はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

映画評1227 ~ 室井慎次 生き続ける者

2024-11-15 | 映画評
今回は「室井慎次 生き続ける者」です。

1997年に放送されたテレビドラマのほか、映画版も大ヒットを記録してきた人気警察ドラマ「踊る大捜査線」。同シリーズの中心人物のひとりで、柳葉敏郎が演じる室井慎次を主人公に描いた映画2部作の後編。
柳葉や筧利夫、真矢ミキらシリーズおなじみのベテランキャストたちに加え、日向杏役の福本莉子、タカ役の齋藤潤、桜役の松下洸平ら新たなキャストも出演。メインスタッフにも、プロデュースに亀山千広、脚本に君塚良一、監督に本広克行と「踊る大捜査線」シリーズを支えてきた顔ぶれがそろった。

主演:柳葉敏郎
共演:福本莉子、齋藤潤、前山くうが、前山こうが、松下洸平、矢本悠馬、生駒里奈
その他:丹生明里、松本岳、佐々木希、筧利夫、甲本雅裕、遠山俊也、西村直人、赤ペン瀧川、升毅、真矢ミキ、飯島直子、小沢仁志、木場勝己、加藤浩次、稲森いずみ、いしだあゆみなど


<ストーリー>
警察を辞めて故郷の秋田に戻り、事件被害者・加害者家族の支援をしたいという思いから、タカとリクという2人の少年を引き取り、暮らしていた室井慎次。しかし、彼の家のそばで他殺死体が発見され、さらにかつて湾岸所を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だという少女・日向杏が現れたことから、穏やかな日常は徐々に変化していく。かつての同僚であり今は秋田県警本部長になっていた新城に頼まれ、警視庁捜査一家の若手刑事・桜とともに捜査に協力することになった室井。そんな彼のもとに、服役を経て出所してきたリクの父親が訪ねてくる。


後編ということで、いよいよ完結する・・・
・・・はずなんだけど、この映画の感想を書く時に相当迷った。

もう見ている途中から腹が立って、腹が立ってしょうがなかったからだが、もっと見方を柔軟にした方がいいんじゃないかと、とかいろいろ考えてみた。

でも、いくら考えても「ひでえ~」としか思えなかった。

では、いったい何に腹が立ったのか。

とにかく、脚本・展開が紋切型どころの騒ぎじゃないほどムチャクチャで、この映画のストーリーを考えたヤツ(たぶん君塚良一)は、人の気持ちをいったいどうとらえているのか疑問に思ったからだ。

まずは本筋とは関係のないところから列挙してみる。

序盤で室井の里子で大きい子の方(タカ)が、高校で女子生徒と仲良くなり、彼女を家に呼ぼうとする。
その時に、家で慣れない片づけをしているところを、下の子(リク)が見て「何、ニヤニヤしてるの?」と言うシーンがある。
はあ? ニヤニヤしてたのか?この子は。
まだ家に来ることが決まってもいないのに。
普通なら、ソワソワ・ドキドキして、頭の中ではいろんなことを考えているだろうし、仮に家に来ることが決まったとしても、ニヤニヤするどころか、逆に緊張で表情は強張ると思う。
もしかして君塚は、いつも女性を家に呼ぶ時はニヤニヤしてたのか?

それよりも違和感があったのは、次の日に「家に来ない?」と言われた女子生徒の方だ。
急によそよそしい態度を取り、別の男子生徒と楽しそうに会話を始める。
いったい何があったんだ? 
親から「あそこには行くな」と言われたからだとしても、あまりにも唐突すぎる。その直前までは楽しそうに話をしていたというのに。
この子は二重人格なのか?

次は、リクの方。
学校はほとんど休んでいるはずで、時々気が向いた時に行くようだけど、そこで別に仲がよさそうには見えない同級生の話題の輪に入っていこうとする。
そんなに社交的だったっけ?
そんなリクに対する同級生の行動も異常そのもので、いきなり皆で寄ってたかってイビり始めるし、最後はリクを突き飛ばしたりする。
いったいどんなクソガキなんだよ、と思うシーンだった。
しかも、傷を作って帰ってきたリクに対して、室井は一言「こんどやられたらオレに言ってこい」とだけ言う。
で、どうなったかと言うと、今度はリクが拳に傷を作って帰ってくる。
それに対して、室井は「やり返したのか」と嬉しそうに言っていたが、拳に傷ができるほど相手を殴るって、相当なものだと思うけど、そんなことは考えなかったのか?
というか、そもそも「ケンカをすれば拳に傷がつく」ことが当たり前みたいな描き方をする、この君塚の脚本にはホントに参ってしまう。
また、その前だったか後だったか、何の予兆もなしに、いきなりお店で万引きをするシーンが出てくるのだけど、ここも何が描きたかったのかさっぱりわからなかった。

次は、そのお店に出入りしているヤンキーたち。
いきなり室井の車にゴミを投げ入れて、室井を挑発する。
何で?
室井が元警察官だということは、すでに知られているはずなのに、いったい何のために突っかかってるの?
しかも、お店にたむろしていて、室井が入ってくると、急に仲間同士で小突き合いを始めて、お店の商品棚を倒してしまう。
それを止めようとした室井が「表で話をしよう」と言って連中を外に連れ出すのだけど、後でわかるのだが、その時に怒鳴るわけでもなく、ただ「一緒に商品を棚に戻そう」と言っただけなのに、若者たちはその言うことを聞く。
その後、室井の家に弔問にくるほど改心したのだろうけど、いったい何があったの?

そして、前編で登場した時からいわくありげな子だった日向真奈美の娘である杏。
室井の家の倉庫(車庫?)に火をつけてしまうのだが、それを知った室井は彼女に対して何も言わない。
何で?
「自分から言うまで待つ」みたいなことを言っていたけど、あの殺人鬼・日向真美奈の娘だぞ。
タカやリクにもあることないこと言っていたのだから、自分だけでなく、彼らにも危害が及ぶ危険性もあるのに、何で放ったらかしにしてるの?
と思っていたら、猟銃の撃ち方を教えただけで、杏は改心する。
はあ? どういうこと?
直前まで、母親に洗脳されているという描写があったばかりなのに、いったい何があった?
まったく意味がわからなかった。

その他、村人たちも急に「いい人」になる。
急に音信不通の息子のことを打ち明けたり、急に自分もよそ者だったと打ち明けたり。

唯一期待通りの活躍(?)を見せたのは、加藤浩次演じるリクの父親だけだった。
ただ、ここは逆に対応した児童相談所の連中が無能すぎて、虐待されていたという事実があるのに、そんな父親の元に簡単に返そうとするシーンは、見ていて「あんたらアホなの?」としか思わなかった。
しかも、違和感バリバリだったのは、そんな父親が室井の家に現れた時に「パパ!」と言って嬉しそうに走り寄っていったリクの行動だ。
まずは、ビックリしてその場で固まってしまうと思うのだが。
君塚が、この親子のことをどういう設定にしたかったのか、まったくわからない。

さて、流れの中で、これだけの違和感が出てきたのだけど、肝心の本筋関係で言うと・・・

実は、前編で出てきた伏線(らしきもの?)は、まったく回収されない。
というか、まったく予想外の展開をしていた。

室井の住んでいるすぐ近くに死体を埋めた犯人たちは、警察の読み通り、今も日向真奈美の信者である連中だけど、なぜか警察に電話をかけてくる。
何のために?
ただ「お前らには捕まらない」と言うためだけ?
しかも、その電話の直後(おそらく翌日)には犯人たちのアジトが突き止めとめられていて、そこへ警察が一斉に踏み込む。
何でわかったの?
まさか犯人はアジトから直接電話したの?
それとも、公衆電話から電話したけど、監視カメラで特定された?
でも、それならアジトまではわからないよな。
さらに、警察が踏み込む時、ピザ屋に扮した捜査官がまずインターホンを鳴らしたのだけど、対応した犯人の仲間は特に違和感を持っていなかったから、ホントにピザを注文したのだろう。
犯人たちピザを注文したことを、警察はどうして察知したの?
もしかして、すでに電話も盗聴していた?
ここは、いきなりの展開すぎてついていけなかった。

その結果犯人たち3人は捕まってしまうのだけど、主犯の一人は頑として口を割らない・・・らしい。
でも、そこへ登場した室井が、説得したわけでも何でもなく、ただ「犯人にも家族がいる」と言っただけで、主犯は供述をし始めたそうだ。
昔のドラマの「故郷にいるお前のお母さんは泣いているぞ」的な手法なんかで、犯人が簡単に供述するとも思えないのに、ここの展開はいったいどういうつもり?
そもそも、この犯人たちはいったい何がしたかったのかさっぱりわからない。
相変わらず詐欺をしようとしていたのだから、警察に電話なんかしなければ捕まることはなかったのに、ただ単にバカとしか言いようがない。

そして、最後。

リクを父親のところに返したものの、また暴力を受けて室井のところに戻ってきてしまう。
そこへ乗り込んでくる父親。
ここで、室井とひと悶着があるのだけど、そこの描写はもうどうでもいい。
その際、父親が室井の飼っている秋田犬・シンペイを引きずり回す(というほどのものではないのだが・・・)シーンがあって、父親とのゴチャゴチャが収まった後、なぜか室井が吹雪の中をこのシンペイを探しに行く。
このシーンは、ホントに「???」だった。
もともと放し飼いをしている犬だし、あんな吹雪の中を慌てふためいて逃げ出すとはとても思えず、普通に考えたら小屋の裏手あたりにうずくまっているはず(もしも恐怖をいだいているとしたら、の話だけど)なのに、室井はなぜか外に飛び出す。
その結果、どうなったかと言うと・・・
何と、室井が遭難して崖から落ちてしまう。
しかも、倒れ込んだ室井のそばからシンペイが離れない、という。
ということは、シンペイは室井の後を追いかけて行ったのか?
いったいどんな描写なんだか、さっぱりわからなかった。

聞けば、室井を演じた柳葉敏郎は、この室井の色がつくのを嫌って、今回を最後として「ぜひ殉職したい」と言ったらしい。
さすがに警察をやめた後に殉職はあり得ないので、何とか死ぬ形を作ったのだろうけど、こんなムチャクチャな展開はさすがにないわ。
もっとうまく描けよ、と言いたい。

もうこの段階では、評価は「E」にするつもりだった。
それくらい、展開・描写ともにヒドいの一言だったからだ。

しかし、最後の最後、エンドロールの後に、何とあの男が登場する。
「おっ!」と思ったのは言うまでもない。

「踊る大捜査線」は、今後続編が作られる予定だと言う。
そしてこの作品に、この男は欠かせない。

ということで、ギリギリこらえて、評価は「D」にします。
たぶん、他にも後で思い出すことはあると思うので、出てきたら年末に再掲します。

それにしても、あの男はわざわざ室井の家に来たということは、弔問に来たはずなのに、家の手前で急に電話が鳴り出したのでそれを受けると「はい、わかりました」と言って戻ってしまう。
これも君塚流のユーモアなのか?
頼むから、もうお前は脚本を書くな!(by ライムスター宇多丸)

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