もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

「条件つけずに」発言を考える

2019年05月09日 | 社会・政治問題

 安倍首相の「条件を付けずに日朝会談を行いたい」との発言が、憶測を呼んでいる。

 首相の発言は、2回目の米朝会談で金正恩氏がトランプ大統領に「日朝間に拉致問題があるのは理解している」と発言したと伝えられたことからなされたものであるのは確実であろうが、真意については多くの憶測がなされている。曰く「拉致問題が大きく前進する」と期待するものから「拉致問題を犠牲にしてでも非核化を優先する」まで様々である。本日は「人でなし」とのお叱りを覚悟で自分なりの憶測を試みる。現在の日朝間の最大の問題は何であろうかと云えば、拉致問題ではなく核とその運搬手段に代表される大量破壊(殺戮)兵器の無力化であると考える。更に北朝鮮は核兵器(N兵器)の他にも、生物兵器(B兵器)と化学兵器(C兵器)を保有していることも確実視されており、有効は反撃手段と対話チャンネルを持たない日本としては北朝鮮の脅威は突出していると考えるものである。現在、拉致被害者と考えられているのは、政府が拉致被害者として12名を認定、拉致の可能性を排除できない特定失踪者として883(うち拉致濃厚(1000番リスト)は90名)名を上げており、総計は1000名以内と考える。一方、北が暴発して日本に対して核(N)兵器を使用した場合は10万人以上の犠牲は確実で、B,C兵器によるテロ攻撃であっても少なくとも数千人程度の犠牲は覚悟しなければならないと考える。国の舵取りを委託された総理大臣としては、数千人や10万人以上を危殆に曝して最大1000人の救出を試みるだろうか。冷酷ではあるが、1000人を無視しなければならないのが現実である。何はさておいても拉致被害者の救出することを優先すべきと考える人は、北朝鮮といえども大量破壊兵器を使うような暴発はしないと反論するであろうが、北朝鮮に対する制裁が論議されていた時代の「ソフトランディング論」が今日の北朝鮮を生み出したことを思い起こしてほしいものである。北朝鮮の要求を受け入れて、民生用の石油を与え、人道支援の食糧を与え、核開発の始点となった原発技術まで与えたことが鬼子を生み出した元凶であるのは明白である。安倍総理が条件を付けずに日朝会談に臨んでも、拉致問題を進展させるのは絶望的であるとも思う。金正恩氏が拉致問題の解決を表明したとしても相応の対価を求める(解放した米国人1名の治療費としてすら2億円要求)のは当然予想されるが、対価の支払いは国連決議に違反することになり日本としては応じることはできない。百歩譲って対価の支払いについて国際社会の理解を得られたとしても、金正日氏による拉致解決反故の再来となるのはこれまた予測されるものである。

 安倍首相の真意について拉致問題を憶測したが、実際は日朝会談を日韓関係の延長上に捉えているのではないだろうかと推測する。北朝鮮はアメリカ・中国・ロシアと立て続けに首脳会談を行ったが、思わしい成果を上げ得ずに手詰まり感が否めない。更には米朝調停役を自任していた韓国大統領も米朝双方から愛想づかしされている今、韓国を軟化させるためには韓国の頭越しに北朝鮮に手を差し伸べることで、使い古されてはいるが有効な「遠交近攻戦術」を目指していると観るのは思い過ごしであろうか。