もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

[九条の会」署名活動のその後

2018年11月20日 | 憲法

 本ブログの11.16付『「九条の会」の署名依頼に思う』の後日談を紹介する。

 九条の会への抗議電話は、11.16 1500に通じた。一般企業の電話オペレーターとは異なり初老?と推測される女性が対応してくれたが、護憲活動家に共通する紋切り型の主張に終始し、最終的には事務局の然るべき地位の人間が電話をくれることとなった。11.18 1930事務局長を名乗る人物から電話があり、大方の読者が予想する通り「①戸別訪問による署名活動は全国的に実施しており思想調査(踏み絵)ではない。②個人情報保護法の趣旨には抵触しない。③地域のコミュニティ破壊には繋がらない。」との主張を賜った。11.19 1500に九条の会員を名乗る初老の女性の訪問を受けて応対した。 まず、身分証や身元を確認できるものを提示することもなく、護憲の必要性を熱心に説いてくれたが、予想していたように「①戦後の平和は現憲法のおかげ。②現憲法をアメリカからの押し付け憲法とは思わない。③軍隊を廃したコスタリカが良き実例」との聞き古した主張であった。流石に地域コミュニティとの関係についての質問には一瞬の澱みがあり、新興住宅・新規流入者が比較的多く他人の言動に比較的無関心な当地にあっても何らかの確執を内包しているのではなかろうかと同情したが、過疎地域や古いコミュニティでは笑えない事態すら予想されるのではないだろうか。さらに彼女の主張する点も論理的には破綻、若しくは誤認に基づくことが多いと感じるものである。現憲法の起草委員会が日本人であることを理由に押し付け憲法ではないとしているが、マッカーサーメモに基づき、憲法学を学んだものが一人もいないケージス率いるチームが1週間で作成した案がGHQ草案として示されたことは既に立証されていることである。ケージスは死ぬまで自己の憲法草案の正当性を主張したが、彼の上司である民生局長ホイットニーは「草案は壮大な実験であり誤りであった」としている。また、将来の再軍備の必然性を予感していた吉田首相が、9条2項に「前項・・」の文言を入れてGHQに対抗したことも世に知られていることであるが、九条の会が後述するコスタリカのように軍隊(自衛隊)を廃止しようとするならば、9条2項は改正すべきであり、護憲を主張する根拠にはなり得ないと思うのだが。自衛隊廃止について常に持ち出されるのが、世界で唯一軍隊を廃して国を存続させているコスタリカの例である。しかしながら、地政学的に東西の影響を受けないとともに領土問題もない人口500万人の小国の例を日本に当てはめようとする考えは極めて無理であると思う。コスタリカにおいても周辺国同様に麻薬が介在する凶悪犯罪が激増しているため、警察力が強化され軍隊に匹敵する武力を保持しているともされている。

 今回の九条の会の署名活動において学ぶところも多かったが、民間団体の名を借りて国民の思想調査・色分けを試みることを、不快に感じることに変わりはない。もし、九条の会の署名活動を不快に思う同志がいれば徒党を組みたい心境である。


APEC首脳宣言なしに思う

2018年11月19日 | 中国

 APEC首脳会議が、首脳宣言(共同宣言)を出せずに閉幕した。

 予測されていたとはいえ、議長国の首相が共同宣言を出せなかったのは「部屋にいた2人の巨人の所為」と公言する程、米中の隔たりは大きかったものと思われる。しかしながら、米中双方が今回の会議を評価していることから、米中は今回の会議自体を来るべき習主席の訪米・首脳会談の前哨戦若しくは瀬踏みと捉えていたものと思う。また、カーター前大統領の訪中等の動きも併せて鳥瞰すれば、関税戦争の落し処について水面下では何らかの進展があったのかも知れない.日本の外務省やメディアは重要会議後に共同宣言が出されることが会議の成功または重要問題の進展と捉えるのが一般的で、今回も同様の趣旨で成果が無かったとする報道もあるが、合意できなかったことにも相手国の姿勢と問題の隔たりを双方が共有できたという大きな成果があるのではないだろうか。外交と会談の成果を誇示したかった鳩山一郎・河野一郎コンビが、性急に1956年(昭和31年)10月19日に署名した日ソ共同宣言が、日本の主張を不明確にし、領土交渉を不毛なものにした経緯もそのことを示しているように思う。それはさておき、今回のAPEC首脳会議は日本にとって大きな収穫もあった。それは韓国首脳との会談・接触を断って、徴用工問題に対する明確な姿勢を韓国に伝えたことである。会談あるいは交渉に応じることは、何らかの解決策を双方で見出す努力に応じたものと解され、今回の安倍総理の処置は首脳会談で不快感を伝える以上のシグナルになったものと思う。また、国際会議の場で台湾代表に台湾への紐帯感を伝えたことも見逃せない成果であると思う。先のASEANでは一定の存在感を示し得た中国であるが、以後の世界的な中国の新植民地主義警戒感の広がりから、マレーシア・スリランカ・モルディブ・バングラディシュで対中依存警戒の機運が高まり、中国の一帯一路事業の縮小・破棄が相次いでいる現実を踏まえれば、中台関係に一歩踏み込で台湾擁護の姿勢を打ち出したことは賢明な選択であったと思う。

 その一方で、3兆円規模の対中スワップ協定締結に傾いていることは解せないことである。一帯一路構想による新植民地主義を警戒しつつ、その原資にもなり兼ねないスワップ協定を急ぐ戦略が凡人の自分には理解できないことである。安倍総理も、弱腰外交の根源である等方位外交の呪縛から抜け出せないのだろうか。


APECでの中国とポートモレスビー攻略作戦

2018年11月18日 | 中国

 APEC(アジア太平洋経済協力会議)での、米中代表の演説が報じられた。

 アメリカはペンス副大統領が、中国は習近平主席が、それぞれの持論を展開して激しい応酬になったと伝えられている。特に、習近平主席の「(一帯一路構想には)地政学的な目的は無く、債務の罠なども無い」「(知的財産権の保護)科学イノベーションは少数の人の金儲けの道具となるべきでない」には笑わせられた。一帯一路構想は中華思想実現のために近隣諸国の中国化と東・南シナ海を中国原潜の安全な隠れ場所にするための軍事拠点確保をを目的としているのは自明の理で、アフリカに対する市場開拓のための投資とは全く異なることは国際社会で認知されていることであり、地政学的な新植民地的侵略行為である。知的財産権保護に関しては「先端技術後進国の中国が、西側の技術先進国から盗むのは当然である」との居直り強盗的な発言に他ならない。更に習主席は「冷戦に勝者はいない」とも述べているが、習のカーテンで冷戦と新植民地的侵略を仕掛けたのは中国自身であることを忘れたかのようである。APECでの中国の言動はさておき、APEC開催地のポートモレスビーは大東亜戦争で日本が大敗して多くの日本人が散華した地であることは報じられていない。米豪遮断と絶対国防圏構築のため設営したニューブリテン島のラバウル基地を安全なものとすべく行われたのが、ポートモレスビー攻略作戦である。不幸なことに地図さえ無い人跡未踏のスタンレー山脈を越えてオーストラリア軍が守備するポートモレスビーを攻略せんとする作戦は兵站の頓挫と、米軍のソロモン諸島ガダルカナル島への侵攻が始まったことから失敗し、以後の米軍の飛び石作戦を許してしまう端緒となった地である。激戦後70年を経た因縁の地で、日米豪が歩調を合わせて中国の覇権に対処している現状を、泉下の英霊はどのように感じているのだろうか。おそらく安倍総理に国威発揚のための無言のエールを送っているものと思いたい。パプアニューギニアやソロモン諸島で戦った陸軍部隊には、ソ満国境から抽出された部隊が少なくないが、ソ連の後継であるロシアから平和条約交渉の加速化がポートモレスビーで持ちかけられたのも、何やら因縁めいて見えるところである。

 願わくば、拙文をお読み頂いた諸兄におかれては、太平洋の地図を開かれてニューブリテン島ラバウル、パプアニューギニア島ポートモレスビー、ソロモン諸島ガダルカナル島を見直していただいて、諸悪の根源とまで酷評される日本帝国陸海軍が、遥か本土を離れて酷暑炎熱の地で帝国の存亡を賭けて白人優位社会に挑戦した気概を発見して欲しいと願うところである。


野党共闘と市民連合

2018年11月17日 | 野党

 来年夏の参院選に向けた野党共闘の在り方が問われている。

 前回の衆院選では、当選者1人の選挙区では自民党の候補者に対して野党候補1人を擁立して選挙戦を戦い、野党共闘は一応の成果を挙げたとする意見がある一方で、支持政党の候補者がいないという理由で選挙そのものから棄権する有権者があったことも指摘されている。野党共闘と言えば聞こえがいいが、実態は野党間の主要政策に対する隔たりが余りにも大きく政策協定を結べないために、選挙区ごとに各政党支部が地域の市民連合と個別に政策協定を結んで候補を一本化するという手法を取ったものである。関係の冷え切った熟年夫婦が、直接に対話せずにペットを仲立ちとして間接的に会話すると聞くが、野党共闘の実態は市民連合という仲介者なしには成り立た無かったものである。更には衆院選以後の離合集散劇に見る限り、その行動が市民連合との政策協定に基づいているとする議員はいなかったように思う。今回の参院選でも前回と同じように市民連合を仲介者として、候補者を1本化する手法に落ち着くものと思うので、市民連合について調べてみた。市民連合の正式名は「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」といい、平成27年の12月に学生グループ「SEALDs(シールズ)」を中心に結成されたものであり、主張は①安全保障関連法の廃止、②立憲主義の回復(集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む)、③個人の尊厳を擁護する政治の実現を目指す、ための十全な「野党共闘」を促し、統一候補者の推薦や支援を積極的に行う、とされている。要約すれば、呉越同舟して自民党政権打倒のためになりふり構わずに活動する団体を糾合した連合体が適当であろうと推測する。我々有権者は、改革者に賛同する前提として「具体的に」「何を」「どのように」変革するのかを求める。旧民主党が政権を奪取できたのは「子供手当」の一点であり、郵政選挙で小泉自民党を大勝させたのは当時唯一残っていた郵政公社を解体して郵便事業を民営化し利益を国民に還元するとしたことであった。ビルド&スクラップ(新制度を建設して後に旧制度を破壊する)は国家運営を含めて事業継続の鉄則であり、スクラップは主張するものの、それに代わる新制度のビルドを一向に提示できないことが野党の停滞に繋がっていることを野党はもっと真剣に考える必要があると思う。公党が安全保障関連法の廃止や集団的自衛権の否定を主張するならば、より有効な新制度を提示すべきであり、既に実効性を失っている国連の機能に期待するという時代錯誤の対応策では大方の国民の賛同は得られないと思うところである。

 モリ・カケ然り、桜田・片山大臣然り、相手を貶めて自分を優位に思わせる相対評価の獲得にのみ恃む退嬰的な野党に幻滅するとともに、一切の社会的責任を負わない市民連合との政策協定を以て野党共闘とする姑息な手法ほど有権者を愚弄する政治手法は無いと思うものである。


「九条の会」の署名依頼に思う

2018年11月16日 | 憲法

 「九条の会」の署名依頼が郵便受けに投げ入れられていた。

 「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」と銘打たれ、取扱団体は「九条の会」、呼びかけ団体は「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」、集配は「横須賀市民九条の(地域名)のつどい」となっている。改めて「九条の会」を調べてみた。設立の趣旨では、信条を超えて純粋に護憲の同志を結集するとしているが、設立メンバー9人を始め賛同者として名を連ねる200名近い人達を眺めれば、同会が共産党にシンパシーを感じる人々の集団とするより、共産党の下部組織に近い団体とは衆目の一致するところと思う。今回の署名依頼についても、体裁を整えた印刷物を準備し、地域の全戸に配布するためには相当の資金力・組織力が必要とされるものであり、かつ『署名の回収は平日の午後に係りの者が訪問する』とされていることからも、明らかに草の根運動とは別次元の共産党の浸透活動と見るべきであろうと考える。共産党を始めとする左派勢力は折に触れて個人情報の保護を主張し、マイナンバー制度の導入には徴兵制復活まで懸念されるとして導入絶対反対の立場であったと思うが、今回のように全戸に署名依頼して回答回収と称して戸別訪問をすることは、明らかに全住民の政治信条を確定して党勢の拡大に繋げようとするもので、踏み絵の強制にも似た行為で社会通念上も許されることではないと思うし、過去にも例を見ないものではないだろうか。共産党お得意の「ノルマ」達成に苦慮した下部組織の暴走か、それとも改憲騒動を隠れ蓑にした名簿業者の活動か判然としないが、いずれにしても、あってはならない犯罪行為と思うものである。

 抗議しようと思い、チラシに記載されている前述の取扱団体と呼びかけ団体に電話を掛けたが、平日の午前10時にも拘らず、呼び出し音だけが受話器に中で空しく鳴り響いている。