もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

日米仏合同訓練に思う

2020年12月06日 | 防衛

 来年(2021)5月に日米仏合同で、離島(尖閣諸島)の防衛・奪還訓練が行われることが報じられた。

 今や尖閣諸島の帰属問題は、台湾の帰属とともに西側諸国からは中国の覇権・膨張の象徴と捉えられており、これまで日米英豪印ニュージランドが様々な枠組みで合同訓練を実施して、中國を間接的に牽制してきた。今回は更にフランスがこの枠組に加わることとなり、我々としては好ましい展開であると思う。
 フランスとしても、メラネシア・ミクロネシアが中国の影響下に置かれ中国艦艇の行動圏と化した状況下では、タヒチ島を中心とした仏領ポリネシア防衛のためにも日米と協調して中国海軍の行動を制約せざるを得ない事情があってのことと思う。
 今回の合同訓練には海軍のみならず陸軍・海兵隊も参加する本格的な着上陸訓練とされているので、航空自衛隊も航空支援のために参加するものになる公算が大きいとも思っている。
 昔話になるが、昭和40年代までは陸上自衛隊員を米軍から貸与された上陸用舟艇(LCM,、LCVP)に乗せて海浜にのし上げる訓練が行われていた。沖縄戦や硫黄島戦の映像に見られるように無数の上陸用数艇が海浜に殺到する上陸作戦の様相である。また輸送艦が直接砂浜に乗り上げて前扉から戦闘車両を上げる揚陸訓練も行われていた。しかしながら海上自衛隊の主任務がソ連潜水艦に対応するための対潜戦に変化したこと、上陸用舟艇が退役したこと、なによりも護岸整備や海岸法のために輸送艦から直接陸上兵力を揚陸させる適地が激減してしまったため新しい輸送艦は接岸して横腹から戦闘部隊を送り出し、接岸できる港湾が無い場合には後扉からエア・クッション型揚陸艇(LCAC)で揚陸させる構造に変化した。また強襲上陸作戦もヘリコプターが主用されるように様変わり(作戦の呼称も「上陸作戦」から「着上陸作戦」に変化)したことや、世界的に領土の争奪戦という概念自体が希薄となったために、中国が尖閣・台湾に牙を剝くまで水陸両用戦(敵前上陸)は全世界的に過去のものとされたと思っている。

 今回の合同訓練がどのような様相になるのか興味を以て観ているが、防衛省も国民に離島防衛の困難さを知ってもらうため、中國を利さない範囲で、できるだけ多くの部分を公開して欲しものである。