アメリカの中東和平仲介案が発表された。
和平案は、ユダヤ人入植地を現状で固定するとともに「東エルサレム」を首都とするパレスチナ国家を認めることが骨子と思う。この提案で、パレスチナ国(仮名)の領土は現在のパレスチナ自治政府領の2倍となるが、東エルサレムの位置・範囲は明確にされていない。アメリカは既に、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教がそれぞれ聖地とあがめるエルサレムをイスラエルの首都と認めて大使館機能を移転していることから、東エルサレムに聖地は含まれないとする見方が一般的である。中東の混乱は、ローマ帝国によるキリスト教迫害に端を発し、7世紀のイスラム教興隆でより混乱し、11世紀以降の十字軍遠征が拍車をかけ、1948年のイスラエル建国で頂点を極めたものと理解している。このような2000年の確執が一片の和平案で解決できるはずもなく、これまで多くの和平案が提示されたにもかかわらず、ある和平案は一時の和平をもたらしたが、多くは一顧だにされない憂き目のうちに立ち消えとなった。今回のアメリカ案についても発表セレモニーにイスラエル首相しか同席しなかったことや、エルサレムもイスラエル(ユダヤ教)に帰属するというものであるために、トランプ大統領の再選戦略の一環以上の効果は期待できないものであろう。中東和平の核心であるエルサレムの扱いについて、聖地をイスラエルとパレスチナが共同統治するという方法が一番長続きしたのではないだろうかと考えるので、さらに一歩進んで「聖地を信託領として国連が管理する」ことはできないのかと調べてみた。国連は1か国又は2か国以上の施政権者に信託統治することを認めており、国連自身も施政権者となることも認められているが、ナミビア対策で提案はされたものの実施された例はないらしい。自分が思い浮かぶ程度の方策であるために、既に検討され尽くし・アンダーテーブルで根回しされて来たであろうが、大国の思惑や民族感情の確執で表に出なかったものではないだろうか。
信託統治と同様に国際連盟下でも委任統治制度があり、日本帝国もサイパン島などの南洋諸島を委任統治していた。日本の南洋諸島経営は、韓国や台湾と同様に殖産と近代化のための持ち出し経営であったものの、多くは成功して信託統治後の自立・独立に大きく寄与したとされているが、他の殆どは植民地と同様の収斂経営で統治領の荒廃しか招かなかったとされている。このことを考えれば、エルサレムの信託統治施政権者として、宗教的に無色で人種差別の観念が比較的希薄な日本が適当ではないだろうか?と考えるところである。日本帝国は国際連盟の常任理事国として南洋諸島を委任統治していたことを考えれば、国連の常任理事国入りを目指す近道ではなかろうかと空想するところである。