もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

メイ首相辞任に思う

2019年05月25日 | 欧州

 イギリスのメイ首相が、EU離脱の頓挫から6月7日に保守党党首と首相を辞任すると表明した。

 次期保守党党首・首相には、離脱強硬派のジョンソン氏が有力視されている。しかしながら、誰が・どの党が首相に就任したとしてもEUが離脱協定の再交渉には応じないとしていることから、合意なき離脱か、再度国民投票を行ってEU残留の民意を得るという2つの選択肢しか道はないように思われる。イギリス与野党の主張を単純化すれば、①国民投票の結果であるのでEUからは離脱する、②アイルランド以外の国境を閉ざす、③EU諸国とはEU内の関税ルール適用を求める、ということに集約されると考えるが、金は出さずに移民も阻止するが関税は優遇して欲しいとするもので、とてもEUが容認できるものではない。現在、五月雨式に行われている欧州議会選挙でもEU懐疑派やEU解体派が各国で軒並みに得票を伸ばしていることから、イギリスに甘い離脱を認めれば離脱が相次ぐという危機感をEUは持っている。メイ首相の辞任に対して、氏の調整力や交渉力不足とする意見も多いが、もともとEU離脱を問う国民投票でも賛否は拮抗しており、拮抗した民意が選ぶ下院議員も拮抗した勢力図になり、首相個人の調整力で克服できる命題ではなかったと思う。3年間に及ぶ猶予期間を経ても統一できなかった国論を、離脱最終期限である10月末までに纏めることは不可能と思われるので、最終的には前述したEU残留・合意なき離脱のいずれかになると思う。EUに残留した場合はEU内での発言力と信頼感は低下して往時の存在感を示取り戻せることはないであろうし、一度逃げ出した海外企業が戻ってくることもないだろう。合意なき離脱に至った場合は、移民を含む人的流入は防げるであろうが経済的には大きな痛手を受け、既に中国資本の影響下にある原発や電力インフラが足枷になって更なる中国支配に甘んじなければならなくなり、米中関税戦争の余波をまともに受けることになる。かって”7つの海を支配する””日が沈むことのない帝国”と謳われた大英帝国は、欧州戦線におけるアメリカの助力要請、第2次大戦後の貴族・指導者階級の腐敗・堕落によって凋落したが、大英帝国という体面をかなぐり捨てて現在の地位を回復したものの、安易な民意妥協と衆愚政争の果てに再び没落の瀬戸際に立たされているように思えてならない。

 韓国では、政権が作為した”反日”というテーゼが独り歩きして、もはや制御不能となり国際的な孤立化の道を辿っている。イギリスと韓国の現状を見ると、国民の多くは目先の利には敏感に反応するが、その前途に横たわる大きな不利益を耐え忍ぶ覚悟までは持っていないように感じられ、国家戦略の選択を直接民主制に委ねることには大きな不安を感じるところである。日本においても、有効な対案を持たないにも拘らず安全保障や普天間基地移設に反対する勢力が存在し、彼らの主張はEU離脱問題を政権交代や首相の座を射止めるための政争の具と矮小化した勢力の主張にダブって見える。