昨日の日本経済新聞の夕刊1面トップに、「企業年金 選択肢広く」
と題して、平成12年度で廃止となる適格退職年金の移行を円滑にす
るため、確定給付企業年金と確定拠出年金の混合型を拡充する検討
に厚労省が入った、という記事がありました。
現在、混合型年金としては、確定給付企業年金でのキャッシュ・バラン
ス・プランがあります。
この混合型年金(ハイブリット型年金)に、①改良型キャッシュ・バランス・
プラン、②フロア・オフセット・プラン、③コレクティブDC を加えるとい
うものです。
①は、年金給付額を決める指標に国債以外の指標、例えば、株式指数
の採用を認めるということで、市場が低迷した時に企業に追加負担が
生じないようにするというものです。年金を受け取る側からすると、株式
市場が低迷した場合、年金の受取額が減ることになります。
②は、給付額を最低保証額と拠出額+運用益の大きい方で選択可能と
いうプランで、最低保証額の設定が問題になりそうです。
③は、個人が運用を行わず、労使で合意した年金事務局が年金を運用
する仕組みということです。これは、確定拠出年金への移行のハードル
であった運用を個人から労使で合意した年金事務局とすることで、確定
拠出年金への移行を進める狙いがありそうです。確定拠出年金は確定
給付企業年金と比べると企業の追加負担がなくて済む制度です。そこ
から更に従業員個人での運用をなくし導入を促すということでしょう。
それが従業員個人にとって本当にいいかは、議論が必要だと思います。
これら①~③は、適年から確定給付型年金へ移行した後での、企業の
負担の軽減という意図があるようです。移行した後での運用の低迷による
積立不足への企業の追加負担の軽減ということでしょうか。
さて、これらは中小企業の適格退職年金の移行を円滑にすることができる
のか?ということです。
もともと確定給付企業年金は、どちらかというと大企業向きの制度です。
特にキャッシュ・バランスプランは制度運営の負担を考えると、中小企業
には向いていません。
新しい混合型年金は、移行後の企業の追加負担軽減を狙っているようで
すが、移行に際しては、適年と確定給付企業年金の計算利率の違いによ
る負担が減るわけではなさそうなので、中小企業には、やはり垣根が高い
かもしれません。
そもそも、適年の移行が円滑に進んでいないのは、企業が確定給付企業
年金導入後の追加負担を嫌っているわけではありません。これまで、金融
機関は中小企業に対して負担の重くなる養老保険を絡めた提案をさんざん
しています。確定給付にしても追加負担の問題や、退職給付会計上の問
題(積立不足分は退職給付引当金を増加させる。)といったことをキチンと
説明していない提案をよく見かけます。
が、選択肢は増えることになりそうです。
大切なのは、企業への提案の仕方・力量がこれまで以上に求められると
思います。また、セカンドオピニオンが重要になってきます。
企業の事業主と担当者にとっては、今まで以上に選択肢を示され、制度も
複雑だとなると、結論まで更に時間がかかるでしょう。
私たちとしては、その企業にとって何が一番いいのか、何を求めているの
かを、しっかりコンサルティングできる能力をますます磨く必要があります。
先週11月29日(土)のブログ、「中退共から確定給付企業年金への移行」
について、ご質問がありました。
「中退共から確定給付企業年金へ移行できるとする根拠は何か?」という
ご質問です。以下それについての説明となります。
根拠は確定給付企業年金法の附則第17条の「中小企業退職金共済法の
一部改正」の条文です。
また、簡単ですが中退共のパンフレット「中退共制度あらまし」(赤に白抜き
の文字)の4ページにも、「加入後、従業員の増加により中小企業でなくなった
場合、一定の要件を備えていれば、確定給付企業年金制度または特定退職
金共済制度に退職金相当額を引継ぐことができます。」と記載されています。
さて、次の標記の「適年 養老保険」ですが、こちらは、昨日11月30日(日)に
私のブログを読んでくださった方の検索ワードです。これについては繰り返し
書いてきました。また今週~来週のブログでも、触れる予定です。
適年の移行に養老保険は使わない方がいいです。
実は先日、ブログのアクセス解析をしていて、偶然、退職給付会計と保険商品
について間違った記述を見つけました。
2006年の書き込みなので、もう訂正されているかも知れませんが、税理士の
方のブログのようです。
内容は、「企業の決算期の長期定期保険等の解約返戻金は、退職給付会計
上の年金資産として扱える。」という説明です。
これは、できません。保険商品の積立金は、退職給付会計上の年金資産とは
なりませんので、ご注意ください。
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