もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ウクライナ機の墜落(撃墜)に思う

2020年01月11日 | 社会・政治問題

 8日にイランの首都テヘラン近傍でウクライナ機が墜落した。

 墜落直後にイランが「機体の異常でテヘラン空港に引き返す途中での事故」と発表したが、ほぼ同時期にイラン国内から在イラク米軍基地がミサイル攻撃を受けていたことから、「もしや?」と疑問に感じていた。昨日に至りカナダ政府が、2発の地対空ミサイルが発射され墜落がイランのミサイルによる撃墜と発表したが、ミサイル発射はアメリカの偵察衛星の情報によるとしていることから、ほぼ間違いのないところであろう。依然としてイランは機体の故障であるとしてミサイルによる撃墜を否定しているものの、当初はイランだけで行うとしていた事故調査についてウクライナの航空会社、機体製造社のボーイング、エンジン製造のフランス(社名不明)には調査への参加を認めると軟化せざるを得なくなった。しかしながら依然としてブラック・ボックスの解析はイランのみで行うとしているために墜落原因の特定は困難であろうと思われる。カナダの主張やアメリカの論調は、撃墜は「組織(国家)的に行われたものではなく偶発事故」として、事件の余波の鎮静と不拡大を図るものとなっている。イランにはイラン国軍と革命防衛隊という2つの軍事組織があり、西側諸国が持つ軍事に対するシビリアン・コントロール機能は存在しないので、偶発事故の起こる可能性は格段に高いものと考える。

 ここで、思い出されるのは韓国の火器管制レーダの照射事件である。韓国がレーダ照射の事実を絶対に認めないのは、照射が完全なシビリアン・コントロール下で行われたとすれば反日姿勢をより鮮明にすることになり、偶発的なものであるとすれば政府が完全に軍をコントロールできていないことを暗に認める結果になるからで、いずれにしても自国の威信を大きく損なうからである。また、撃墜されたウクライナ機は軍用機に装備されているミサイル警報装置はないものの、被弾の前にはミサイル接近の兆候を把握して回避のための旋回や高度変更を行うとともに、ブラック・ボックスには操縦室内の交話が残されているものと思う。海自哨戒機についても、軍用機とは云えウクライナ機と同程度の運動性能しか持たないことから、レーダ波検知に引き続く攻撃を受けた場合には、被弾回避や反撃の手段がないことからウクライナ機と同様の運命に曝されたことであろう。海自の新隊員が小火器操作訓練時に最初に教えられることは銃の諸元ではなく「銃の玩弄禁止」であり、ジョン・ウェインの真似をして、銃を頭上にかざして練兵場を際限なく走らされる者もいる。全米ライフル協会の言い草ではないが『武器は恐ろしいものであるが、武器を操作する人間の狂気の方がもっと怖い』。