もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

大相撲のアメリカ大統領杯に思う

2019年05月28日 | アメリカ

 5月場所に優勝した平幕朝乃山にアメリカ大統領杯が、トランプ大統領から直接授与された。

 大統領杯は、令和最初の国賓としてトランプ大統領が来日するに際して大相撲観戦が計画されたことから、実現したものであるが、その製作には相当の期間が必要であることから、大統領の来日予定が世情に取り沙汰される遥か以前から計画・準備されたものと思う。大統領杯授与の映像を見て”賜盃よりも大きいのでは?”と感じたので調べてみた。賜盃の形状は、高さ110㎝、重さ29㎏の純銀製となっており、表面には桜花の上に菊の紋章が施され、その下に「摂政殿下賜盃」と刻まれている。下賜の来歴については1925(大正14)年4月29日(昭和天皇誕生日)、東宮御所で行われた摂政宮(昭和天皇)の台覧相撲の下賜金で製作され、関東大震災や他の近代スポーツなどの興隆で苦境にあった相撲界を打破したいといった思いが込められているとされている。一方、頂部にアメリカの国鳥「白頭鷲」がデザインされたアメリカ大統領杯は、高さ137㎝、重さは30㎏でいずれも賜盃を超えている。アメリカ大統領杯が大きいことに対して些かの抵抗感を持つものの、東京タワーの設計段階ではテレビ電波の到達距離よりもエッフェル塔を凌駕することが優先されたとされているように、子供じみた競争意識は誰にでも、どこにでもあるもので、アメリカ大統領杯の大きさにも笑って済ませる度量が求められているのかもしれない。なお、今後アメリカ合衆国大統領杯は、毎年5月場所に授与されることが決まっているそうである。またアメリカ以外にも、フランス、チェコ、ブルガリなどの友好杯が幕内優勝力士には授与され、なかでもフランス友好杯は、マカロンの形をしていることで有名である。

 児戯にも類する競争意識・駆け引きは外交の場でもあり、1956(昭和31)年の日ソ交渉で、下交渉に当たった河野一郎(洋平の父、太郎の祖父)は、交渉相手のフルシチョフ第一書記の机上に置かれたレーニンの写真入りペーパーナイフを取り上げれば交渉では気分的に優位に立てると思い、フルシチョフにペーパーナイフをねだった。フルシチョフは気前よく河野にペーパーナイフをくれたが、翌日の会談でも机上に同じペーパーナイフが置かれていたため、河野は「昨日のは鳩山にあげたから自分用のが欲しい」と頼むと、再びフルシチョフはナイフをくれた。さらに翌日の会談ではフルシチョフがニヤリとしつつ「今度は誰用のナイフが欲しいのか」と戸棚に大量に置かれたナイフを示したという逸話が残されている。