「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

マインドフルネス (3)

2007年02月24日 13時30分22秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45435279.html からの続き)

 不都合な感情が生じたとき、まず第一に 感情を見つめて理解し、

 次にその感情と一体化し、それを鎮めて解き放ったあとで、

 その感情の原因に 向き合うことができるようになります。

 自分の感情をケアできると 不快感が減少し、

 その感情を穏やかに 手放すことができます。

 そして 感情を生む 心の中の原因に深く入り込み、

 それを変化させる 取り組みが始まります。

 これが第五のステップで、じっくり見つめることなのです。

 
 以上のプロセスをたどるには、長い時間と努力を要するでしょう。

 専門的に習熟した セラピストの援助も必要です。

 それから、プログラムの中で取り上げられる

 「中庸」 「中道」 という経験法があります。

 ボーダーの人は 感情の振幅が激しく、

 非常に極端な感情状態に 陥ってしまいます。

 しかし 両極端の思考や行為に 捕らわれるのではなく、

 両極から離れた 「中道」 を見出すことによって 感情を改善し、

 偏った習慣や 危険な行動パターンを繰り返すことを 防いでくれるはずです。

 全てが人の責任であることも 全部自分のせいであることも ありません。

 真っ黒も 真っ白も 実際にはありません。

 両極は結びついており、何事もその間に流動しているのです。

 感情に寄り添いながら マインドフルネスのトレーニングをすることで、

 中庸の道を行く スキルを身に付けていくことができるでしょう。
 

[ 参考文献 : 「 自傷行為と つらい感情に 悩む人のために 」 (誠信書房)
 
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マインドフルネス (2)

2007年02月23日 22時52分46秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45393819.html からの続き)

 第二のステップでは、その感情を否定したり 嫌だと決めつけないようにします。

 むしろ 感情に挨拶し、「どんなご機嫌ですか?」 と尋ねてみましょう。

 マインドフルネスと 不快な感情という ふたつのものを引き合わせ、

 握手させて ひとつのものにするということです。

 それは恐いことかもしれませんが、感情の主人はあなたで

 あなたは感情以上の存在なのですから、恐れる必要はありません。

 マインドフルネスが長く続いていくと、

 それが 感情に付き添うようになっていきます。

 意識的な呼吸法を使って 集中力を高め、持続し 強めていくようにします。

 訓練していけば、だんだん マインドフルネスは育っていくでしょう。
 

 次のステップは、感情を鎮めることです。

 体と心の働きを鎮めるために 呼吸することで、

 マインドフルネスが 感情をなだめていきます。

 ちょうど、泣いている赤ん坊を 優しく抱いている母親のようです。

 赤ん坊が感情で、母親がマインドフルネスです。

 感情と一緒にいて 抱きしめることによって、感情を優しくケアするのです。
 

 第四のステップでは、感情を解放し 手放すことをします。

 問題の原因を知るために、それをじっくり見つめます。

 その感情を変化させるためには 何が有効そうであるか 見えてくるでしょう。

 セラピストがそれを援助します。

 辛い感情自体を 取り除こうとするのではなく、

 その感情を引き起こす 正に原因となっている 心の中の観念を見つけて、

 それを取り去っていくことが大切です。

 その観念は しばしば間違った信念に 基づいているものです。

 
[ 参考文献 : 「 自傷行為と つらい感情に 悩む人のために 」 (誠信書房)

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45449127.html
 
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マインドフルネス (1)

2007年02月22日 14時51分58秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45330439.html からの続き)

 「弁証法的行動療法」 の中心技法として書いた 「マインドフルネス」 のことが、

 下記の本にも 書いてありました。

 「 自傷行為と つらい感情に 悩む人のために 

  --ボーダーライン・パーソナリティ障害 (BPD) のための

  セルフヘルプ・マニュアル-- 」 (誠信書房)

 この本から 「マインドフルネス」 を紹介してみましょう。
 

 「マインドフルネス」 は、うつや痛みなど 広い問題を抱えた人を

 サポートするものとして 指導されています。

 禅の呼吸法を取り入れて、自分の感情などを ありのままに見つめるスキルです。

 不快な感情が起きてきたとき、次の5つのステップで その感情に向かい合います。

(1)感情を見きわめる

(2)その感情とともに留まる

(3)感情を鎮める

(4)感情を解放し、手放す

(5)じっくり見つめる

 
 まず第一のステップです。

 起こってきた感情のままに 行動化したり、目をそむけたりするのではなく、

 自分の呼吸に意識を集中して 感情を一心に観察します。

 それが一体 どんな感情なのか見極め、怒りなのか 悲しみなのか 恐れなのか、

 名前を付けることによって 正確につかみ、理解します。

 感情を それが生じてくるままに 受け取ることがマインドフルネスです。

(続く)

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45435279.html
 
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弁証法的行動療法 (3)

2007年02月20日 12時00分59秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45311241.html からの続き)

 BPDの人は 激しい怒りを相手に表明します。

 怒らせるのは相手だと 思っていますが、

 実は 怒る理由は 自分自身の中にあるのではないのか? 

 そのように深い自己洞察を 行なっていきます。

 不快な感情が起こってきた時、原因を相手に求めるのではなく、

 自分自身がそう反応したのだ という因果を受け入れていくことです。

 それは とても難しいことで、治療には強い覚悟が必要です。

 セラピストにも 高度な技術や経験が要求されます。

 治療中に強い情動が 誘発された時、

 セラピストが それを取り上げることが 治療になります。

 感情をぶつけさせ、指摘していきます。

 怒らせているのは 相手なのか 自分なのか、

 セラピストのサポートによって、自分を熟視する トレーニングをしていきます。

 個人療法とグループアプローチの 併用を行ないます。
 

 弁証法的行動療法 (DBT) は、行動科学に基づく 認知行動変容技法と

 東洋の禅思想との 出会いから生まれました。

 変化に焦点をあてる 行動療法と 受容に焦点をあてる マインドフルネス、

 この両者のバランスを 保ちながら両立させる 弁証法的アプローチなのです。

 DBTによって BPDの人の自殺企図の回数が 顕著に減るといいます。

 日本でも 一部でワークショップが 開かれたりしているようですが、

 まだまだ 実施できる治療者は少ないでしょう。

 元々 欧米で東洋思想を取り入れて できた療法ですが、

 日本でも 普及していってほしいものです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45393819.html
 
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弁証法的行動療法 (2)

2007年02月19日 20時59分09秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45269689.html からの続き)

 (2)の 「対人関係を有効に保つためのスキル」 は、

 人との接し方を 変えていく技法です。

 周囲への巻き込みなどを防止する 効果的な対人関係を 身に付けていきます。

 BPDの人は 人との関係の築き方が苦手ですが、

 いつも繰り返される 自分の問題のパターンに気づき、それを修正していきます。

 自己評価が非常に低い人も、自尊心を傷つけずに

 コミュニケーションを 取れるようになっていきます。

 
 (3)の 「苦悩の受容」 は マインドフルネスの応用です。

 心理的苦痛に対する ストレス耐性スキルで、

 辛いことがあっても それを受け止め、

 いつまでもくよくよしないで 前向きに生きていけるようにします。

 実際にそうするのは とても難しいことですが、

 そのために 瞑想を取り入れ、日々の訓練をしていくのです。

 執着を捨てて 自然に受け入れられるように なっていくということです。
 

 (4)の 「感情の統制」 は、不合理な信念や 行動を抑制するための

 情動コントロールの方法を学びます。

 苛立っている時に それを無理矢理 押さえつけようとしても、

 かえってストレスが溜まるだけで 逆効果です。

 気持ちを別のことにそらしたり、

 前向きのことを考える時間を 増やしていくようにします。

 感情的になった時に 行動化してしまう いつものパターンとは 違う行動を、

 取るようにしてみたりします。

 そうしていくうちに 次第に感情をコントロール できるようになっていきます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45330439.html
 
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弁証法的行動療法 (1)

2007年02月18日 13時48分10秒 | BPDの治療について
 
 現在欧米で BPDの最も効果的な療法として、

 「弁証法的行動療法」 (DBT〔*注:〕) が注目されています。

〔*注:DBT……Dialectical Behavior Therapy 〕

 薬物依存者や 自殺企図のある重いうつ病にも 有効だということです。

 僕も 詳しくは知らないのですが、簡単に紹介してみたいと思います。

 
 DBTは ワシントン大学の マーシャ・リネハン博士が 開発した療法で、

 西洋の心理療法と 東洋の禅の思想を 融合させたものです。

 次の4つの要素から 成り立っています。

(1)マインドフルネス

(2)対人関係を有効に保つためのスキル

(3)苦悩に耐えるスキル

(4)感情の統制
 

 (1)の 「マインドフルネス」 は DBTの一番 中心的なもので、

 「あるがままに受け入れる」 ということです。

[参考記事:  http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45393819.html ]

 「禅」の思想を取り入れていて、心身の状態をそのままに 観察して許容する

 ということだそうです。

 「今、ここ」 で体験しているものに 意識を集中し、

 目をそらさずに 現実を直視して、良い悪いの判断をせずに受け取り、

 習慣的に行動したり しないようにします。

 精神分析は 現在ではBPDに向かないと 言われていますが、

 分析的思考によって 価値判断をせず、

 感じているものから逃げたり 抑圧したりもしない。

 例えば 激しい怒りが生じた時、今までのパターンのように

 暴力や暴言という 行動に表してしまうのではなく、

 自分の感情を見つめ続ける 訓練をします。

 そして 執着を捨てて 中庸を見出していくよう促されます。

 そうしていくことによって、現実の捉え方を変えたり、

 自分の行動や考えを 変えたりできるようになるといいます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45311241.html
 
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傷ついた治療者(2)

2006年02月25日 17時56分55秒 | BPDの治療について
 
 ボーダーの人も、これと同じことをしているのではないかという問いかけがされました。

 ボーダーの人の言動は、攻撃的だったり相手を不安定にしたりしますが、彼らは無意識のうちに、相手の中に自分と同じ傷つきを引き起こし、共感的状況を作り出そうとしているのかもしれないと。

 これが正しいかどうか、僕の立場では言えませんが、興味深い観点であるのかもしれません。

 一般的にはこれとは逆に、ボーダーの人の言動には巻き込まれないように、ということが言われます。

 そうすることで、何があっても動かないものが存在するのだということを、ボーダーの人に教えることになる、と書いてある本もありました。


 一方、書庫「女医さんのお話」の11月12日の記事で、「境界に生きた心子」を読んでくれた女医さんが次のように語っています。

「(ボーダーの人は、)感情に巻き込まれず優しく応対してくれる人に対して、
『とってもいい人だけど所詮私の気持ちはわからない!』と、
人柄は認めても感性は見下しがちです。

 ですからこのタイプの人に対しては、
『本人のその時々の感情と完璧に同じ感情エネルギーを表現して、共感を示した後、すばやく感情をコントロールして巻き込まれずに対処する』
ということを繰り返しやって見せるのが効果があります。

 そうすることで、
『共感できる感情を持った上で、更に感情をコントロールする方法がある。その方がもっと能力が上だ』
と体験的に教えることができます。」

 「傷ついた治療者」の話は、これと通じるようなことがあるのかもしれません。

 何が正しいか僕にはまだ分かりませんし、ボーダーの人によっても違うのかもしれません。
 
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傷ついた治療者(1)

2006年02月24日 20時33分03秒 | BPDの治療について
 
 以前の記事で、僕は「ユング心理学研究会」という所に所属していることを書きました。

(書庫「心理」1月29日「ユングの連想実験(1)」)
http://www002.upp.so-net.ne.jp/u-jung/Index.htm

 今月は「傷ついた治療者をめぐって」というタイトルでセミナーがありました。

 傷ついた治療者でなければ患者を癒せないのか、というテーマです。

 そのなかで次のようなことが言われました。


 治療中、患者が治療者に起こす投影〔*注〕は、治療者に不安を引き起こしたり、攻撃的なものとして感じられる。

〔*注:自分の中のネガティブな感情や難点を、自分のものとして抱えるのは堪えられないため、それを相手のほうへ投げ映し、相手のものとして移しかえてしまうこと。

 自分の心を守るための無意識の防衛機制。〕

 しかし、治療者は患者から受けたこの傷(逆転移)を、引き受けることが重要である。

 治療者の個人的な傷がうずくことで、深い治療関係になる。

 治療者は逆転移を分析し、それを活用して患者を癒すことができる。

 これを患者の側から見ると、患者の無意識の働きがあるように思われる。

 投影は患者が自分の不快な感情を取り除くためだけではなく、ポジティブな目的も含まれている。

 つまり、患者が治療者の中に傷つきを見い出したり、作り出したりしようとしている。

 そのことによって、無意識に治療状況に持ち込もうとしているかのようである。

(続く)
 
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