おいっす!
俺の名前は、はまうう 浜尾っす!
本名は いくらなんでも書けないっす。
っつーか俺、すぐヘンなあだ名、付けられるっすよぉ。
俺は、とあるスーパーさくら通り店で、鈴木すず子さんが働き出す数年前から、学生バイトとして働いていたっす。
「俺、もう卒業するんで、辞めるっす。とりあえず、卒業論文とゼミと、
まだ単位を取れていない必須科目に情熱をかける覚悟がようやく出来たっすよぉ」
と、南副店長に告げ、さくらを辞めたっすよ。
約一年後に、さくら復活してみればっすね~!
約2名、いや、3名か、俺が知らないスタッフがいた。
そのうち、一人は、つばめ君で、俺とおない年だと分かった!
もう一人は、やはり俺とおない年くらいの女子大生で、鈴木さんっていったかな。
お菓子を出しながら、さっそくタメ口で会話したっすよ。
そして、もう一人は、おじさん。
俺と同級生くらいの鈴木さんと、つばめ君には即刻 こっちから話しかけ、話もそれなりに弾んだんですがねー。おじさんは、ちょっと・・・。
おじさんの方から自己紹介してくれることを ちょっとは期待したっすけど。
一週間が経過しても、お互い会話らしい会話が無かったっすから、俺は矢木さんに聞いて見た。
俺が かつては担当していた飲料は、おじさんが毎日、補充しているみたいっすね。
「あの おじさん誰っすか?」
「おじさん・・・・・?」
矢木さんは、何故か不思議そうな顔をして、考え込んでいるっすよぉ。
俺、何かヘンなこと、言ったっすかぁ~!?
「おじさんって、誰ね!? おじさんっていったら、高田さんしか、おらんやないの。でも、あんた、昔、ここに居たときから、高田さんは居るんだから、勿論、知っとるやろ? それとも、あんた・・・その若さで、耄碌したんね?」
「ち・・・違うっすよぉ。勿論、高田さんは知ってるっすよ。
ほら! もう一人、おじさんが居るじゃないっすか! 飲料出してるおじさんがっ!」
俺は、たった今、おいしい水をバック在庫から運んできて補充を始めた男を指した。
晩年の石原裕次郎の風格そのものの、おじさんが俺たちの前を横切っていく・・・っすよ!
「あぁ、あれは・・・・」
ほらね~! ちゃんともう一人、おじさんが居るじゃないっすかぁ、と矢木さんに言おうとした、そのとき・・・。
「カトくんのこと? ちょっと、あんた、何を言いよるんねー!!
カトくんは、あんたより若いんよ~!」
「・・・・・へ!?」
俺は、我が耳を疑った。
嘘っすよね?
矢木さんは、いいや、いいや、嘘なんかじゃないんよ、と言いたげに、首を横に振る。
「まっ・・・マジっすかぁ? カトくんって言いましたっけ? 俺より若いってことは・・・俺は22歳っすから、彼は・・・21歳っすか? え? 違う? もっと下?
じゃ・・・じゃあ・・・ハタチ・・・とか?
へ?
それも違う?
もっ・・・もしや・・・・十代っすかぁ~
俺は驚き余ったついでに、宇宙の彼方まで吹き飛ばされたような衝撃を受けたっすよぉ。
俺の驚きをよそに、矢木さんは言った。
「ちょっと、ハマグリくん! 十代で、ここで働き始めた頃は、ラフランスでも通用しただろうけどね。 十代でも、カトくんのように しっかりした子もいるんだから、ラフランスはもうやめよーね!」
「や・・・矢木さん、覚えてるっすか? 元チーフが俺に付けた、あだ名のこと・・・?」
もっちろんよぉ~! と矢木さんは喜んだ。
実は俺、自称、いい加減な奴ってことで、通ってるっすよぉ。
シフトはチーフが作成するっすけど、俺のシフト、前チーフは作ってくれなかったっすよぉ。 どうしてですか?って聞いたら、
「あぁ、お前は てきとーに、書いとけ!」
テキトーな俺って、シフトもテキトーでいいって感じっすか?
俺が顔では何でもないことのように、へらへらって笑って誤魔化して、それでも結構、傷付いて帰ろうとしたときだったっすね。
チーフが俺を呼び止めて、叫んだ。
「あぁ、そうだ! 今日から俺、お前のこと、ラフランスって呼ぶからな!
ラフランス!」
「ら・ふらんす?」
なーんか、横文字で、カッコいいなぁ、俺にピッタリな響きじゃないっすか! って俺、結構、気に入って、そのあともずっと、ラフランスって呼ばれて喜んでたっすよ。
そんなとき、青果のチーフが西洋梨を差し出して、俺に言った。
「ラ・フランスって、これのことって知ってた?」
俺は、洋ナシを数秒間、眺めた。
これ、梨っすよね?
「そうだ。梨だ。洋ナシだ。
つまり、お前は、洋ナシ。
ようなし! 用無し! 用が無い!」
「つまりは 役に立たないってことっすか!?」
「まっ・・・まあ、そういうことだ。非常に言いにくいが。ハマグリがグロッサリーのチーフに、
用無し~、と呼ばれて、嬉しそうに返事をするお前を遠くから見ていることが、心優しい俺には、耐えられなくってよぉ。
つい、本当のことを教えてあげたってわけ。」
青果のチーフは、そういうと、にやっと笑った。
「ラフランス~!」
向こうでグロッサリーの当時のチーフ、うさピョンが俺を呼ぶ声がした。
よ・う・な・し・・・・・
当時の苦い思い出を矢木さんに指摘され、俺は目の前にやってきた鈴木さんに言った。
「俺、すぐにヘンなあだ名、つけられるっすよ。だから、ハマグリくんでもいいっす」
「そう? じゃぁ、(ほんとはブログ名だけど・・・)ハマグリくんって、呼ぶね!」
タメ口で喋れる同世代の女性スタッフがいると、いいっすよ。
おじさんかと思ったカトくんは、意外にも俺より年下ってことで、安心したす。
その翌日、カトくんの実年齢ニュースに引き続き、更なるショッキングな新事実が俺の耳に飛び込んでこようとは・・・
俺も全く予期できなかったっすねぇ。
さくら復活したあとは・・・
ラフランスあらため、
ハマグリくん。
俺って 洋梨 (用無し) じゃないっすよね? By ハマグリ