はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

まじめだけでは不十分

2012年06月01日 | はなこ的考察―良いこと探し
息子が明日でようやく母校での3週間の教育実習を終える。

この3週間、月曜から土曜日まで、連日、朝は7時前に家を出て、帰宅は夕方7時から9時近く。帰宅後は夕食、入浴を済ませた後、実習日誌を書いたり、翌日の準備作業で就寝は午前1時、2時も珍しくなく、実習後半に入ると疲れが溜まっているのか、夕食後、部屋で少し横になるつもりがそのまま寝入ってしまい、翌日の早朝に起きて当日の準備、と言うこともままあった。

夕刻はひとり教室で、翌日の授業のリハーサルを行っていたらしい。ある時はリハーサルを終えて職員室に戻ると、実習指導の先生が「○君、遅くまでお疲れ様。これ良かったら食べて下さい」と書き置きとお菓子を机に残して下さったこともあったようだ。

実のところ、息子は大学に入ってから、いつも多忙である。世間では「大学生は遊んでいる」と言うイメージがいまだあるようだが、それは外で遊んでいる一部の学生が目立っているだけだろう。少なくとも息子を見ている限り、専攻の勉強や専攻に関連した研究系の部活で忙しく、アルバイトも殆どできない状態だった。一部のていたらくだけを見て、全体もそうだと決めつけるのは止めて欲しい。何度も繰り返すが、新橋の酔っぱらいサラリーマンが全てのサラリーマンを代表するわけではないし、渋谷を徘徊する女子校生が、全ての女子校生の生態を表すわけではないのと同じだ。

私の時代と違って教員免許を取るのもハードルが高いらしく、同じ学科で教職科目を履修した4人のうち、教育実習までたどり着けたのは息子だけだ。私の時代にはなかった介護実習(盲学校や老人介護施設等)が2回もあり、近年の麻疹の流行もあって、その抗体検査を病院で受けるなど(検査と証明書だけで1万円近くかかった)、手間も費用もかかる。

教員免許取得はオプションなので、教職科目はもっぱら夜間に授業が実施される。だから、息子は1年次から、朝7時過ぎに自宅を出て帰宅は午後9時近く、と言う毎日だった。それから課題レポートを幾つもこなす(専攻+教職)ので、やはり寝るのは夜中。

夏休みも部活でロボット製作に明け暮れ、ほぼ毎日大学に通っていた。こんなに大学に入り浸った学生も珍しかろう。たまの完全オフの日曜日は、午前中起き上がれないほど疲労困憊していた。

もちろん、短時間のバイトをしたり、高校時代の友人達と会ったり、大学の部活仲間と飲み会や鍋パーティを開いたりと、適度に勉強から離れて息抜きをしていたようだが、親としては、その体調が心配になるほどの忙しさだった。

教職実習を終えたら終えたで、これから大学に戻って教育実習の間殆どできなかった専攻の卒研の勉強の遅れを取り戻さなければならないし、7月と8月に控えた院試の勉強もしなければならない。息子は息つく暇もない。


いつしか「時間がない」が口癖になった息子。それに対し、夫が釘を刺した。「時間はやり繰りするもので、時間がない、と言うのは時間管理がきちんとできていない、と言っているのと同じ。時間がないと言う前に、どれにどれだけの時間をかけるか、何を優先すべきか、ちゃんと考えろ。」

先日、ネット上で見かけた記事でも、「時間に追われる人は、自分が今、何をすべきかの重要ポイントが分かっていない。だからやみくもに全てに全力投球して、その結果、時間が足りなくなってしまう」との指摘があった。

また、日経の記事でも「まじめだけでは不十分」(5月14日(月)付朝刊22面)とのタイトルで、公立上位校の生徒の弱点を、以下のように指摘していた。

「生徒達は『言われたことをきちんとやるだけ』で手いっぱいになっているのかもしれない。まじめさゆえに、ひとつひとつをしっかりやり、時間が足りなくなる。これは非常にもったいないことだ。 『まっ、この程度で大丈夫』と割り切り、次の段階に進んでしまう要領の良さも必要だろう。

息子は大学生とは言え、生真面目で要領の悪いところが見事に当て嵌まる。例えば、息子の教育実習日誌は、連日A4サイズ2面にビッシリと字が詰まっていた。驚いて私が「ここまで細かく書かなければいけないの?他の実習生もそうなの?」と聞くと、「人によるけど、特に僕が凄く細かいと言うわけではないと思う」と応えた。おそらく、一時が万事こんな調子で、クソ真面目に取り組んでいるのだろう。

特に秀才でもない息子は人一倍努力して、それでやっと平均より少し上くらいの学力レベルだ。哀しいかな、なかなかトップにはなれない。しかし、息子のように直向きで地道な努力を厭わない人間はきっと、今やモラルハザードでグラグラした日本社会の屋台骨を、近い将来支える存在になると思う。

確かに、まじめだけでは不十分。重要ポイントに注力し、それ以外は潔く斬り捨てるぐらいの要領の良さは身につけて欲しい。そして、この21年間、身近でその頑張りを見て来た親心としては、彼のこれまでの努力が報われて欲しいと願っている。人生は思い通りに行かないことの方が多いとは分かっていても。
コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 会話でわかること | トップ | 闘えない日本 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。