今年も衛生週間が終わり、「標語」「ポスター」「チームワーク賞」その他の入賞作品及びに受賞者の発表祝賀会が本社で行われた。
店長の俺も勿論、このう店代表として参列していた。
毎年、この時期になると、検索ワードNO1となるのが、『衛生週間の標語』だ。
人気記事ランキングの入れ替えは多少、あるものの、秋には再びトップに躍り出る。
そのくらい世の人々は『衛生週間の標語作り』に頭を抱えているのだろう。
ちょっと待て! お手ては意外と バイバイき~ん♪
俺が「さくら」の副店長時代に書いた標語が今年も読まれ、お茶の間では、こう言われているのだろう。
「ゆうちゃん、
おやつの前に石鹸を付けて、きれ~に丁寧に手を洗いましょうね。
ほら、正義の味方、南副店長も、そういっていたでしょ?」
「は~い」
「いい子、いい子ね、ゆうちゃんは」
俺が物思いにふけっていると、たぬき部長の声が俺の頭上をコダマした。
「 では、このう店、店長から
ひとこと、お言葉を頂戴しましょう」
いつの間にやら受賞者に表彰状が与えられ、ときは祝賀会へと移行していたのだ。
目の前のテーブルに並べられたビール にちらっと視線を落としながら、俺は しずしずと…
歩行を進めた。
俺が一歩、また一歩と進むたびに、皆の視線を釘付けにしていく。
(あの、ユニークな標語を書いた南さんだよね? どんな面白い挨拶をして下さるのかしら?)
女子社員達の熱い期待に答えるべくして俺は遂に壇上に登りつめた。
(おっほん
)
(ごくん)
ピーンと張りつめた空気。
女性社員を中心とした俺の取り巻き。
度胸が据わった筈の俺の鼓動がにわかに早くなりだした。
ドクンドクンドクンドクン、、、、、元ひよこ組の親愛なる娘よ!
実は小心者「かもしれない」パパに勇気をおくれ
タヌキ部長と目が合う。
その瞬間、緊張感も最高潮に達した。
俺は冷や汗を拭おうとポケットに手を入れた。
スーツのポケットをまさぐるが、ハンカチは…何処だ、何処なんだ!?
世の中、ハンカチ王子の時代が来たと言われている。
それなのに俺は、こんな大事な壇上で 肝心のハンカチを忘れてくるとは(汗)
あれ、南さん、なんだか様子がおかしいわね? いつもなら、こういう盛り上げの場は得意な筈なのに。
そんなざわめきの中、俺は遂に腹をくくった。
俺はハンカチを探しつつ、落ち着け、落ち着け、こんな時こそ、ハンカチ王子を見習わなければ! と自分に言い聞かせる。
「俺は…
今日まで、
南は何か持っている! と言われ続けてきました。
そして、今日、それが何なのか、遂に分かりました」
ピーンと張りつめた空気が俺の額の汗を拭う。
かつての俺の直属の上司だった、チキンラーメンに凝っている店長も、ニッシー&ミナミとして、かつてはコンビを組んだ
西村も新店舗から駆けつけてくれていた。
彼らも見守る中、俺が言うべきことはー
「すばらしい仲間、つまりは上司、部下、同僚の皆様と、、、ごくん」
その時だ。
さくらを去った筈の鈴木すず子が呟く声が聴こえたのだ。
なんと!
奴は、俺の目の前のテーブル席から俺を見上げていたのだ。
「そうなのよねぇ。南店長、いつもポケットの奥に何か隠し持ってるんだもん」
ハンカチを探していたポケットの奥で、その時 俺の手は何かを探り当て、カサッと音がした。
ここでやらねば、男じゃない!
そう決意を固めた俺。
腹をくくった俺。
秘密を暴露することは不本意だが、やるしかない。
「これです!」
俺はポケットの奥に忍ばせておいた例の物を握り締め、高々と皆の衆にお披露目したのだ。
しーーーーーん。。。。
一瞬の静けさの後には爆笑の渦が待っていた。
「ちっ・・・チロルチョコ、1個」
一度は禁煙に失敗した俺が、煙草の値上げで再びトライした末に、常時肌身離さず持参しているもの、それはハンカチではなく。
口寂しくなったら、チロルチョコをそっとポケットから取り出す。
南さん、常に何か持っているのよねぇ。。。。と不思議がっていた俺のファン達よ。
俺が肌身離さず持参しているものとは。
胸ポケットに忍ばせた娘と嫁の写真。
そして、ポケットの奥にはチロルチョコ。
あ~ここで白状してすっきりしたぜ。
「では、ちょっこし悔しい気もするが、ロッテの日本一おめでとう。
西岡も俺と同じくポケットには常に何かを持っているそうだ。
ロッテのガムだそうだ。
これには無条件納得!! の俺。
俺も ちょっこし西岡の『洒落』を拝借した。
来年はホークスが完全優勝および、日本一を頂く。
では、かんぱ~い」
みなみ
鈴木すず子の著書、「とある街のとあるスーパー」も宜しく。http://goodbook.shop-pro.jp/?pid=22661041
今月中に新刊も遂に登場。
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