アメリカが、香港での民主派議員排除に対する対中追加制裁を発動した。
新たな制裁は、中国の全人代常務委員会の副委員長14名に対する、本人及び家族の入国禁止と米国内資産の凍結である。中国の要人の中には失脚・粛清に備えて、家族を海外(特にアメリカ)に避難させるとともに、不正蓄財を米国内に隠遁して、本人は中国国内に単身起居するものが多く、そのような高官は「裸官」と呼ばれることは知られていた。習近平主席の腐敗撲滅指示によって「裸官」は無くなったとされていたが、今回のアメリカの対応を見ると、中国当局の目を逃れ、制裁に値するほどの「裸官」が未だに存在していたことが推測される。この制裁に対して中国は「措置は内政干渉であり、『強烈な憤慨』を表明する」との談話を発表した。制裁が香港統治に対するものであるために内政干渉であるかも知れないが、資産の凍結はむしろ中国の腐敗撲滅に寄与できるものであることを考えれば、中国の反応の裏側には要人の家族や資産に偽装した諸活動を制限されることを危惧したものと深読みできるように思える。
本日のキーワードは、中国の報道官が使用した「強烈な憤慨」という言葉である。中国外交部報道官の表現は多彩で、これまでの報道を拾い読みしても「促す」「強い不満」「強く非難」「強い憤りと断固たる反対」等々使い分けている。不満・反対の度合いによって使い分けているのだろうが、その使い分けは判らなかったが字面から見る限り今回使用された『強烈な憤慨』とは相当のレベルではないだろうか。
ちなみに日本の外交プロトコルでは不満の強い順に以下のようになっている(末尾のカッコ内は2015年に使用された件数と%)
⑪断固として非難する(454件 14%)
➁非難する
③極めて遺憾(626件 20%)
④遺憾
⑤深く憂慮する(282件 9%)
⑥憂慮する
⑦強く懸念する(1820件 57%)
⑧懸念する
となっていた。③④番目に位置する「遺憾」は多用されていると思っていたが、実際にはあまり使用されていないようである。しかしながら、極めて遺憾と遺憾の差など国民には判り難いので、中国外交部に倣ってもう少し国民にも政府の不満が伝わりやすい表現に改めてもらいたいと思うものである。
「沈黙は金、雄弁は銀」とされるものの、日本の指導者ももっと話術を学ぶべきではないだろうか。中国コロナの感染者と人出が相関関係にあることは自明の理であるからこそ感染拡大防止に外出自粛を要請したものであり、人出が無くなったから零細企業の経営が立ち行かなくなったことも自明の理である。エビデンスを求めて時間稼ぎするという小細工に奔らず、総理が「二律背反する対処について政府はギリギリの選択をしているので、注意深いGoTo利用と真剣な感染防止対策で協力して欲しい」と真摯に訴えるならば、民意は更に動くのではないだろうか。
第一次世界大戦で打ちのめされたドイツ国民を奮い立たせたのはヒットラーの演説であり、ロンドン空襲を耐え抜いたのはチャーチルの訴えである。総理も記者会見でお茶を濁すのではなく全国放送で直接国民に呼び掛ける手法を日本もとるべきであると思う。そのためにNHKの受診料を払っている・払わせているのではないだろうか。