【PJニュース 2010年8月9日】前述の「急性期治療病棟制度」の導入がそれだ。また、精神科診療所優遇策もそのひとつと言える。付属デイケアをもつ診療所の経済はゆとりがあり、病院の仕事特有の“しんどさ”も少ない。その故か、最近の精神科診療所の急増ぶりは驚くばかりだ。全国軒並みなのである。これが、結果として精神病院入院の防波堤となることは明らかだ。
加うるに、前述の各種地域ケア施設の育成も近年強化され、施設数も各地でかなり増加してきた。近頃よく言われる“精神分裂病の軽症化傾向”や、再発防止に効果著しいデポ剤等の薬剤開発もその方向を助けることになる。
長期在院者再生産をストップする条件は徐々にだが、整いつつある。
これら諸々の事柄がひとつになって、時間はかかっても日本は、「開かれた精神医療」への道を牛歩の如く歩んでいくことになる。まことにまどろっこしい歩みなのだが、日本の現実を見据えるとそういうことになるだろう。
もうひとつ、重大かつ重要な法律のことを述べておかなくてはならない。
“池田小事件”をきっかけに、2003年、一気に成立した「心神喪失の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律」、略称「医療観察法」についてである。
これは長い間賛否両論、喧喧諤々で議論が交わされてきた。“保安処方”、即ち“司法医療制度”と同じものだ。池田小事件の衝撃が大きかったので、この法律は充分な意見も盡されないままに数々の問題点を残して一気に成立してしまった。
その詳細については省くが、これには「5年後に見直し」という附帯条項もついている。その間の施行実績を検証し、5年後に問題となる点の議論が盡されることを期待するしかない。それには、裁判官や、精神科医や弁護士やその他すべての人がこの法の施行結果を注意深く見守って、問題点をはっきりさせていくことが必要である。
最期に、精神病者の権利について言えば、かつての精神病院に較べるなら今の病院は隔世の感がある。“近代化助成”で建物も立派になったし、暴力沙汰も聞かなくなった。但しこれは、昔があまりにひどすぎただけの話で今で充分というわけにはいかない。
例えば、前述の「任意入院者」の半数近くが閉鎖病棟に入れられているという問題もある。精神病院の情報公開も未だしだ。「障害者が地域で暮らす権利」に至っては夢のまた夢遥か道遠しである。
近年、福岡や長野などで弁護士会による“精神障害者相談窓口”が常設で設けられているというが、こういうものが全国すべての都道府県に設置されるようになれば、状況も随分と変わっていくものと思われる。
日本で「ジョンソン判決」までは期待するまい。でもせめて、「社会的入院者が地域で暮らす権利」を楯に「彼らの地域住居を準備せよ」と提訴するくらいのことはできないものであろうか?憲法によれば、日本国民は健康にして文化的な生活をする権利があるのではなかったか。【つづく】
加うるに、前述の各種地域ケア施設の育成も近年強化され、施設数も各地でかなり増加してきた。近頃よく言われる“精神分裂病の軽症化傾向”や、再発防止に効果著しいデポ剤等の薬剤開発もその方向を助けることになる。
長期在院者再生産をストップする条件は徐々にだが、整いつつある。
これら諸々の事柄がひとつになって、時間はかかっても日本は、「開かれた精神医療」への道を牛歩の如く歩んでいくことになる。まことにまどろっこしい歩みなのだが、日本の現実を見据えるとそういうことになるだろう。
もうひとつ、重大かつ重要な法律のことを述べておかなくてはならない。
“池田小事件”をきっかけに、2003年、一気に成立した「心神喪失の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律」、略称「医療観察法」についてである。
これは長い間賛否両論、喧喧諤々で議論が交わされてきた。“保安処方”、即ち“司法医療制度”と同じものだ。池田小事件の衝撃が大きかったので、この法律は充分な意見も盡されないままに数々の問題点を残して一気に成立してしまった。
その詳細については省くが、これには「5年後に見直し」という附帯条項もついている。その間の施行実績を検証し、5年後に問題となる点の議論が盡されることを期待するしかない。それには、裁判官や、精神科医や弁護士やその他すべての人がこの法の施行結果を注意深く見守って、問題点をはっきりさせていくことが必要である。
最期に、精神病者の権利について言えば、かつての精神病院に較べるなら今の病院は隔世の感がある。“近代化助成”で建物も立派になったし、暴力沙汰も聞かなくなった。但しこれは、昔があまりにひどすぎただけの話で今で充分というわけにはいかない。
例えば、前述の「任意入院者」の半数近くが閉鎖病棟に入れられているという問題もある。精神病院の情報公開も未だしだ。「障害者が地域で暮らす権利」に至っては夢のまた夢遥か道遠しである。
近年、福岡や長野などで弁護士会による“精神障害者相談窓口”が常設で設けられているというが、こういうものが全国すべての都道府県に設置されるようになれば、状況も随分と変わっていくものと思われる。
日本で「ジョンソン判決」までは期待するまい。でもせめて、「社会的入院者が地域で暮らす権利」を楯に「彼らの地域住居を準備せよ」と提訴するくらいのことはできないものであろうか?憲法によれば、日本国民は健康にして文化的な生活をする権利があるのではなかったか。【つづく】