表題作は、童話、眠り森の姫の現代バージョンのような…いや違うな。主人公は眠るのが大好きで、不倫していて…というと、単なる”そういう小説な”のかと思われてしまいそうだけど、決してそうではなく、不倫相手の妻は寝たきりで起き上がれない植物人間。だけど心は自由に飛んでいける。夫のことも、その彼女のことも、ちゃんと分かっている。分かっているからこそ苦しい心の内が想像出来たりしました。実際には、その辺の詳細は、小説の中では描かれていません。でも男性と主人公のやり取りから 二人の表情、声のトーン、何もかも細部に渡って読む人の頭の中に描かれるというか… 想像出来てしまうんです。殆ど、いや、たった一度だけしか作中に登場しない寝たきりの妻のこころが。 そこが吉本ばなな作品の凄いところだと思います、ほんと。
この本に収録されている、2つ目の作品、「夜と夜の恋人」 個人的には、こちらの方がずっと好きではあります。何だか高校時代だったり、オーストラリアを思い出しました。この小説の舞台は日本と米国、留学生のアメリカ人女性が登場します。自分の高校にも米国出身の留学生がいたいた! 一緒に会話した! あの当時が懐かしくよみがえりました。 何より主人公の兄の名前がYoshihiro。 同じ名前の人、数人知ってる!
吉本ばななさんの初期の小説は特にそうですが、死が近いこと。でも最後は希望がある。この世に生を受けた私達は、誰でも避けて通れないこと。この若さで、ここまで書くのね…と今更ながら彼女の凄さを感じるのでした…