トム・ソーヤーとハックルベリー・フィン
この二人の名を知らない人は、きっといないでしょうね?
児童文学としても、読みましたし、毎週日曜日にアニメ放映もされました。
コロナ禍で昨年の5月あたりから、『ブックカバーチャレンジ』を始めたことがきっかけで、子供の頃に読んだ名作をもう一度 フル新訳シリーズにはまってから、約一年になろうとしています。有名過ぎて、英語でも「ペンキ塗り」の場面はテキストでやったことがあるくらいなので、パスしていいかな~という気持ちも何処かにあったのです。530ページと、ジェイン・エアのような長さ(トムソーヤーは1冊なので、ジェインの方が上下巻で、約2倍の長さではありますが)少年・少女向けとしては、かなり長いですが、読んでみることにしました。
そして!見事にハマりました!
悪ガキトム、頭の回転が速いトム! 日曜礼拝へ行くのは嫌、何とか仕事(手伝い)はサボって遊びたい!
そんなイメージは昔のままなのですが、単なる悪ガキの冒険悪戯物語だと思っていたら、とんでもなく深い小説だったのです! 『野生の呼び声』でも書きましたが、白人とネイティブ・アメリカン(アメリカン・インディアン)の関わり、当時の人種差別。
例えば、老人が、
「白人は耳をそぎ落としたりはしない」とハックルベリーにいうシーン。
思わず、「あれ? この言い方はちょっと…ねぇ」と違和感を持って、思わず本から目を離したのは、現代を生きているから... 当時の米国は黒人差別も激しく...
とはいえ、よくよく考えてみれば、現代も続いていますね。警察官による相次ぐ暴行事件。最近はコロナ禍で黄色人種、アジア系が襲われるケースも増加している米国。勿論、国内にも差別はあります。1870年代に書かれた小説ですが、150年経ってもまだまだ…人種差別問題は深刻です。
トム・ソーヤーの冒険の登場人物には、それぞれモデルがいるそうで、インディ・ジョーとして登場するアメリカンインディアンも実在する人だったそうです。ただ、実際のジョーは凶悪犯罪者ではなかったそうですが。
本で描かれる凶悪犯罪者のインディ・ジョーは、皆が見ている前で、判事に馬用のムチで打たれたことを
「自分は人間扱いされていない!判事は死んでも、その妻に復習してやる!」と彼女の自宅へ押し入ることを計画し... たまたま話を聞いたハックルベリー。それより前、夜の冒険へ出かけたトムとハックの二人は、たまたま墓地で インディ・ジョーが医師をナイフで刺し殺し、罪を他の人になすりつけたところを目撃。 それを誰かに話せば、自分達がインディ・ジョーに殺される、しかし黙っていれば、無実の男が縛り首になる。悶々とした日々を過ごしていたのです...ね...
小説の合間、合間に、小話を挟みながら、長きに渡って裁判など、ジョーと彼らのことが描かれ、読者としても、ソワソワと落ち着かず、この先トムたちは無事でいられるのか? 逃亡したジョーは捕まるのか? 洞窟で鉢合わせしたジョーとトムは一体、どうなるのか? 無事に脱出できるのか? まるで『宝島』のようなストーリー展開です。 ちなみに「あしながおじさん」の作者、ウェブスターはマーク・トウェインの姪だった筈...。
これって、少年少女向けというよりは、大人が読んで楽しめるストーリーです。翻訳者によると、原作の英語は難解で、
「米国人に聞くと、マーク・トウェインを読むのはインテリ」なのだそうです。そのためか、訳語も結構、難しい単語を使用していますね。(漢検2級だ‼と何度か思った!小学生が読むには難しい訳だな~と)
最後に、自分の小学校時代を思い出させた、第21章、授業参観日のラストシーンをここに紹介し、終わりとします。当時は生徒への罰として、ムチ打ちが一般的だった米国。これまた現代であれば、児童虐待の問題が... 特にドビンズ先生は、イライラすると低学年の子を中心にムチを振るうため、生徒の反感をかっていた... そこでトムや看板屋の息子は授業参観日に仕返しをしようと目論む場面です。
ほろ酔い気分の先生は、黒板にアメリカの地図を描こうとするが、手が震えるんですね。手が震え、地図がまともに描けず、教室に忍び笑いが広がり始める。これではいけない!と決意をみなぎらせ、教室内の視線を背中に感じながら、全集中! しかしクスクス笑いは大きくなっていく...
ここから抜粋します~324ページ
教壇の上は屋根裏部屋になっていたが、ちょうどドビンズ先生の頭の真上に明り取りの小窓がくりぬいてあって、そこから腰をロープで吊るされた猫が下りてきたのである。猫の口には、鳴き声を立てぬよう布で猿ぐつわが噛ませてあった。猫はそろそろと天井から降下しながら、上へ身体を丸めてロープにすがりつこうとし、それが叶わぬと、今度は下へ身体をくねらせて虚空に爪を立てた。忍び笑いの声はますます大きくなる。
猫は今や全身全霊を投じて黒板と対峙している教師の頭上わずか十五センチまで降下し、さらに下がり、もう少し下がり、あと少し下がった瞬間に四つ足を泳がせて教師のかつらにしがみつき、獲物に爪をがっちり食い込ませたままするすると引き上げられて、明かり取りの窓に消えた。ドビンズ先生の頭部は、見事な後光を放っていた。看板屋の息子の手によって、禿げ頭が金色に塗られていたのだ!
これをもって、参観日はお開きとなった。少年達は見事に復讐を果たしたのである。
トム達の悪戯には、度々( ´艸`)笑わせて頂いたものの、ここのシーンは特に! しばし、先を読み始めるのも忘れて、笑い転げましたよー
ちょっと、付け加えると、ドビンズ先生は、看板屋さんに下宿しているんですね。なので、看板屋の息子は、ドビンズ先生が寝ている間に、金色に塗ったのでしょう~👍
私の小学校時代の男子生徒による悪戯ですが... わざわざチョークで余計なことを書いたあと、黒板消しで消して、白チョークがいっぱい付着した黒板消しを ドアの頭上に挟みこみ...
朝礼前に、担任がやってくるのを待つ... 男子以外の生徒も黙って、担任が来るのを今か、今かと待っていた訳だから、(誰も止めない)同罪かな~
15センチくらい、戸が開いている訳だから、上を見ればわかるものの、そういう時って、上を見てない。
担任がドアを開くと同時に黒板消しは落下。直撃は免れたものの、肩はかすったかな~ 大爆笑の渦だった。 翌日には、黒板消しを糸で吊るして、それが廊下からは見えない位置に。 担任が来たら合図を送る係り、合図を受けて、タコ糸を持つ手を緩める係り。...という役割り分担までっ!
「いたずらは、一日に、一回まで!」
と担任が言ったものだから、トムに負けじと(??)悪ガキ達は、作戦を練るようになったんですねー 担任も26歳と、当時は若かったというか... まぁ、平和な昭和時代でしたね。
少年時代を懐かしむ、そんなトム・ソーヤーの冒険。大人になった今、一読してみては、いかかでしょう?☕
トム・ソーヤーの冒険 第1話「トムとハックとブタ騒動」
動画を見つけたので、追加しまーす👍
懐かしい曲です。