ヨーロッパ各国で大ヒットを記録し、今年度の米アカデミー賞
外国語映画賞にノミネートされながらも、
惜しくも受賞を逸した本作。しかしながら、見応え十分。
第一次世界大戦時に、北フランスで実際に起きた出来事を
下敷きに作られたドラマです。
戦場を舞台にしながら戦闘を描かない
『ジャーヘッド』も異色でしたが、
戦場で音楽を通じて芽生えた兵士らの友情を描いた本作も
戦争映画としては異彩を放っています。
先頃私の主宰するスレッド楽しく雑談したいでも
”靖国”のことが取りざたされましたが、
職業軍人はともかく、国家の名の下に徴兵された、
最前線で戦う兵士らに、心から戦争を望んでいる者など
誰一人いないのです。命は惜しい。皆できれば一刻も早く
無事に家族の元に帰りたい。
特にクリスマス・イブの夜は
家族と共に心穏やかに厳かに迎えたい…
そんなクリスマス・イブの夜、
著名なテノール歌手である独兵の見事な歌唱をきっかけに、
最前線で対峙する仏・スコットランドの連合軍と
独軍は一夜限りの休戦協定を結ぶ。
最初はこわごわ歩み寄ったのが、徐々に縮まる互いの距離。
互いに家族の写真を見せ合い、酒を酌み交わし合い、
そして…一気に友情を深めて行く。
かつて『地獄の黙示録』が、
ベトナム戦争を通して人間の”狂気”を描いたのに対し、
本作は戦場にあってもなお輝き続ける人間の”善性”を
描いたと言えるでしょうか?
と同時に、戦争の理不尽さを描いて秀逸。
人間の魂に訴えかける音楽(芸術)の力も再認識
させられました。