コナサン、ミンバンワ!もう先一昨日になったが、2/11は建国記念の日であった。この日の意義は、国民の祝日に関する法律によれば「建国を偲び、国を愛する心を養う」とある。我々国民が、祖国日本に対する敬愛の念を必要とする一方で、国家の運営者たる政・官の関係各位も、広く国民に愛好される国造りを心がける必要があると言う事だろう。それは勿論、安全保障の面にも言える事で、昨日まで写真仲間の会合にて泊った東京の宿にて入手した全国紙M新聞に、防衛大学校長 五百旗頭 真(いおきべ まこと)さんの内容濃い文章が載ったので、以下引用させて頂く。
「時代の風~南西諸島 安全のために 外国と災害に備えを」
昨年12月、香港政庁に招かれて1週間を同地に過ごした。大方の懸念に相違して、中国への返還後も繁栄と自由を失わずにいる香港の実情に触れ得たのは有益であった。それ以上に刺激的であったのは、尖閣事件後の時期における香港在住の中国観察者=チャイナ・ウォッチャーとの意見交換であった。
外から見る中国は、経済的にも軍事的にも大躍進を遂げ、リーマン・ショック後の世界経済危機にも屈するどころか内需拡大による高度成長を続け、かえって世界経済を支えた。中国史にとって最高の時とも見える。ところが中国指導層は必ずしもそう考えておらず、国内統治上の危機を強く意識しているという。拡大する富の格差、汚職や腐敗、環境汚染、就職難、少数民族問題などは容易に解決されず、全国に数多くの小暴動が起こる。「中国における共産党の地位は永遠でも不変でもない」との危機感から、主権確保と党体制の護持を「核心的利益」と至上命題化している。体制不安があればこそ、相互利益の国際関係を強めて中国の持続的発展を可能にし、国内では格差解消に向けての改革路線をとるしかない、と私のような外部の者は思う。しかし、中国自身は「米中G2時代」といった甘言に乗って、過ぎた国際負担を課せられてはならない、中国の発展のためのエネルギー資源とその運搬ルートを自力で確保せねばならない、南シナ海も核心的利益である。そういった国内不安に起因する思いつめからの対外強硬論が強まっているという。
そうでなくても、中国は尖閣列島の領有権を1971=昭和46年以来主張するようになり、1992=平成4年には国内法により列島を中国領土に編入した。最近は沖縄諸島領有の主張すら中国内に登場している。東シナ海での軍事バランスが中国優位に傾く中、尖閣を含む南西諸島の安全は大丈夫か。フィリピンやベトナムのように島を奪われるおそれはないか。先週、私は南西諸島防衛をテーマとする日米共同演習を九州において視察し、続いて先島諸島の現地を訪ねた。
結論的にいえば、実際に起こり得る状況を想定して日米共同演習が行われていることは心強い。日米安全保障条約が紙切れでなく実際に作動することの証したりえよう。そのことはこの地域への外部からの無分別な行動を抑制する効果を持ち得よう。また当然とはいえ、尖閣諸島の領土権について日本の国内世論が割れていないことも重要な基盤である。けれども南西諸島の実情は、沖縄本島より先はほとんど無防備であり、およろしければどうぞお取りくださいと言わんばかりの状況である。
沖縄本島と宮古島の間には300kmの広い海峡がある。昨年4月、ここを中国の10隻の艦隊が行進した。この海峡より先の防衛施設は、宮古島のレーダー・サイトのみである。宮古島は山のない平らな、人口6万の島である。川もないこの島に地下ダムがつくられたことにより、水が潤沢となり住みよくなった。この島から与那国島や尖閣諸島へは200km余で、沖縄本島より近い。石垣島から先は八重山群島と呼ばれ、人口5万ほどの石垣島が中心である。島の北部には500m余の山があり、裾野には沃野が広がる。南部の平地にある石垣市は良港を持つ。尖閣諸島は石垣のほぼ真北に位置し、ここから一番近い。海上保安庁の船が尖閣にパトロールしているのは、この港を拠点にしてのことである。体当たりした中国漁船が係留されたのもここの埠頭である。先島諸島の中で、石垣島は最も豊かな地であり、港湾にも恵まれている。
さいはての島、与那国から、晴れた日には台湾の山々が見えるという。人口約1600人の小さな島であるが、230m余の山があり、地形に富んでいる。以前から役場と島民の多くが日本政府に対して「見捨てないでくれ。自衛隊を配備してほしい」と要請してきたが、政府がようやく動き始めることは幸いである。何の防備もなくても安全であった時代は過ぎ、国土と国民を守る姿勢を政府は求められる。切り取り自由といった状況を放置してはいけない。といって、大軍拡を続ける中国に対して応酬する攻撃能力を築くべきではない。不当に手出しをすれば、やった方がお困にりなりますよ、と言えるだけの防備=拒否力を設ければ足りる。今から努力すれば、何とか間に合うのではないか。そんな心象を得た。
なんとか起さずに済ませたい南西諸島の対外安全に対し、必ず起こるこの地の安全崩壊を現地で知り衝撃を受けた。1771=明和8年の大津波である。石垣島の南海岸を襲った約40mの大津波は沿岸の村々を全滅させ、川に沿ってさかのぼり、標高85mの島の鞍部を越えて反対側の平野に流れ込んだ。八重山群島の全人口の約1/3の9000人余が、宮古島でも2000人超が犠牲になったといわれる。今とて同じ大津波に対し、地形的に沿岸の人々が高台に逃れることは難しい。唯一の逃げ場は強靭な鉄筋3階建て以上のビルであろう。
一つには外国に島々を奪おうと思わせないために、二つには必ず来る大津波に対して島民を一人でも多く救うために、私は自衛隊が先島諸島にも配備されることを望む。
この文章を拝読して、俺は外国と直に対峙する土地たる南西諸島の方々、そして未解決の北方領土問題をも抱える北海道東北部の方々の安全保障面でのご苦労を、少しは思い知った所である。国際安保の問題は、基本的には(経済・技術・文化分野にての交流をも含めた)外交努力にて解決されるべきであろうが、五百旗頭さんが仰った、必要な防備=拒否力が最低限なければ、外交々渉も決して上手くは行かないのではと、改めて感じている所である。
そうした事共をバランス良く整備し、武力による衝突を避けながら平和裡に解決を図るのが、政治や行政の叡知と言うものだろう。その事を理解し、必要な協力を惜しまない国民の知力も試される。そうした事を上手くかみ合わせて回して行くのがより真に近い愛国心だし、又、我国の伝統や固有文化の尊重と共に、建国の精神にも通じるのだと心得る次第であります。