
フランスのパリには何度か訪れていて、芸術の都はそりなりに堪能できたのだが、いろいろ嫌な目にも遭った。メトロで夫がスリに狙われたり、どこに行ってもお釣りがないと言われ少額紙幣を使わされた挙げ句に、オペラ座で受付嬢にお釣りがないからと入場拒否されたり…旅先で出逢う人々によって、その街、ひいてはその国全体の印象も大きく左右されるものだと思う。それでも文化大国としてのフランスには一目を置いているから、清濁併せ呑んで、その動向を注視している。
この映画は、ニューヨーク在住の仏人女性が、米国人の恋人とのベネツィア旅行の帰りにパリへ里帰りをした2日間の出来事を綴ったもの。
会話劇と言って良いのかもしれない。とにかく全編淀みなく会話が続く。昼夜問わず、濃密な対話の2日間を見せつけられる。そこで改めて露わになるフランスと米国のカルチャー・ギャップ。”文化”の違いだから、どちらが良いか悪いかなんて言う尺度では片付けられない。しかし、異文化の中にどっぷりと浸かることを強いられた(!)米国人男性にとってはフラストレーション溜まりまくりで、相当シンドイだろう。その様子がコミカルに描かれ私は終始クスクス(時にはケラケラ)笑いっぱなしだった。
本作で(本人曰く「潤沢とは言えない予算での製作事情」から)監督・脚本・製作・音楽・編集・主演を務め、八面六臂の活躍を見せたジュリー・デルピー。なんと実の両親(共に舞台俳優)も両親役で出演し、親子で息の合ったところを見せている。下ネタ、悪口連発の奔放な父親(これがまた画廊のオーナーというのが良いねえ~・笑)が、茶目っ気たっぷりで愛らしい。天然モードな母親と絶妙なコンビネーションを醸し、本作ではピリリとスパイスを効かせた存在となっている。さらに米国人の恋人の嫉妬心を無駄に(笑)かき立てる男友達(元カレ達)の存在もユニ~ク。オイオイ、人がフランス語を理解しないからって、堂々と人の恋人を目の前で口説くかい?―その節操のなさが笑える。
それにしても、主人公は議論好きだなあ…相手構わず、所構わず、自分の信念、信条に従って議論を戦わせる。個人主義が徹底していて、自己責任の下にその行動は自由奔放そのものなのだが、一線を画すべきところでは眥(まなじり)を決して戦う。そういうフランス人一人ひとりが、フランスという国を形作っているのだろうか?主演のジュリー・デルピーはそうしたフランス人の人となりを時には皮肉まじり(自嘲ぎみ?)に、しかし愛情をたっぷり込めて描いている。
とても面白かったです。
◆映画『パリ、恋人たちの二日間』データ(allcinema onlineより)
◆ジュリー・デルピー インタビュー(@NIFTY映画より)