 いい介護をするには、 介護サービスやご近所の力を借り、

 心の余裕を 持つことが大切です。

 面倒かけたり、 かけられたり、 声を掛け合う世の中に なってほしいものです。

〔読売新聞より〕
 
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心に寄り添うケアを (2)

2012年06月25日 20時33分55秒 | 介護帳
 
(前の記事からの続き)

 認知症介護研究・ 研修センターの  「センター方式」 という手法は、

 特に行動障害のある 高齢者に有効です。

 色々な角度から スタッフ全員で本人を観察し、 課題を分析する手法です。

 例えば、 ある方の 24時間の気分の変化を 記録してみると、

 スタッフが忙しい時に 攻撃的になることが分かりました。

 「私を置いて みんな行っちゃった」 など ご本人の言葉を拾い、

 寂しさが隠れていることにも 気付きました。

 心の中にためた 悲しみをはき出し、 心を軽くします。

 「独りぼっち」 と言われたら、 そばにいることが伝わるよう 手を握ります。

 こうしたケアは、

 「パーソンセンタードケア (その人を中心にした介護)」 といいます。

 その人その人の感情に 寄り添ったケアです。

 パーソンセンタードケアは、 専門家だけでなく家族もできます。

 歩き回り (徘徊) をする人は、

 ここには自分の居場所がないと 感じているのかもしれません。

 その思いに寄り添い、 一緒について散歩などしてみましょう。

 ヘルパーや外部の力を 借りることも必要です。

 暴言, 暴力, 歩き回りがあると、 周囲は 「なぜ」 と考えがちですが、

 「なぜ」 をひとまず脇に置いた  「4W1H」 で接します。

 「いつ、 どこで、 誰が、 何を、 どのように」 を 交ぜながら話し、

 「なぜ」 を探していきます。

 歩き回りなら、

 「どこへ行くんですか?」  「誰が待ってるんですか?」  などと聞くうちに、

 心の奥の気持ちに 辿り着くこともあります。

(次の記事に続く)

〔読売新聞より〕
 
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心に寄り添うケアを (1)

2012年06月24日 21時32分26秒 | 介護帳
 
 アルツハイマー型認知症は、 脳が萎縮し、

 新しいことを記憶する 海馬がやせるもので、 全体の50%を占めます。

 次に多いのが、 脳卒中などが原因の 脳血管性認知症や、

 幻視が特徴のレビー小体型認知症です。

 認知症の症状には、

 「中核症状」 と 「行動心理症状 (BPSD)」 があります。

 前者は 「記憶障害」 や、 時間や場所が分からなくなる  「見当識障害」、

 自然な行動が取れなくなる  「実行機能障害」 が含まれます。

 後者は、 妄想, 歩き回り (徘徊) 〔*注〕, 暴言, 暴力, 抑うつなど、

 人によって 様々な症状が表れます。

 〔*注: 「徘徊」 という言葉は、  「目的もなく歩き回ること」 です。

  けれどもご本人には 必ず何かの目的があります。

  従って、 徘徊ではなく  「歩き回り」 という言葉を 使いたいと思います。〕

 例えば 気分が悪くなっても、

 認知症の人は それを訴えることができないので、 BPSDの症状で表すのです。

 無理にやめさせようとすると、

 緊張やイライラが増して、 BPSDが悪化してしまいます。

 BPSDのケアは、 体調の安定と 人間関係が大切で、

 ご本人の尊厳を守り、 穏やかな生活に向ける 意識が大事です。

 認知症の人の 暴言や妄想に、 家族は非常に心を痛め、

 介護者の方が先に うつ状態になることもあります。

 認知症の人の立場に立って 考えることは基本ですが、

 行動の裏にあるものを考えているうちに 追い詰められることもあり、

 考えすぎてもまずいでしょう。

(次の記事に続く)

〔読売新聞より〕
 
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認知症の人と 上手に会話

2012年06月23日 20時44分11秒 | 介護帳
 
 傾聴ボランティアというものがあります。

 認知症の人や 独居の高齢者, 精神障害を持つ人らを訪ね、

 その人の話を じっくり聴くことで、 相手の心を癒します。

 最近は全国各地で 養成講座が開かれています。

 認知症の人は 若い頃のでき事は よく覚えていますが、

 最近のことはすぐ忘れ、 同じ話を繰り返すことも多くあります。

 傾聴ボランティアは、 何度目でも 始めて聴いたように対応します。

 でも 失敗することもあります。

 ある施設で 認知症性の女性と話が弾み、

 再訪したとき、 女性に  「また来ました」 と声をかけました。

 女性は さっと顔色を変え、 向こうへ行ってしまいました。

 ボランティアのことを覚えておらず、 動揺したのでしょう。

 以後 このボランティアは、  「こんにちわ」 と声をかけ、

 相手が覚えてなければ、 初対面のように接しています。

 認知症の人は、  「物盗られ妄想」 もあります。

 それを頭から否定するのもいけませんが、 同調するのも良くないといいます。

 否定はお年寄りの気分を害するし、 同調は思い込みを強めるからです。

 「財布がなくなったら大変ですね。 一生懸命働いて 貯めたお金ですものね。

 どんな仕事をなさっていたんですか」

 このように 若い頃の話題に持っていったりします。

 傾聴は 相手を否定せず、 話を聴かせていただくという 謙虚な姿勢が大切です。

 特に、 その人が輝いていた 若い頃の話を 聴くようにすると良いでしょう。

〔読売新聞より〕
 
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高齢者の救急 (2) -- 自然な最期 家族の選択

2012年06月22日 12時07分45秒 | 介護帳
 
 Kさん (91才) は 呼吸が苦しくなって救急搬送され、

 病院で一旦は落ち着きました。

 しかし高齢者は 容体が急変することがよくあり、

 医師は心肺蘇生について 息子夫婦に尋ねました。

 夫婦の答は、

 「心臓が止まったら、 自然な経過に 任せたいと思っています」。

 Kさんは10年前から 息苦しさで救急搬送されることが増え、

 89才で脳梗塞を起こして、 介護施設に入りました。

 嫁のNさんが 見舞いに行くたびに、 Kさんは帰りたがりました。

 Nさんは語ります。

 「母をなだめるのは 辛いことでした。

 体のために 好物も食べられず、 ストレスを感じていたようです。

 好きなようにさせてあげたい 気持ちはありました」

 「人にとって、 死を迎えるのに いい時期とは何だろう、 と考えていました」

 夫婦は、 Kさんに 人工呼吸や胃ろうなどの延命処置は しないことに決めました。

 施設で 心肺停止で見つかったときは、 救急車を呼ばないことも伝えました。

 Nさんは、 葬儀社と遺族の間に入って、

 死後の手続の相談に乗る  「葬儀コンサルタント」 の仕事をしています。

 生前の意思を書き留めておく  「エンディングノート」 の編集を行なっています。

 最初のページは  「救急隊の方へ」 と題し、

 心肺蘇生を希望するかどうか、 本人が意思表示することにしました。

 意識不明になったとき 延命治療を希望を記す ページも作りました。

 残される家族の 負担を軽くするためです。

 その後 Kさんは、 安らかに息を引き取りました。

〔読売新聞より〕
 
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高齢者の救急 (1) -- 見込みがなくても心肺蘇生

2012年06月20日 20時32分19秒 | 介護帳
 
 仰向けになった高齢者にまたがり、

 両手で胸を強く押しつける  「胸骨圧迫」 という心肺蘇生術。

 衰えた体には 負担になる処置です。

 食べ物が喉に詰まって 呼吸が止まる 緊急の事故などで、

 119番を呼ぶのは当然です。

 しかし高齢者の場合、 心肺停止は  「長年の病気の終着点」 と思われ、

 「お別れの時期」 を 受け入れる時かもしれません。

 ある高齢者施設で、 心肺停止で救急搬送された 664人を調べたところ、

 脳の機能が回復して 意識を取り戻したの0.9%でした。

 しかも回復した例は、 発症してすぐに処置できた 場合に限られていました。

 別の病院では、 施設から救急搬送された 31人の高齢者のうち、

 生きて退院したのは6人。

 全員に 重い障害が残りました。

 事故の場合を除き、 心肺停止した時は 蘇生をしないことを、

 入居者・ 家族と話し合って 決めている施設も増えてはいます。

 しかし  「救急車を呼ぶのが 内部のルール」 などの理由で、

 冷たくなり始めた高齢者を 搬送するケースもあるといいます。

 ある医師は こう話します。

 「高齢者に胸骨圧迫は しなくてもいいのではないかと、 正直思うことがある。

 施設入所時に全員から 蘇生の希望を聞くのを ルール化すべきだ」。

 見込みのないことが分かっているのに 行なわれる蘇生術は、

 患者と医療者の双方にとって 良いことではありません。

 敬意を持った 見送り方ができるよう、 個々の施設で話し合うときです。

〔読売新聞より〕
 
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口腔ケアで肺炎防止

2012年06月19日 20時33分45秒 | 介護帳
 
 肺炎は、 がん, 心臓病, 脳卒中に次いで、 死亡原因の4番目です。

 97%が65才以上で、そのうち6割が誤嚥性肺炎です。

 注意が必要なのが、 寝ているときなど 気付かないうちに起こす

 「不顕性 (ふけんせい) 誤嚥」 です。

 寝ている間に、 細菌を含む唾液などが 気管に流れ込むことが原因です。

 予防には口腔ケアが必要で、 肺炎の発症を 4割減らせた例があります。

 食後と就寝前に、 歯ブラシや歯間ブラシで、

 歯や隙間に付着している 細菌の塊を 落とすことが大切です。

 洗口液は 細菌の付着は防げますが、 汚れは落とせません。

 歯磨き剤は 必ずしも必要ありませんが、

 歯ぐきがやせて出てきた 歯の根元部分は、

 フッ素入り歯磨きで 入念にブラッシングします。

 入れ歯洗浄剤は過信せず、

 1日1回は 入れ歯を外して、 ブラシで磨き 水洗いしましょう。

 舌やほお、 歯ぐきは、 粘膜を傷つけないよう スポンジ製などのブラシを使います。

 高齢者は ブラシで落とした汚れを 誤嚥する恐れがあります。

 口腔用のウエットティッシュで拭き取ったり、 吸引ブラシで吸引することが必要です。

〔読売新聞より〕

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 僕の勤務先のショートステイでも、 お年寄りは 食べかすが非常に残りやすいです。

 歯の隙間が大きくなって かすが入りやすく、

 感覚が鈍っているので それを感じにくく、

 舌や唾液で取ることも 難しくなっているのでしょう。

 認知症で ご自分では磨けず、 介助することに 抵抗を示す人もいるので、

 きれいにするのが 難しいこともあります。

 それがうまくいったとき、 ささやかな喜びを感じるものです。
 
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