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またまた1カ月フリーパスポートで見たのだけれど、この作品ばかりは夫婦で見れば良かったかな。
余命半年を宣告された主人公が放送作家ならではの発想力で、自身亡きあとの妻と息子を想って考えだした人生最後の渾身の企画。
それは奇想天外で、何とも非常識なんだけれど、その根底にあるのが残される妻と息子に対する深い愛情だから、見る者としてはその後の展開も納得できた。
どうせ死ぬのなら、自分が死んだ後に残される大切な人達に、精一杯の愛情を注ぎたい、温かな思いを残したい。そんな主人公の切なる思いに共感できた。
見ている間ずっと、夫や息子の姿が脳裏に浮かんでいた。彼らが自分にとっていかに大切な存在なのかを切実に感じながら…
これは闘病記ではなく、夫婦愛、家族愛を描いた作品。ひとりの人間が自身の死期を悟って、残された時間をどう生きるか決断した物語。
生物は生まれたら、例外なくすべていつか死に行くもの、生まれ落ちた瞬間から死に向かって生きて行くものだけれど、「いかに生きるか」の点で人間には本能以外に個人の意思が存在する。
どう生き、どう死ぬかは自分自身にかかっている。本作は、そのことを改めて思い起こさせた。
人生にとって最も大切なのは、社会的地位や名誉や富を得る事ではなく、自分が関わった人々と生涯に渡ってどれだけ温かな関係を築けるか?互いに理解しあい、思い合える存在であり続けられるか?
本作に通底しているのは、原作者のそんな思いであったように感じた。
夫に時間が出来たら、今度は是非、夫婦で見てみたい。
最後に、主演を務めた織田裕二さん、妻役の吉田羊さん、息子役の込江海翔君、そして原田泰造さんや大杉錬さんなど、彼らの達者で真摯な演技によって、作品の世界へと深く引き込まれました。感謝。
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映画を見終わった後の温かな思いとは裏腹に、夫婦間の愛情にまつわることで、ゾッとするようなことも思い出した。
今から10年以上前の二度目の大学生時代に、同じ学科の友人と3人で、深夜の長距離バスで関西旅行に行った時のことだ(それは前日の深夜にバスで移動し、翌早朝から夕方まで博物館や寺巡りをして、再びバスで帰ると言う弾丸旅であった)。
とある地方の名刹で知られる寺で、そこのご住職からお声を掛けられ、離れでお話を伺うことになったのだが、なぜか途中から、ご自身の奥様への恨みつらみの言葉を聞かされた。
曰く「自分の妻は蛇年生まれの女で、まさに蛇のようにずる賢く冷たい女だ」と。
当時、既に80歳を超えておられたであろう、長年に渡り修行を積み、仏法に基づく人の道を説く立場にあろう方から、よもやこのような煩悩にまみれた言葉を聞こうとは…3人共、驚きのあまり相槌も打てずに固まってしまったのを覚えている。
それからほどなくして、そこの寺で火災が発生し、ご住職の奥様が巻き込まれて亡くなられた。単なる偶然なのかもしれないが、ご住職のあの言葉が脳裏に焼き付いている私には、ご住職の怨念が不幸を招いたのではないかと思えて仕方がなかった。
私は縁あって夫婦になったのであれば、夫とは末永く仲良くありたい。その為の努力を惜しんではいけないと思っている。行動でも、言葉でも。
即ち、夫婦関係において(と言うよりおそらく全ての人間関係において)、片方が一方的に悪いことなどあり得ないと思う。互いの働きかけがあって、互いに影響しあって、今の関係性があるのだろうから。
あのご住職の長い夫婦生活の間に、一体何があったのだろう…