中国が、北朝鮮の瀬取り監視に当たる日米豪の艦艇に対して、監視のための艦艇を配備する現状が報じられた。
中国が艦艇を配備する目的は、自国船舶の保護よりも瀬取り監視業務に対する牽制の意味合いが強いと報じられているが、敵対関係にある国の艦艇を監視する行動は冷戦時代から行われているもので、特に中国の行動が突出しているわけではない。
米露対決の冷戦時代には、それぞれの洋上演習等に相手国の調査船が常時張り付いて、電子情報や戦術情報の収集に当たっていた。
冷戦時代初期には監視のために駆逐艦等が使用されることが多かったようであるが、冷戦の長期化や観測船の増備等に伴って80年代以降では多くの場合、調査・監視船には武装を持たない観測船や特務船等が充てられて、偶発的な武力衝突が起きないようにするという節度・不文律があったように思っている。しかしながら中国の行う監視活動は、駆逐艦並みの武装を持ち人民解放軍の指揮下にある海警局艦艇が使用されていることから、監視活動以上の行動も辞さないことを示しているように感じられる。
日本でも常続的に宗谷・津軽・対馬の3海峡に艦艇を配備して、ソ連艦艇の通過や軍需品の輸送等の情報収集を行っていたが、自分の現役時代には中国商船は監視対象とはされていなかったと記憶している。おそらく現在の主な監視対象は中国艦船であろうと推測しているし、そうであって欲しいと願うところである。監視衛星が飛び交う現在にあって、目視で監視することの意義は低下している思われがちであるが、積み荷の形状・乗員の数や服装、船名の書き換え、アンテナの形状・増減、武器の搭載など、衛星では把握できない情報も多いと思っている。
警戒監視に当たる海上自衛隊員諸氏の活動に加え、新年を家族と離れたた洋上で迎えることに対して改めて敬意を払うものである。
経験談・想い出を一つ。海峡監視に従事中、ソ連の外洋タグの情報収集の機会があった。ソ連の外洋タグは、表芸である故障潜水艦の曳航の他に、仮装情報収集戦としても活動しており重要な調査対象であったように思う。情報収集のため少なからぬ時間並走した後、分離・離脱する際に国際信号である「UW旗(安全なる航海を祈る)」をマストに挙げた。自衛艦(軍艦)からの旗流信号を受けたタグボートのブリッジは、ちょっとしたパニックで、大慌てに信号書のページを繰る姿が双眼鏡越しに見られた。数分の後、汽笛とともに船長と思しき人を含む数人がブリッジで手を振って謝意を伝えてきた。我々も汽笛と帽振れで答礼し反転した。多分時効であろうが、敵対関係にあ国の船舶に対して軍艦が不用意に信号を送るなど、許されないことであろう。案外に鷹揚で諧謔小咄を解するスラブ民族に対しであればニヤリて済まされることであろうが、漢族・朝鮮族には絶対に通じない行為では無いだろうか。 古き・良き時代の海上生活とお許しいただきたい。