アメリカで、2億3200万円の新薬販売が承認された。
新薬はスイスの製薬会社が開発した脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」とあったので、今回は遺伝子治療薬と脊髄性筋萎縮症について勉強した。遺伝子治療薬とは「遺伝子を体内に入れることで病気を治す薬。DNAを無害化したウイルスなどに載せて細胞まで運んで治療効果を得る。遺伝子の異常が原因となる血友病や癌といった難病の治療に適していると期待を集めている。先進国では2012年に初めて欧州で承認され、欧米を中心に複数の製品が登場している。技術的に難しくて研究開発費がかさむうえ、治療用遺伝子の作製などにコストがかかることから高額になりがち(日経電子版)」と解説されている。薬と聞けば、体内に侵入した病原菌やウイルスを攻撃・死滅させるものや、癌細胞などの増殖を防ぐ又は遅らせるものと思っていたが、遺伝子の異常による病気に対しては遺伝子そのものを正常な遺伝子に薬で置き換えるという先進医療があることを知った。一方、脊髄性筋萎縮症とは、常染色体劣性遺伝形式と呼ばれる疾患で、発病時期と進行には個人差があるものの筋力低下と筋萎縮を引き起こして死に至ることも多いもので、難病に指定されているそうである。日本での患者数は分からなかったが、1万人に1~2名とされていることから2万名近い患者がいるのではと推測される。自分には無縁の病気と思っていたが、100人に1人は両親のどちらかから異常染色体を受け継いでいることを知った。しかしながら、父方又は母方からのどちらか1つだけ変異遺伝子を受け継いでいる場合は全く無症状であり、これを保因者といい生涯発病しないが、保因者同士が結婚した場合、子供は1/4(25%)の確率で発症するとされている。おそらく現代医学では自分が保因者かどうか調べることは可能であろうと思うので、結婚前に調べるというカップルが出てくるかもわからない。以前、遺伝子組み換えによる人工授精や出生前診断の行き過ぎは、子供の選別に繋がり健全な(従来型)社会を破壊すると書いたが、夫婦の遺伝子情報がすべて判り、生まれてくる子供の能力や将来もほぼ予測できる時代が来るのかもしれないと思えば、何やら背筋が寒くなる思いがする。
冒頭の新薬について、その薬を服用できる人間はどのくらいいるのだろうか。国民皆保険制度の無いアメリカでは全額自己負担であろうし、そうなれば一部の恵まれた患者のみ命を長らえることができることとなるのだろう。日本でも当該薬品は短期間で承認する制度の対象として優先審査が行われていると伝えれているが、当分の間は保険適用薬にまでは至らないであろうし、我々貧乏人が新薬の余慶を得るのは先のことになるのかもしれない。こうなれば”金の切れ目が縁の切れ”という男女の機微にニャリとする古語も”金の切れ目が命の切れ”という切実なものに変わるのかも知れない。あァ無情(無常)!で本日の口説終演。