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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ゲノム食品認可に思う

2020年12月12日 | 社会・政治問題

 厚労省が、ゲノム編集によって血圧を抑える物質(GABA)を豊富に含むトマトの販売を認可することが報じられた。

 報道ではゲノム編集による食材の改良はトマトの他にも、病害に強く多収穫の稲、芽が無毒のジャガイモ、肉厚の鯛、高速で泳がないために養殖しやすいマグロ等の研究も進んでいるとされているので、近い将来にはそれらの食材も流通するものと思う。
 昭和30年代の少年誌の近未来予測では、20世紀末には化石燃料が枯渇し、全世界は大規模な食糧危機に直面するとされていたように記憶している。石油については、新しい湯層の発見、採掘技術の進歩、原発・天然ガスという代替エネルギーの稼働等によって原油は未だ埋蔵されており、原油は武器としての価値すら下落している。食糧については途上国や紛争地域では深刻な状況であるが先進国では食品ロスの撲滅が話題とされる現状にある。しかしながら、地球規模で考えれば石油エネルギーと食糧の危機は小康状態を保っているのが実情で、50年・100年先を考えれば緊急に改善する必要があるように思う。
 この際にと思って主食である米の生産・消費について俄か勉強を試みた。1968(昭和43)年と50年後の2018(平成30)年における米に関するデータを比較すると、作付面積(万ha):317→147(46%)、生産量(万t):1422→778(55%)、一人当たり消費量(㎏):95→54(57%)となっており何れも大きく減少している。唯一、作付単位面積当たりの収穫量(t-ha)を計算してみると4.5→5.3(117%)と増加しているが、この数字を見ると意外に少ないような気がする。稲の品種改良、農地改良事業、山間部等の耕作放棄、等の状況から大きく改善して稲作も採算が取れるのではと考えていたが、いかに改善を図っても一定の土地が生み出す食糧には限界があり、そのことはゲノム編集米が実現しても劇的に変化するものでは無いのかも知れないので、食糧防衛には食品ロスを無くすことが早道なのかもしれない。

 さらに報道では、ゲノム編集食品に対する消費者の忌避感や生態系に与える危惧も挙げる一方で、今回のトマトのゲノム編集は、トマトが持つ遺伝子のうち特定の遺伝子を破壊する手法であるため、トマトの変質は、交配による品種改良や自然界で起こる変異と同等の変質とする専門家の意見も紹介されていた。遺伝子組み換え食品を忌避する声は根強い様であるが、防腐剤、農薬、人口甘味料、着色剤・・・etcにまみれた我々が十分すぎる程生きていることを考えれば、遺伝子組み換え食品など恐れるに足らぬものであろう。なにより、明日の命を支えてくれる(かもしれない)コロナワクチンが、遺伝子技術を駆使したものであることを思えば、将来の食糧危機に備える意味合いからも遺伝子組み換え食品を受け容れざるを得ない時代を生きているように思える。