映画の見方(映画へのアプローチの仕方?)も人それぞれ。私はどちらかと言うと、芸術作品としての映画の完成度よりも、映画の作られた背景や映画の中で描かれた事柄について興味があり、改めて自分なりに調べるのが好きだ。だから、映画で描かれた物語の”その後”が気になったりする。
今朝は2005年日本公開の映画『ロード・オブ・ウォー』に関連して興味深い記事があったので、その内容を引用しつつ感じたことを、ここに書き留めておこうと思う。
8日付のサンケイ・エクスプレスによれば、6日、「死の商人」と呼ばれるロシアの武器密輸密売業者、ビクトル・ボウト容疑者(41歳)が、タイ警察に逮捕されたらしい。ボウト容疑者は旧ソ連の軍人で、アフリカなど紛争地への大規模な武器密輸を手掛けていた疑いが持たれていると言う。
2005年に日本でも公開された、ニコラス・ケイジ主演の映画『ロード・オブ・ウォー』の主人公である武器商人(ウクライナ系移民ユーリ・オロノフ)は、世界の紛争に深く関与している複数の武器商人をモデルにして作られた人物像だが、ボウト容疑者はそのモモデルの一人らしい。
今回は米当局者もタイ警察の捜査に合流し、国際的な密輸組織の実態解明に乗り出すと言うが、末端の捜査員はともかく、世界各地の紛争に少なからず自身が絡んでいる米国が国家として果たしてどの程度本気なのか疑問だ。
ボウト容疑者は今年の1月頃、武器取引を巡りコロンビアの左翼ゲリラ、コロンビア革命軍(FARC)と接触するためにタイに入国。別のロシア人ら6人と共に今回拘束されている。
ボウト容疑者は、20万丁のライフル銃をボスニア・ヘルツェゴビナからイラクに密輸した疑いなども持たれている。警察の事情聴取に対しては「ゲームは終わった」と語っただけで、黙秘しているらしい。
米財務省の2005年の発表では、ボウト容疑者は中東や東欧などに航空貨物企業のネットワークを所有、世界各地への武器輸送能力を持つ。アフガニスタンの旧政権タリバンや、内戦が続いたリベリアなどアフリカ諸国に武器を供与、各地の戦闘の激化を招いたとされる。(バンコク 共同)
たかだか17行の記事の中に、紛争地域の名前もしくは組織名が、なんと5つも登場している!しかも中米、東欧、西アジア、アフリカと広範囲に渡る。「紛争があればどこへでも」と言わんばかりのWorld wideな武器商人のフットワーク。これでは紛争の火種が次から次へと発火するわけだ。
連行されるボウト容疑者の様子を捉えた写真の彼の表情はふてぶてしく、薄ら笑いを浮かべているようにも見える。一般人には理解し難い武器商人等のメンタリティの一端が見てとれると言えるだろうか。彼の頭の中では、すべてが所詮”ゲーム”に過ぎないのか?
彼の"商圏"では、実際には多くの人々の血が流されているのに。そこには、平和な国では声高に訴えられる”人権”なんて存在しない。人の命は明日をも知れない儚いものだ。どこで生まれ、生きているかで、決定的に違う命の重み。人間の諸々の善行が虚しく思える。
映画『ロード・オブ・ウォー』レビュー(当ブログ内)