はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

子供たちは未来に向かって生きている

2014年03月08日 | はなこのMEMO
美術館で、主に子供たちを対象にギャラリートークを始めて、もう10年になる。毎回、どんな子供たちに出会えるのか楽しみであり、また、不安でもある。

不安と言うのは、私自身の力量の問題だ。果たして自分の案内で、子供たちに美術館を楽しい場所として捉えて貰えるのか、場数を踏んでもなかなか確信が持てないでいる。

と言うのも、来館する子供たちのコンディションが、例えば「過去の美術館・博物館体験の有無」「学校における普段からの美術教育の取り組みの有無」「美術への関心度」「語彙や知識量の多寡(=読書量の多寡?)」「教科学習の習熟度」「物事に取り組む際の集中力の有無」「友人関係の状態」はたまた「その日の体調(前日にゲームで夜更かしして、睡眠不足で朝から欠伸など)」により正に千差万別で、同じコースの作品を案内しても、驚くほど毎回毎回子供たちの反応が違う。グループ毎に違うだけでなく、グループ内での個人差も大きかったりする。それぞれの状況に臨機応変に対処すると言う点で、私はまだ自分の力不足を感じている。

トーク中、子供たちから活発な発言があって場が大いに盛り上がる時もあれば、殆ど言葉が出ないまま終わってしまうこともある。情けなくも、それに一喜一憂する自分がいる。ただし、子供たちの反応が鈍いからと言って、その日のトークは失敗と言うことでもない。友達と一緒に美術館に足を運び、本物を見る(たとえ発語に至らなくとも、子供たちの内に美術館体験の何らかの痕跡は残っているはず)、と言う体験だけでも、「美術に親しむ」と言う所期の目的には十分に達しているはずだからだ。

子供たちを対象としたギャラリートークの重要なポイントは3つ。①作品をよく見る②作品を見て気付いたこと、感じたこと、思ったことを言葉に発する③友達の発言にもきちんと耳を傾ける。これら3点を子供たちに促すのが、トーカーの役割だ。

①は、本、雑誌、テレビ、ネットとさまざまなメディアで美術作品を目にすることはあっても、本物(実物)を目の前で見る体験に優るものはないと言うこと。油彩画の絵の具の厚み、色彩、筆触。彫刻の立体感(彫刻の周りを歩いて、さまざまな角度から見ることが出来る)。ロダンの彫刻なら、ポーズの奇抜さ(←子供たちは大抵、真似をして、ポーズの不自然さに気付く。そこから、なぜそのようなポーズにしたのかを考える)。身体バランスの妙(リアリズムに徹しているのかと思えば、足や手の長さ、大きさがデフォルメされている。その理由にも想像を巡らす)。そのどれもが、実物を間近に見る事で気付かされることだ。

②は思いや気づきを言葉にすることで作品に対する印象が深まるだけでなく、自己表現のトレーニングにもなると言うこと。

③は、同じ作品を見ても、見る人によって着眼点や印象が違うことを知ることで他者の発言を尊重する態度を育てる共に、多角的なものの見方を促すと言うこと。

僅か30分か1時間かそこらで、子供たちは美術作品と向き合うコツを掴んで行く。その吸収力には凄まじいものがある。それは、正に「子供たちが未来に向かって、加速度的に成長し続けていること」を目の当たりにする時間である。

不思議なことに、その時々で子供たちの反応はどうであれ、ギャラリートークを終えた後は子供たちからエネルギーを分けて貰ったのか、心が元気になっている自分がいる。これこそ、未来に向かって生きる子供たちから迸る生命力の賜物であろうか?


夢だけは壊せなかった大震災

最近知った「女川いのちの石碑プロジェクト」でも、子供たちが未来に向かって生きていることを実感させられた。3年前の震災で多くのものを失ったはずの子供たちの中から出て来た言葉の力強さに、頼もしさと尊さを感じた。その子供たちを支える周囲の大人たちの心意気にも感銘を受けた。おそらく当地の大人たちも、子供たちの悲惨な過去を乗り越え、未来に向かって生きようとする姿勢に、日々励まされているのかもしれない。

言うまでもなく、子供は社会の宝である。その証拠に、子供の声が聞かれない地域は確実に活気を失っている。子供のいない社会は未来がないに等しく、子供を失うと言うことは未来を失うと言うことなのだ。

少なくとも女川の子供たちは震災後ほどなくして、1000年後の未来を見据えて動き出した。子供たちが地域で大切に守り育てられる限り、女川には明るい未来が待っていることだろう。

とにもかくにも…
日本は子供を大切に守り育てる社会であって欲しい。

chain 女川いのちの石碑プロジェクト
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