◇つらさ抱える人の救いに--内海章友さん(35)
大学1年の秋、初めて精神科を受診した。友人の男子学生への恋心が募るあまり、大学に行けなくなっていた。寝ても覚めても彼のことを考えてしまうが、同性の自分が好意を打ち明けることはできない。会いたいけれど、怖かった。
病院では十分な問診もないまま薬を処方された。「飲んだら本当に病気になってしまう」。通院せず、下宿先のアパートに引きこもった。首をつろうとした時、心配して駆けつけた親せきに発見された。大学を半年間休学した。
自分が同性愛者だと自覚したのは中学1年のころだ。歌番組で男性アイドルグループに目を奪われた。恋愛感情を抱く相手も男子生徒ばかり。テレビでは人気お笑いコンビが同性愛者をちゃかしていた。「本当にそんな人いるのかな」「気持ち悪い」。学校で話題に上るたびに「自分のことを知られてはいけない」と息を潜めた。
大学卒業後は町役場に勤めたが、体調を崩して2年で退職。やがて別の自治体で障害者就労支援に携わるようになった。精神障害者と雇用先の間を取り持ち、仕事が軌道に乗る様子を見るのがうれしくて天職とも思えた。同性愛者であることも公表し、気持ちが楽になった。昨年6月に退職し、今は精神保健福祉士の資格取得を目指している。
仕事の傍ら社会教育関連のNPOでも活動し、高校や大学で話をする機会が増えた。精神疾患とセクシュアルマイノリティー(性的少数者)という二重のつらさを抱え「自分のような人がいることを知ってほしい」と訴える。講演依頼にはできる限り応じ、約5年間で50回を超えた。
今でも体調が良くないと、家にこもることもある。でも「不慮の事故などで亡くなる人もいる。自殺しようとして生き残った自分には、何か生きる意味があるのではないか」と思えるようになった。
かつての自分のように、誰かに相談したいと悩む人たちの救いになれたら。そして「死んではいけないよ」と伝えていきたいという。
毎日新聞 2010年8月7日 東京朝刊
大学1年の秋、初めて精神科を受診した。友人の男子学生への恋心が募るあまり、大学に行けなくなっていた。寝ても覚めても彼のことを考えてしまうが、同性の自分が好意を打ち明けることはできない。会いたいけれど、怖かった。
病院では十分な問診もないまま薬を処方された。「飲んだら本当に病気になってしまう」。通院せず、下宿先のアパートに引きこもった。首をつろうとした時、心配して駆けつけた親せきに発見された。大学を半年間休学した。
自分が同性愛者だと自覚したのは中学1年のころだ。歌番組で男性アイドルグループに目を奪われた。恋愛感情を抱く相手も男子生徒ばかり。テレビでは人気お笑いコンビが同性愛者をちゃかしていた。「本当にそんな人いるのかな」「気持ち悪い」。学校で話題に上るたびに「自分のことを知られてはいけない」と息を潜めた。
大学卒業後は町役場に勤めたが、体調を崩して2年で退職。やがて別の自治体で障害者就労支援に携わるようになった。精神障害者と雇用先の間を取り持ち、仕事が軌道に乗る様子を見るのがうれしくて天職とも思えた。同性愛者であることも公表し、気持ちが楽になった。昨年6月に退職し、今は精神保健福祉士の資格取得を目指している。
仕事の傍ら社会教育関連のNPOでも活動し、高校や大学で話をする機会が増えた。精神疾患とセクシュアルマイノリティー(性的少数者)という二重のつらさを抱え「自分のような人がいることを知ってほしい」と訴える。講演依頼にはできる限り応じ、約5年間で50回を超えた。
今でも体調が良くないと、家にこもることもある。でも「不慮の事故などで亡くなる人もいる。自殺しようとして生き残った自分には、何か生きる意味があるのではないか」と思えるようになった。
かつての自分のように、誰かに相談したいと悩む人たちの救いになれたら。そして「死んではいけないよ」と伝えていきたいという。
毎日新聞 2010年8月7日 東京朝刊