もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

川崎重工の所得隠しに思う

2024年12月25日 | 自衛隊

 川崎重工業が海自に提供したとされる十数億円が所得隠しと認定されて、追徴課税の対象かと報じられた。

 海自に提供されたとされる金品の詳細については報じられていないが、造船所での検査修理を経験した自分には思い当たる点が少なくない。
 かって艦船修理費は、艦齢に比例して減少する仕組みであったために、老朽艦になれば部内規定で定める検査項目すらクリアできないことがしばしばであった。また、修理のために必要なボルト類などの消耗品は、各艦艇ごとに年間で定められた金額の中で賄わなければならないために、需要が急増する修理期には不足するというようなケースもあった。自分が、海士であった頃には現場で働く工員さんに頼めば2・30本入りの箱ごと貰えたが、造船不況以降は工員さんですら必要本数を申告して受け取ると変わったようで気楽に頼める雰囲気ではなくなったものの、同じ現場で作業するうち仲良くなった工員さんに都合付けて貰うこともあった。また、検査の過程で判明した損耗部品については、本来官給すべきものであるが部品購入費が無く造船所が手配して艦船修理費で決済するようなケースも有ったかもしれない。自分を含めて乗員は、査定・契約・決済の業務にはタッチしないために、目の前で行われている造船所工事の金額が如何ほどか、どの予算で行われているか等は知らないし、おねだりしたボルトがどのような形で処理されているかなどは知りもしなかった。いや、朧気には何らかの形で官が支払っているだろうとは思っていたが、今回の川重のケースから考えると、乗員に与えた便宜を官には請求できずに、裏金を作って凌いでいたようである。
 修理期間中の乗員宿舎についても、官請求分を超える部分は裏金で補填していたともされるが、次に述べる自分のケースでも造船所が簿外の補填をしてくれていたのかもしれない。
 昭和から平成となった頃、新造艦の艤装員を命じられた。造船所が手配してくれた子会社が運営・管理する寮に泊まって造船所に通う訳であるが、月額2万円強と記憶している艤装員手当てから寮費を払い朝夕2食の賄い食と昼食の仕出し弁当を採れば、艤装員手当てをオーバーした。同じ寮に商船の艤装員もいたが、こちらは寮費・食事(晩酌付き)は会社持ち、造船所への往復もタクシーであった。我々隊員の懐を知っている造船所は、おそらく寮費や食事代も原価を切って提供してくれていたのだろうし、子会社の経営を圧迫するわけにもいかないので差額は本社が負担したであろうと思うが、補填には何らかの会計操作が必要であろうことは想像に難くない。

 川重の裏金・所得隠しの実態は、これから明らかにされるだろうが、最大の原因は「海上自衛隊の艦船修理費や部品購入費が足りない」ことであると思う。艦艇の建造・修理を担って艦艇の可働率維持に自衛官と志を同じくする造船所にあっては、修理予算欠乏と乗員窮状の側面が今回の誘因としてあるのだろうと考えると、申し訳ないの一言しか言葉が出ない。


冬休み&OSO18を偲んで

2024年12月24日 | 美術

 冬休みが始まった。

 孫二人、終業式を終えたその足で、寓居に直行。親の監視・叱責が無い所為か1時間前まで、ぐーたらのし放題。
 しかし、最後に孫娘が「おじいちゃんは良い所はないのに、絵だけはうまいね」。これって誉め言葉なのか。微妙にくすぐって「お休みなさい」。明日以降が思いやられます。

 明日は強行軍を強いられてブログを書く暇も無いだろうと覚悟を決め、当地に転居して最初に書いた絵を披露してお茶を濁すことにしました。
 以前、クラス会の面々に披露したら「お前に似合わず目が優しい」との評価を得て、眼をおどろおどろしく加筆した物です。興味尽きないOSO18に捧げます。

「OOSO18」(F10号)


恩賜の煙草の思い出

2024年12月23日 | 自白

 恩賜の煙草に関して、懐かしい思い出があるが、30年以上も経過しているので時効であろうと思い披露する。

 現在はどうなっているのか知る由もないが、かっては海上自衛隊の高級幹部が年に1度、東京に集合して会議を持つことが恒例であった。海軍大佐であられた高松宮殿下は、参集した高級幹部を招いて懇談されるのを例とし、楽しみにもされていたそうで、散会の際には吸い口に菊の御紋章があしらわれた紙巻きたばこ(恩賜の煙草)を手交されたと聞いている。
 自分が幕僚であった司令部の副官室で、高松宮殿下が下賜されたその貴重な恩賜の煙草を発見した。副官室付きの女性職員に質すと、既に喫煙者が激減していたために1年以上も棚に仕舞われたままとのことであった。ダメもとで「1本頂戴ョ」とねだったら、案に相違して「いいわョ」との即答。有難く頂戴して副官室の裏に隠れて至福の一服。
 以後、指揮官への報告の度に副官室に立ち寄っては「1本頂戴」・「どうぞ」の繰り返し、最後の頃には厚かましくも「1本貰うネ」になっていた。そんな不謹慎な幕僚は自分の他にはいなかったらしいが、2・3箱あった恩賜の煙草は2か月ほどで煙となってしまった。
 半年ほど経って、指揮官に報告を済ませて退出しようとした際、指揮官がニヤリと笑って「オイ。恩賜の煙草は美味かったか」の一言。脇の下にドット冷や汗、覚悟を決めて直立不動、「大変美味しかったです」。「そうか」。
 副官室に飛び込んで尋ねたら「お客さんに渡すと云われたので、貴方が全部吸いましたと申し上げました」とのこと。
 人に自慢できることは何もないが、自分と同レベルのランク・ポジションの人間で、恩賜の煙草を復数箱も頂いた人間は、そう多くはないのではと思っている。

 後日、指揮官から聞いたところでは、既に体調を崩されていた殿下は、散会に際して「自分が死んだら、皇室と海上自衛隊の縁も切れるなァ」と寂しげに漏らされたとのことであった。自分が煙にしてしまった恩賜の煙草は、時期的に考えると高松宮殿下が最後に下賜されたものだったのかも知れない。
 殿下は下賜した恩賜の煙草が、初老の下級幹部によって煙とされたとは想像すらされないであろうが。


創作劇台本

2024年12月22日 | 国政・行政

 創作劇の台本を書いてみた。登場する人物や団体は実在しない架空の設定であることは当然である。

 老舗大手”自民産業”雇われ社長である石破さんは、己の手腕不足による業績不振で会社の規模を大きく損ない、他社の支援なしでは会社を維持できない状態になった。
 途方に暮れた石破さんは、息抜きのために酒でも飲もうと出かけたが、途中で転びそうになってしまった。手を差し伸べてくれたのは国民と云う名のバー経営者の玉木さんで、「うちで休んで行きなさいョ」という優しい言葉に釣られてバーに入った。看板に書かれている「国民」という名に安心してのことであるが、出てきた請求書は103万円で但し書きには将来に亘って払い続けることと書かれていた。なじる石破さんに対して玉木さんは平然と「店名を国民とは略称していますが、本当は国民民主で国民のことはあまり気にしていません」と嘯く有様であった。
 金がないという石破さんに玉木さんは「転びそうな貴方を扶けた自分に金を払うのは当然。金をどう工面するかは貴方の勝手」と、店内に設置されている国債発券機にチラチラと目を向けながらニベもない。
 棟続きで古物商を営む維新堂店主は騒ぎにカモネギの匂いを嗅ぎつけるや駆けつけて、次にはウチが援けますので、大学生の息子の教育費を無料にし、自分の控除も引き上げてと頼み込んだ。
 維新堂に対する石破さんの姿勢から、「もっと取れる」と踏んだ玉木さんは、金額を178万円に書き換え、但し書きにもガソリン税の暫定部分廃止を追加した。将にぼったくりバーの手口である。
 騒動に驚いた会社の会計担当者が駆けつけて、「一時金ならともかく将来に亘ってこんなに取られては会社が潰れます。ガソリン税はボロボロになりかけている道路を補修するために是非必要です」と繰り返しても、玉木さんと維新堂は聴く耳を持たない。
 原因を作った石破さんはと云えば、人の良いだけが取り柄で争う気概もく、石破構文と揶揄される意味の無い原則論や理想論を繰り返して社長に居座る方策に汲々とするのみで、会計担当者の困惑をよそに処理を部下に丸投げにして決断しようとしない。
 三軒隣で老舗の立民商事は、一時的な業績向上にはしゃいでいたが玉木さんと維新堂が手にした獲物を羨ましく思うものの、これまでの放漫経営・寄り合い所帯の体質が災いして、指をくわえるしかない様子。
 騒ぎを報じる新聞・テレビも、一頃の財政再建は忘れたかのように、”手取り何万円増”と他人の懐勘定をのみ報じるのみである。

 ここまでが前編であるが、後編では、石破さんが愛想尽かしされて社長の座を追われるのか、道路維持、教育・子育て支援という巨額国債の発行に手を染めるのか、立民商事の反撃は・・・と盛り沢山である。乞う御期待。


多様性重視風潮に揺り戻し

2024年12月21日 | アメリカ

 ナスダックが上場の基準として設けている多様性に関する基準が無効と判断されことが報じられた。

 2021年にナスダックは米証券取引委員会の承認を得て、上場の基準として取締役に女性やマイノリティーが一定の割合で登用されていることを設けていたが、これが逆差別を招くとして裁判所が無効と判断したものである。
 報道によると、アメリカでは「多様性・公平性・包括性(DEI)」の取り組みが行われており、特に2020年に起きた白人警官による黒人への暴行死が取り組みを加速させたとされている。
 今回の訴因は「人種やジェンダー意識を個人の能力よりも高く評価する傾向」であるとされているので、アメリカ社会全体でも「過ぎたDEI」に対する是正・揺り戻しが起きているようである。また、多くの企業でDEI対処の部署が縮小・廃止されるという事態も起こっているそうで猶更である。
 日本でも雇用機会均等法などによって女性の地位向上が図られて、それなりの成果を上げているようであるが、「能力において女性候補者とほぼ同等か僅かに上回っている男性が」男性と云うだけで昇任や昇給について女性の後塵を拝することは無いのであろうか。
 これまで日本では、主として黒人やヒスパニックなど人種的に使用されていたマイノリティー(少数派)という用語も、近年のジェンダー平等思想の普及につれてLGBTも「マイノリティー」の範疇に加わって来つつあるように感じるので、将来的には健常者と云うだけでLGBT者に後れを取るケースも起きる可能性があるようすら思える。
 かって雇用機会均等法成立のきっかけを作ったウーマン・リブの闘士が、「法に依ってしか守られない平等には何の価値もない」と述べていたことを思い出す。おそらくであるが彼女は、法に依る規制や庇護は、現在の様な軋轢・分断・不平等をひき起こすだろうことを既に予知していたのかも知れない。
 「アメリカの現在は数年後の日本」と云われるが、日本で現在営々・嬉々として取り組んでいるジェンダー平等施策も、数年後にはアメリカ同様に「逆差別の温床」とされるのかも知れない。

 文中に「LGBT」という字句を使用したが、最初に浮かんだ言葉は性同一性障害者であった。この言葉が適当かどうか調べると、実にいろいろな症状・名称・分類があり、精神医学の知識が無い自分では理解できなかったので、分かりやすいLGBT(L:レズビアン(Lesbian)・G:ゲイ(Gay)・B:バイセクシュアル(Bisexual)・T:トランスジェンダー(Transgender)を使用した。更にLGBTも、最近はQ:クエスチョニング(迷っている人)を含めた「LGBTQ+」と変化しているらしいが、自分の頭では処理困難。
  現在、喫煙者も大きく減少しマイノリティーと呼ばれるに十分に相応しいと思うが、何の恩恵・庇護もないままに来春には増税=値上げが決定したらしい。嗚呼!!