もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ネットは社会を分断しない

2020年01月13日 | 社会・政治問題

 「ネットは社会を分断しない」という著作が話題となっているらしい。

 同書は、田中辰雄慶大教授と富士通総研の浜谷敏研究主幹の共著で、10万人に対する2回の調査を基に世論形成にネットが果たす影響を考察されているそうである。従来、学術の世界では【ネット利用は「選択的接触(自分が持っている主張に合致する情報のみ選択)や残響部屋(持論に沿う情報のみに触れた結果意見の偏りが強化される)」という理由から、ネット利用者はより先鋭化して社会の分断・分極化が進む】とされていたそうである。自分もそのように思っていたが、調査結果では約4割の人が自己の主張と反対の意見を読んでいるとしている。また、若年層と中高年を比べるとネットをよく利用する若年者よりも中高年の分極化傾向が顕著であることから、世論形成と社会の分極に対するネットの影響力は小さいとしているそうである。また、微妙な問題についてネットが荒れる(炎上)原因として「例えば、憲法9条の書き込みのうちの半分は0.2~0.3%の特別熱心な人(へビー・ライター)が行っている」と分析しており、議論(書き込み)に参加しないサイレント・マジョリティーは、極端な主張に毒されない賢さを持っているともしている。自分も著者の云う「社会の分極化傾向が顕著な世代のネット利用者に属しているために、”成程”と賛同した。ブログを始めて以降、書きたいテーマにおける反対意見を探すことに努めているが、反対意見の多くが紋切型であることから組織的な主張を感じていたのでへビー・ライターの存在を知って割引の必要性を痛感したが、香港デモや台湾に対する中国の選挙干渉を見ると、世論形成に対するネットの影響力は無視できないものとも感じている。著者もネットの影響力についての分析・考察について「あくまで現状の」としていることから、将来については計り知れないというところであろうか。

 殺害予告・爆破予告等の犯罪行為に対しては、1通の書き込みで司直が動くことは必要であるが、除夜の鐘、盆踊り、公園のキャッチボール等も、わずかな反対意見で禁止されている現状は、少数のネット書き込みがあたかも世論と認識されることに由来しているのではないだろうか。韓国では30日間に20万人、アメリカではが60日間に10万人の請願があった事象については政府が回答する請願制度がある。日本も尖鋭な少数の意見を以て世論とする風潮は改めるべきで、例えば、地方議員のリコール制度を発展させ、身分を明らかにした住民(モニター)の何割かが提起した請願については行政が回答したり対処するような方法を考えるべきではないだろうか。