「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

治療の継続について (2)

2008年08月30日 21時07分37秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55707667.html からの続き)

 境界性パーソナリティ障害の人が 治療を続けられない理由には、

 もうひとつの 境界性パーソナリティ障害の症状があります。

 それは 「見捨てられ不安」 です。

 対人関係の不安定さが 医師との間にも 生じてしまいます。

 人を信頼できない,ちょっとしたことで 見捨てられたとか

 突き放されたと 感じてしまうという、

 この病気の特徴が 治療の中断につながりやすい 宿命にあります。

 境界性パーソナリティ障害の人は、 「ワラにもすがる」 思いで 医師を頼ります。

 「どうせ この先生も 私を見捨てるに違いない」

 そういう気持ちが 根底にあることが多いのです。

 そして、この予測は的中します。

 いや、的中したと 思い込んでしまうのです。

 患者は医師に  「共感の言葉」 を求めますが、

 境界性パーソナリティ障害では 共感するだけでは 治療にならないので、

 医師はあえて そのようなことを言いません。

 患者は 「私を治す気が ないんじゃないか」 と感じて、

 不審に陥ってしまうのです。

 その根にあるのが 見捨てられ不安です。

 相手が自分に 手を差し伸べてくれないと感じ、

 不信感を抱いて 治療が続かなくなってしまいます。

 
 また、診察時間に対して 不満を抱くこともよくあります。

 保険診療の枠内で 治療をする限り、

 診療時間には制限がありますし、予約時間も目安に過ぎません。

 でも 境界性パーソナリティ障害の人は、

 自分の診察時間が遅れたり、延ばしてもらえないことに 不満を訴えます。

 人を頼ろうとする余り、客観的な判断が できなくなってしまうのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55731322.html

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕
 
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治療の継続について (1)

2008年08月29日 21時54分36秒 | BPDの治療について
 
 一般には、境界性パーソナリティ障害は 治りにくいと言われていますが、

 その大きな理由は 治療を続けられないためであり、

 治療を続ければ 回復するケースが はるかに多いことが 分かってきています。

 境界性パーソナリティ障害の治療で 最も必要なのは、

 「治療を続けること」 です。

 境界性パーソナリティ障害では、治療を中断するために 回復しない人が大部分です。

 「治療を続けない」 こと自体が、境界性パーソナリティ障害の 症状と言えるのです。

 治療を継続できないのは、 「めくるめく信頼と罵倒」 が原因です。

 相手に全幅の信頼を 寄せたかと思うと、打って変わって 最低の酷評をし、

 特には暴力を 振るうこともあります。

 これは特に、境界性パーソナリティ障害の人が 頼りたいと思っている人に対して、

 顕著に現れます。

 医師はその典型ですから、治療のあらゆる段階で、

 信頼していた医師への 失望や批判が必ず起きます。

 医師のわずかな言動で 途端に不安定になり、

 暴言や自傷行為にいたることが 不可避とも言えます。

 主治医を見限っては ドクターショッピングをする パターンになってしまい、

 これでは 回復が望めません。

 このようなことは、境界性パーソナリティ障害の治療の

 9割以上で 起きていると考えられます。

 主治医を決めたら、その治療を受け続けることが 何よりも重要です。

 次々に医師を変えると、それは 「治療を続けている」 ことにはならず、

 「断続的な受診を 繰り返している」 だけに 過ぎないのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55719268.html

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (8) (電話相談,治療者のためのコンサルテーション)

2008年07月28日 20時21分46秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55299142.html からの続き)

(3) 電話相談

 弁証法的行動療法 (DBT) の 3つ目の要素である 「電話相談」 です。

 セッションとセッションの間の 電話相談には、3つの重要な働きがあります。

 第一に、集団療法で学習したスキルを

 日常生活に活かすための 「コーチング」 です。

 危機的状況にあったとき 治療者と電話で話し合い、

 具体的なスキルを使って 問題解決のための行動が 取れるようにします。

 患者は自分で 葛藤場面に対処できたという 「成功体験」 を 積むことができます。

 第二は、危機的状況でないときに 支援を求める練習です。

 BPD患者は 命の危機以外では 助けを求めるのが苦手なことが多く、

 治療者は 危機のみに対応するため、

 かえって患者の自殺行動などを 強化してしまうこともあります。

 自殺行動や未遂のあとでは 電話を受け付けず、自殺衝動に駆られているときか、

 危機以外のときに サポートを求める練習をします。

 第三に、次のセッションまでに 未解決の問題を軽減しておくことです。

 治療者と患者の間の 葛藤や誤解を解きほぐすためです。

 
(4)治療者のための コンサルテーション・ミーティング

 治療者に対するスーパーバイズや コンサルテーションも、治療の重要な一部です。

 週1回 2時間のミーティングに、スタッフ全員が参加します。

 DBTでは 治療者の間で 意見が分かれることも多く、

 治療者が治療枠を 逸脱してしまう場合もあります。

 治療経過の分析や確認をし、治療者が 患者に否定的な態度を 取ることを避け、

 バーンアウトの予防を目指します。

 
●おわりに

 創始者のリネハンは、DBTを ジャズの集団即興演奏に例えます。

 DBTは マインドフルネスや問題解決療法など、

 多くの治療技法が 体系的にまとめられています。

 治療者は患者の 病態や状況に合わせて、適切な技法を選択し、

 柔軟に対応していくことが 要求されます。

 患者が発した 音に対して、治療者は 協和音が取れるよう、

 技法を駆使して 曲を奏でていくことが 大切なのです。

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (7) (集団療法 5)

2008年07月27日 20時36分29秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55287176.html からの続き)

4.苦痛耐性スキル

 人生において、苦痛を完全に除去することは 不可能ですから、

 事実を受け入れ、自分を変えていく 努力が必要です。

 苦痛を受容することができれば、環境を変えようとするのではなく、

 感情を抑えずに受け止め、辛い思考や行動に 気付くことができます。

 危機的な状況を 乗り越えるために、次のことが指導されます。

・ストレスへの接触を減らしたり、注意をそらすようにする

・自分を元気づけ、優しくすることによって 自分を慰める

・ネガティブな体験を ポジティブな体験に置き換えるようにし、

 その時の状態を改善する

・ストレスを許容し、不適切な行動をしないことの メリット・デメリットを考える
 

 苦痛耐性スキルには、短期的な苦痛に耐えるための 「危機に対処するスキル」 と、

 長期的な苦痛に耐えるための 「現実を受け止めるためのスキル」 があります。

 短期的な 「危機に対処するスキル」 としては、次の2つが挙げられます。

○辛いことから離れるようにする

・お茶を飲んだり、スポーツやガーデニングなど、何らかの活動をする

・ボランティアなど社会に貢献する

・自分と他人を比較してみる

・感動的な本を読んだり、映画や音楽で 感情を変える

・苦痛をしばらく棚上げしておく

・心を落ち着けながら、テレビを見たり 何かに没頭する

・氷を握りしめたり、熱いシャワーを浴びたりして 感覚に集中する

○「今」 の価値を高める

・リラックスできるシーンを イメージする

・苦痛の中から、目的,意味,価値を見つけたり、作り出していく

・神仏に心をゆだねてみる

・体をリラックスさせたり、マッサージをしてみる

 微笑んで表情を変えてみる

・「今」 していることに 注意を集中させる

・「自分は頑張れる」 と繰り返し言ってみる

 長期的な 「現実を受け止めるためのスキル」 は、

 マインドフルネス・スキルが適用されます。

 「呼吸を観察するマインドフルネス」 「自己覚知のためのマインドフルネス」

 「微笑」 のスキルを通して、現実の苦痛を 受け入れるようにしていきます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55311814.html

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (6) (集団療法 4)

2008年07月26日 20時51分21秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55275093.html からの続き)

3.情動調節スキル

 BPD患者にとって、感情のコントロールは 基本的な問題です。

 情動調節スキルでは、否定的な感情を 抑制するのではなく、

 自分の情動を理解して 名前をつけ、今ある感情を受け止め、

 いかに変化させていくかを 学びます。

・情動の本質や メカニズムを理解する

・「今ここで」 の感情を観察し、描写する

・ネガティブな感情を軽減させる

・ポジティブな感情を増加させていく

 できるだけポジティブな 体験をするように努め、

 それに気持ちを向けることによって、ポジティブな感情を 増やしていきます。

・ポジティブな感情を積み重ねる

・統制力を養う

・感情的になる前に対処する

・身体疾患の治療をする

・バランスの良い食事

・感情を変動させる薬物を避ける

・バランスの良い睡眠
 

 また、ネガティブな感情に同化せず、それと向かい合う 態度や行動を取ることにより、

 ポジティブな感情に 変化させていくスキルとして、

 「OPPOSITE ACTION」 があります。

 感情とは反対の 行動を取るということで、

 例えば、怒りを感じているが 微笑んでみる、ということです。

 これは、わき起きた感情が適切でなく、

 過剰な反応である場合のみに 実施することが必要です。

 手順としては、まず マインドフルネスを通して 今の感情に気付き、

 自覚することが重要です。

 そして その感情を受容したのちに、

 「OPPOSITE ACTION」 が できるよう訓練を重ねます。

 例えば 過剰な怒りを感じたときには、微笑みながら その場を立ち去ることによって、

 怒りが治まり、衝動的な行動が 抑えられるといいます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55299142.html

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (5) (集団療法 3)

2008年07月25日 21時24分27秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55263849.html からの続き)

2.効果的な対人関係スキル

 患者自身の自尊感情を 維持しながら、相手の立場も 理解して上で、

 自分の意見や希望を 主張できるように学習します。

 「DEARMAN」 「GIVE」 「FAST」 という

 3つのロールプレイを行ないます。

 「DEARMAN」 は、以下のものの頭文字です。

 状況の説明 (Describe)

 感情や意見の表現 (Express)

 相手の立場を理解しながら 自分を主張する (Assert)

 相手への強化 (Reinforce)

 目的に集中し、マインドフルな状態を保持 (Mindful)

 自信を持って 有能に振る舞う (Appear Confidence)

 ギブアンドテイクで代替策を提示 (Negotiate)
 

 「GIVE」 の頭文字。

 攻撃や批判をせず 穏やかに接する (Gentle)

 相手に耳を傾けて 興味を持つ (Interested)

 人の要求や意見を 受け入れる (Validate)

 ユーモアを持って 気楽な態度でいる (Easymanner)
 

 「FAST」 の頭文字。

 自分と他人に 公平でいる (Fair)

 へりくだりすぎない (Apologies)

 自分の価値観を貫く (Value)

 正直になる (Truthful)
 

 これらも詰まるところ、我々が日常で必要な 対人関係ですね。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55287176.html

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (4) (集団療法 2)

2008年07月24日 22時26分31秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55249062.html からの続き)

1.マインドフルネス・スキル

 マインドフルネス・スキルは 東洋の禅の瞑想を 基礎にしていますが、

 西洋の黙想とも 通底しています。

 内面に起こる 感情や思考、また それによって起こる 行動に対して

 自覚をするスキルです。

 ストレスに対して、観察,言語化,参加の 段階を通して、

 リラックスしていけるようにします。

 マインドフルネスは、集団精神療法の中核的なものです。

 BPDの機能不全行動 〔*注〕 に 有効なスキルです。

〔*注:

・自己の調節不全 (不充分な自己感覚,空虚感)

・行動の調節不全 (衝動性,自己破壊的行動,自殺行動)

・対人関係の調節不全 (混乱した人間関係,見捨てられ不安)

・認知の調節不全 (離人症,解離) 〕
 

 弁証法的行動療法では こころの状態を、

 「理性的なこころ」 「感情的なこころ」 「賢明なこころ」 の 3つに分けます。

 「理性的なこころ」 は、葛藤に直面したとき

 理性的・論理的に考え、柔軟性に欠けた状態です。

 「感情的なこころ」 は、思考や行動が 感情に支配され、

 事実を拡大・歪曲し、論理的思考が できなくなっている状態です。

 「賢明なこころ」 は、「理性的なこころ」 と 「感情的なこころ」 が

 偏りなく 統合された状態を言います。

 習熟した禅僧の、「直感的に獲得される知」 の 豊かなこころの状態です。

 マインドフルネス・スキルは、「賢明なこころ」 を 得るための技法です。

 呼吸などを通して、まず 身体感覚に気付き、次に 自分の感情に気付くようにし、

 ありのままの自分を 受け入れる訓練をしていきます。

〔*: 僕は以前、「感情モニタリング」 というワークショップを受け、

 これと同じことを やった経験があります。〕

 マインドフルネスでは、患者側の 「是認」 が不可欠といいます。

 また、宗教を基礎にした訓練は 患者にとって 不安な場合があるので、

 治療者は思いやりを持って 傾聴し、観察していきます。

 患者の感情や思考を フィードバックし、

 言語化されていないことを 明確に表現していくことが有用です。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55275093.html

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (3) (集団療法 1)

2008年07月23日 20時30分29秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55160230.html からの続き)

(2) 集団精神療法 -- スキルトレーニング

 個人療法に続いて、弁証法的行動療法の 二つ目の要素である、

 集団精神療法について 述べていきます。

 BPD患者に 欠けているといわれる、

 対人関係や自己コントロールなどの 力を付けるために、

 次の4つのスキルが 教えられます。

1.マインドフルネス・スキル

  心と体の 感覚を豊かにし、「今ここで」 の 自分の状態に気付く

2.効果的な対人関係スキル

  相手の意見を尊重し、自分の意見も 適切に主張する

3.情動調節スキル

  過剰な怒り,恐れ,不安などの 感情をコントロールする

4.苦痛耐性スキル

  日常生活の中で ストレスに遭ったとき、自傷行為などをせずに対処する
 

 標準的には 1年を1クールとしています。

 個人療法と並行して 受講しなくてはなりません。

 4回以上 欠席した場合は、ドロップアウトとされます。

 週に1回 2時間のグループで、参加人数は 6~8人が理想です。

 主セラピストと副セラピストの 2名のリーダーで運営されます。

 ここでは、個人的な 問題行動や精神問題については 取り扱わず、

 各スキルについてのみ 学びます。

 講義形式で行なわれ、必要に応じて 患者とのロールプレイを行ないます。

 毎回課題が出されて、

 日常生活の中で マニュアルと講義資料を使いながら 実践をします。

 上の4つのスキルについて、ひとつずつ説明していきます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55263849.html

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (2) (個人療法)

2008年07月16日 23時02分58秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55145497.html からの続き)
 
 DBTは 以下の4つの要素で 構成されています。

(1) 個人外来精神療法

(2) 集団精神療法 (スキルトレーニング)

(3) 電話相談

(4) 治療者のコンサルテーション
 

(1) 個人外来精神療法

 患者の問題行動を扱い、スキルの強化を目指します。

 集団療法と並行して 行なわれますが、

 週1回の個人療法が義務づけられ、参加しない場合は 集団療法には参加できません。

 ダイアリーカードを使って、1週間の振り返りをします。

 自傷行為や自殺行為の 種類や頻度、怒りや悲しみなどが 出てきた回数、

 取り入れたスキルの 種類と回数などを報告し、治療者と話し合います。

 集団療法で学習したスキルを 復習しながら、不適切な言動をセーブして、

 適応性の高い言動に 置き換えられるようにしていきます。

 また、治療を妨げる 患者自身の 「問題行動の動機」 を明らかにして、

 解決していき、治療を続けていけるようにします。

 「行動連鎖分析カード」 を利用しながら、患者の弱さに影響する 環境因・直接因,

 問題行動,問題行動の結果,替わりとなる適応行動について、分析していきます。

 できごとの連鎖を分析し、原因と行動の連鎖を 断ち切り、

 行動と結果の連鎖を 断ち切るのです。

 
 治療においては、重要度の高い 問題行動から治していきます。

 まず第1ステージは、自殺行動,大量服薬など 命に関わるもの、

 その他 著しく生活を阻害する行動です。

 次に第2ステージは、性的虐待など 過去に受けた外傷体験や、

 未処理のトラウマについて 扱います。

 PTSDに有効とされる、リラクゼーションや行動的治療が 行なわれます。

 第3ステージでは、患者の自尊心の獲得を 目指し、

 患者が自分自身を信頼し、自分の感情や行動を 容認できる力を 確立していきます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55249062.html

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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境界性パーソナリティ障害の 弁証法的行動療法 (1)

2008年07月15日 21時59分25秒 | BPDの治療について
 
 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) という本から、

 「 弁証法的行動療法 (DBT) 」 について記します。

 弁証法的行動療法は 認知行動療法の一種で、

 1987年に 米国の行動心理学者 マーシャ・リネハンによって 開発されました。

 自殺行動や リストカット,ODなどの 自傷行為に対して、

 多くの有効性が 実証されています。

 抑鬱,不安、解離などにも 治療効果が大きく、

 対人関係の改善などが 長期的に維持されるといいます。

 BPDだけでなく、摂食障害やPTSDなどにも 適用が広げられています。

 
 DBTは 弁証法が基本原理になっています。

 弁証法とは哲学用語で、

 ひとつの命題 (テーゼ) には 必ずそれに反する命題 (アンチテーゼ) があり、

 その矛盾を解決するためには、

 両者をひとつ上の次元で 統合 (止揚/アウフヘーベ ン) するという考え方です。

 「正」 → 「反」 → 「合」 で表されます。

 そうして新たにできた 上の次元の命題には、また再び その反対の命題が存在し、

 さらにそれらを 高い次元で統合していきます。

 それを繰り返して、認識は変化し 進んでいくというものです。

 このように弁証法は、

 現実を 「相互関係」 「統合」 「変化」 の 3つの軸で説明しますが、

 これは BPDを理解する 手がかりになります。

 例えば BPD患者は、自分のアイデンティティに 混乱と不安定性を抱えており、

 これは 人との 「相互関係」 を 実感できていないことによります。

 弁証法の最初の段階の 失敗と言えるでしょう。

 また、極端な二分思考を持っていて、現実の複雑さや矛盾を 理解することが困難です。

 BPD患者は、テーゼまたはアンチテーゼの どちらかに捕らわれ、

 統合ができないと考えられます。

 一方、弁証法は 治療にも組み込まれています。

 治療者は、患者の 「変化」 を促しながら、同時に、

 そのときの ありのままの自分を 「受容」 することを 患者に求めます。

 実際には、治療者は患者に対して、不適切な言動の 原因を説明し、

 そういう行動を取ってしまうのは 致し方ないことだと是認します。

 そうすることによって、患者の現状を 「受容」 し、

 その上で 問題行動の解決策を話し合い、「変化」 させていくことを支援するのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55160230.html

〔 「パーソナリティ障害」 福島章 (日本評論社) より 〕
 
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弁証法的行動療法

2008年06月05日 15時01分06秒 | BPDの治療について
〔http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/48490642.html から転載〕

 「パーソナリティ障害がわかる本」に 人格障害の治療として、

 境界性パーソナリティ障害の 治療を中心に 述べられています。

 その中で、最も有効な 療法のひとつとして

 注目されているのが 「 弁証法的行動療法 (DBT) 」 です。

 弁証法的行動療法 (DBT) では、

 完璧な愛情か 完全な絶望かという ボーダーの人の 二分化された見方を、

 弁証法的に乗り越えていく、思考や行動を 身に付けていくのです。
 

 DBTの 中核的な戦略として、 「有効化」 と 「問題解決」 があります。

 一般にボーダーの人は 自己評価が低いため、

 自分のやったことは 悪いことだ,価値がない,意味がないものだという、

 「無効化」 をしてしまいます。

 それに対して 「有効化」 は、ボーダーの人の 行動や感情の中にある、

 プラスの側面や 意味を見出し、ポジティブな価値を 認めることです。

 適切な言動では ないかもしれないが、現状への適応として、

 本人にとっては意義がある と理解するのです

 全てを丸ごと受け止める 受容ではなく、部分的な肯定です。

 それは、全か無かの 二分化した思考を 是正していくことになります。

 自分の愚行の中にも 一分の理があった と知ることで、

 全面的な否定に 陥ることを免れるのです。

 
 受容的な 「有効化」 に対して、「問題解決」 は 変化を求めるスキルです。

 支持的なアプローチと、自分を変えるアプローチの

 バランスを取ることが、DBTの要となります。

 変化を助ける 4つの技法があります。

(1)不測の事態への対処

(2)行動スキルトレーニング

(3)暴露に基づく技法

(4)認知の修正

 特に、自殺企図のコントロールに関する 「不測の事態への対処」 について、

 学習理論による強化と、消去の作業を 徹底して続けることが、

 長期的な問題行動の 改善につながります。

 自殺行動によって 相手を操作しようとする人に対して、それに応えてしまうと、

 短期的には良くても、長期的には 事態をさらに 悪化させてしまうからです。

[ 参考記事: http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45269689.html ]
 
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境界性人格障害の治療(3)

2008年03月08日 14時12分33秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/39580737.html からの続き)

 治療の成績は 重症や軽症のケースで まちまちでしょうが、

 色々な文献があるようです。

 ボーダーの人は 治療を継続していくこと自体も難しく、

 治癒の率は 必ずしも高くないとも言われます。

 何が「治癒」かというのは 実は単純ではないのですが、

 アメリカでは 治療を始めて治癒にまで至るのが 1割程度というデータがあります。

 他方、10年で 3分の2から4分の3が 社会適応していく という数字もあります。

 人格障害とは 性格の極度な偏りですが、性格は年を取れば丸くなる というように、

 ボーダーの人も 年齢を重ねるにつれて 次第に落ち着いていくと言われます。

 ただし、「途中で自殺しなければ」 という のっぴきならない前提が付くのですが、

 そこを切り抜ければ 再びやりなおしていくことができます。

 時間がかかっても、自分の感情に戸惑いながらも、

 40歳くらいを過ぎれば、自然治癒を含めて

 ゆっくりと安定していくことが 多いのだといいます。

 それを信じて、ぜひとも将来に 希望をつなげていきたいものです。

 共に 生き合う日を求めて……。
 

〔注:以上は 拙著 「境界に生きた心子」 からの写しで、04年頃のデータです。

 現在は 欧米を中心に 治療は進歩しています。〕
 
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境界性人格障害の治療(2)

2008年03月05日 22時54分12秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/38603280.html からの続き)

 臨床の治療現場は手探りで、悪戦苦闘の累積だといいます。

 ボーダーの人は 相手を見透かす目にたけ、感受性もさといので、

 治療者の一挙手一投足も 手加減なく突いてきます。

 治療者を 完璧な救世主としてあがめたり、

 一転して 最低の無能者だとおとしめたりします。

 猛烈な情動や依存で 治療者を翻弄し、その巧妙さは 見事なまでのものがあります。

 もちろん当人は 全く無意識の行ないですが、

 専門家の治療者でも 感情的になって 巻き込まれてしまったりします。

 患者は 治療者を信頼すると 診察時間を切りなく延ばしたり、

 時間外にも 会うことを懇願したり、要求が どんどんエスカレートしていきます。

 それに堪えかねて 治療者のほうが 燃え尽きてしまうこともままあり、

 自殺してしまった例もあるそうです。

 治療者が ボーダーの人の不思議な魅力に捕われ、

 治療に入れ込んで 自滅してしまうこともあります。

 ボーダーの治療には 苦労をしいられ、

 それに比べて 目ざましい効果が期待できないため、

 ボーダーの患者を 受け持つことを敬遠する 治療者もいるといいます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/39618516.html
 
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境界性人格障害の治療(1)

2008年03月05日 22時52分27秒 | BPDの治療について
 
 ボーダーの治療には 長期のカウンセリングが必要です。

 支持療法,力動精神療法,認知行動療法 などもあります。

 しかし それを専門的に実施できる医師は、日本にはまだ少数だといいます。

 薬による治療は 抗鬱剤や安定剤などの 対処療法だけで、

 根治療法は 現在は少ないと言われていますが、研究もされています。

(ちなみに心子は、眠剤や痛み止め,腰痛の湿布などを含めて

 14~5種類の薬を処方され、精神科の診察を受けたあとは

 毎回 大きな袋をぶら下げて 帰ることになっていました。)
 
 欧米では、弁証法的行動療法が とても有効な治療方法として 行なわれています。

〔参考記事: http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45269689.html〕


 ボーダーの人の感情や見方は、客観的な実態との間に ずれがあります。

 この 「認知のゆがみ」を 修正していかなければなりません。

 でも 自己のゆがみに 目を向けるということは、

 蓋をしておきたい醜い部分を 覗きこむことになります。

 当事者には 堪えきれないことであり、

 治療の途中で 病状がかえって悪化することもあります。

 しかし ときには、怒りや行動化(アクティング・アウト)の

 背後にあるものを 探っていくことが必要です。

 不合理な感情を自覚して 徐々に 手なずけていくようにし、

 分裂した認識を 順次 統合していくのです。

 紆余曲折を繰り返し、何年にも渡る格闘を 余儀なくされるでしょう。

 そして、不安や苦しみを 取り除くことが目的ではなく、

 不安や苦しみを抱えながら、

 持ちこたえられる自分を 作ることを目指していきます。

 「悩む力」を 身に付けていくのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/39580737.html
 
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読売新聞 「病んだ心に 『認知行動療法』」

2007年04月02日 20時55分39秒 | BPDの治療について
 
 昨日の読売新聞 「くらし健康」欄の 連載記事 「病院の実力(42)」 に、

 「病んだ心に『認知行動療法』」という 記事がありました。

 認知行動療法は パーソナリティ障害にも 適用されます。

 治療者が患者と 対話を重ねて、「認知のゆがみ」 を修正していき、

 実際に行動に移して 状況に慣れ、自信を付けていくものです。

 薬と併用することで 効果があると言われています。

 個人療法と グループ療法があります。

 日本ではまだ あまり普及していませんが、

 パーソナリティ障害の認知行動療法を 実施している施設の 一覧が載っていました。

 以下に列挙してみますので 参考になったらと思います。
 

「ヒヨドリ医院」 茨城県ひたちなか市

「上毛」 同県前橋市

「久喜すずのき」 埼玉県久喜市

「志津クリニック」 千葉県佐倉市

「東京女子医大神経精神科」 東京都新宿区

「東京女子医大女性生涯健康センター」 同

「国立精神・神経センター武蔵」 同小平市

「目白ジュンクリニック」 同豊島区

「あいクリニック神田」 同千代田区

「原田メンタルクリニック」 同

「第一荻窪大森クリニック」 同杉並区

「洗足クリニック」 同目黒区

「ささきクリニック」 同府中市

「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」 同大田区

「相模ヶ丘」 神奈川県相模原市

「メンタルクリニックよこはま」 同横浜市

「横浜心理相談センター」 同

「金沢医大神経科精神科」 石川県内灘町」

「メンタルクリニック・クラルス」 静岡県浜松市

「藤田保健衛生大精神科」 愛知県豊明市

「心理カウンセリングルーム」 三重県津市

「音羽」 京都府京都市

「メンタルヘルス京都」 同

「住友」 大阪府大阪市

「南心堂鍼灸治療室」 同寝屋川市

「とよだクリニック」 鳥取県米子市

「琉球大精神科神経科」 沖縄県西原町
 
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