各位お早うございます。2010=平成22年もいよいよ最終月。引き続き拙ブログを宜しくお願いします。
昨日は我々交通愛好者にとり一応の慶事、JR東北新幹線の内、最終区間たる八戸~新青森間約80余kmが晴れて開通、これで東京~新青森の全区間が通じた事となる。基本計画策定より実に38年、1982=昭和57年の(さいたま)大宮~盛岡間の初開通より28年余を経て、工事が完結した訳で、地元青森県とその周辺よりは、大いなる社会経済面での期待が抱かれているのは無理もない。
東京~新青森間の所要時間は最短で3時間20分。来春の全国JR線時刻改正の折には更に速い「はやぶさ号」の出現により、もう十数分の短縮が叶う様だ。首都圏より青森県へは完全に日帰り用務が実現し、ビジネス面での効率化が進められるのは事実。又、地元青森の特産品や観光などを大都市圏へ売り込む好機ともなり得よう。
その一方で、戦争と平和、環境と経済とか、福祉と財政の諸問題にても言える事だが、新幹線の延伸も、言わば一枚のカードの表裏の様な所があると思うのだ。数千億円とも言われる八戸~新青森間の開業費用は、その1/3が青森県の負担。自己資金には限度があり、大半が借入金にての調達であると言われる。開業後の新線区間が、需要に恵まれ順調に推移すれば良いが、現状はどうも「開店景気」の一面を拭えず、対応を誤れば、次代に巨額の負債を残す事ともなりかねない。東北新幹線は、今後津軽海峡下の青函トンネルを通り抜けて、北海道函館までの延長が構想され、一部では既に施工に入っている様だが、くれぐれも将来の需要のあり様を見誤らない様願いたいもの。この延長に伴って、線路規格の変更により、物理的に存続が不能となる対本州直通長距離三列車「北斗星」「カシオペア」それに関西圏とを結ぶ「トワイライトEXP」の後継列車をどうするかについても、是非一考して欲しい。
もう一つ、切実なのが新幹線延長に伴いJRの隷下を離れる並行する在来線の今後の問題。既に高齢各位、学生各位の欠かせない日常の足として定着し、新幹線開通後はその運営のあり方が各地にて問題になっているのはご存じの通り。地元自治体中心の、所謂第三セクター事業体により引き継がれるのが主流だが、運賃をほぼ三割値上げしないと採算が取れない、沿線各地は今後過疎化が予想される所が多いなど、困難な面も多い様だ。或いは岩手県の銀河鉄道線の様に、地域経済と密に連携したり、不動産事業を手掛けるなど多角化を図って経営好転を図っている所もあるが、全てが上手く行っている訳ではない。存続上必要なら、国家的関与の余地を残しても良いのではないか。
この様に、我国の高速鉄道の延伸は、今はかつての東海道新幹線開通の頃とは異なる難しさを孕んでいるのは否めない。来春は、東北新幹線の更なる高速化と同時に、九州新幹線も、福岡博多にて東海道・山陽新幹線との直結を果たし、相互に直通運転も叶う様だ。だが、便利で華やかな面ばかりに目を奪われず、地域交通や経済財政面での難しい所にも、絶えず目を向け続ける必要があると強く思う次第である。