秋元司議員逮捕とゴーン被告の不法出国から10日余が経過した。
ここに来て、メディアの報道も事件の本質についての論調に変化しているように感じられる。秋元議員逮捕に関連して、既に贈賄側が事実を認めるとともに収賄容疑の下地議員も一転して現金の受け取りを認めたことから、他の収賄容疑者も早晩現金の受け取りを認めることになるだろう。秋元議員の逮捕当初は、罪科が受託収賄か斡旋収賄かを主としていた報道も、現在ではIR進出を隠れ蓑とした「中国による政界工作」の一環ではとの疑念に変化している。ゴーン被告の密出国に関しては、当初は容疑者を長期に拘留する日本の司法制度を疑問として暗にゴーン被告の行動を擁護する論調もあったが、現在では密出国を防止できなかった数々の不備に焦点が当てられている。その中でも、関空のプライベートジェットに対する貨物検査体制と弁護士の関与が大きな問題点とされている。特に弁護士に対する疑念は深刻で、仮釈放以後半年も問題視していなかったゴーン氏に対する日産の監視を、あたかも密出国に符合するかのように中止圧力をかけたことは、利用された・出し抜かれたと云う以上に、積極的に関与したかの疑念は晴れない。加えて、弁護団の一人が今もって被告を擁護していることは、本人の失敗を糊塗する以上の確信犯的な密出国支援ではと推測(邪推)される根拠となっている。光市母子殺害事件の控訴審で、あまりにも非常識な被告人発言を指導・誘導したとして弁護団に対して橋下徹氏が懲戒請求を呼び掛け、4000件の懲戒請求が寄せられたが、今回もそれに近い懲戒請求が寄せられるのではないだろうか。また、関空の貨物検査体制の不備も考え物で、プライベートジェットを利用するほどの人が悪事を働くことはないだろうとの思惑が見え見えである。我々が受ける手荷物検査や保安検査はハイジャック防止や機内での不祥事を予防する目的で航空会社が実施しているが、関空とプライベートジェットを利用すれば、盗難美術品の持ち出しや大量の武器持ち込みもフリーパスの状態ではとも懸念している。オリンピックではテロ等の水際防御に努めるとされているが、この大きな盲点を皮肉にもゴーン被告が教えてくれたことになる。
改めて秋元容疑者とゴーン被告報道の推移を眺めると、事件の全貌と詳細を知るためには旬日を待つべきであることが良く分るが、一方で「兵は拙速を貴ぶ」ともされている。兵(兵力運用)に限らず災害対処にも云えることであるが、官房長官談話や高級官僚の発言に見られる「事実を見極めて」が手遅れを招くことも多い。政府要人や企業トップも拙速を可能とする直観力や判断力をもう少し磨けば、現在横行している「謝罪会見」の大部分が防げるのではとも考えるところである。