はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

横浜みなとみらいホールに行って来ました♪

2015年06月01日 | 文化・芸術(展覧会&講演会)


 昨日、横浜みなとみらいホールで、オルガン・リサイタルを聴いて来ました。

 特に音楽に造詣が深いわけでもなく、懐に余裕があるわけでもない私が、月に2度もクラシック演奏を聴きに音楽ホールに足を運ぶなんて贅沢かなとも思ったのですが、直感で「これは良い」と感じたものには躊躇うことなく触れ、心豊かになれる経験を重ねることで、少しでも悔いのない人生にしたいと考えて、思い切って聴いて来ました。

 4年前の震災経験や自分にとって身近な人の死を目の当たりにすると、人生の幕なんて、いつ突然に、否応なく下ろされるかわからないものだと、つくづく感じます。最近、相次ぐ火山の噴火や地震にも、自然の脅威の前に人間の命など何と脆いものかと、思わざるを得ません。

 卑近な話をすれば、老親の介護問題も近々控えているわけで、それならば、事情の許す限り、今のうちに自分の時間を自分の為に使うことも大事なんじゃないかと思う(世の中にはそうも行かない人が少なくない中で、今の自分は本当に恵まれていると思う。でも常に恵まれていたわけでもないので…)。言わば「精神的充足感の貯金」です。尤も、中学生の頃、認知症を発症した祖父と2年間過ごした経験があるので、介護が大変なだけの、何も得るものがない経験だとも思ってはいませんが…

 さて、立派な音楽ホールには必ずと言ってよいほど、舞台の正面に堂々と備えられたパイプオルガンですが、意外にその生演奏を聴く機会はないものです。

 だから、今回のオルガン・リサイタルに食指が動いたのは当然とも言えました。いつもホールに行く度に気になっていた、ホールの舞台上で存在感が際立つパイプオルガンの音色を、初めて聴く事ができるのですから。

 パイプオルガン自体の音色は、20年以上前にイギリスのバースを訪れた時に、バース大聖堂でミサ曲を聴いたことがあります。歴史ある教会建築が醸し出す雰囲気と相俟って荘厳な響きでした。しかし、音楽を聴く為だけの、究極の音響効果を狙って設計されたコンサートホールでは聴いたことがない。果たして、そのコンサートホールで、パイプオルガンはどのような音色を聴かせてくれるのか、興味津々でした。

 奏者はドイツ出身のオルガニスト、ヘルムート・ドイチュ氏。1963年生まれとありますから、私とほぼ同年輩。1993年に著名なオルガンのコンクール、リスト国際オルガンコンクール(ブダペスト!)での第一位入賞を筆頭に、数々のコンクールで入賞経験を持つ実力者のようです。

 今回の演奏曲は、私の大好きなバッハ(他に仏のシャルル=マリー・ヴィドール(1844-1937))の楽曲と言うこともあり、弥が上にも期待が高まりました。カール・リヒター演奏の「トッカータとフーガ」を、何十年、飽くことなく聴いて来たことか…

 さて、ここで横浜みなとみらいホールのパイプオルガンについてご紹介を。プログラム解説からの出典です。

 このパイプオルガンはアメリカのC.B.フィクス社製で、ホンジュラス・マホガニー製の"ケース"には、横浜に因んだカモメの彫刻が施されています。これは遠目にもすぐに分かります。

 「現代のコンサートホールにおけるオルガンの理想を追求して設計され、バッハ以前の時代から現代に至る多種多様なオルガン曲を、それぞれにふさわしい音色で演奏することができる」~へぇ~bikkuri

 「ごく初期の段階からオルガンを響かせることに配慮して建築設計が進められただけに、ホール全体が一つの楽器のように共鳴し、客席ではあたかもオルガンの音色に包まれているように感じられる」~なるほどぉ~bikkuri

 構造がこれまた凄い!bikkuribikkuribikkuri

 「パイプは全部で4,623本あり、正面に見えているパイプのほかに、奥行き3.6mで4層になった内部に材質も形も大きさも様々なパイプがびっしり並んでいる。」
 
 「木のパイプはポプラ材、金属のパイプは鉛と錫の合金で、2層目には"チェレスタ"が組み込まれている。」

 「音色を選ぶ"ストップ"は62個。その他にも鈴を組み合わせた"ツィンベルシュテルン"、鳥の鳴き声に似た"ナイチンゲール"といった音色も備わっている。また、音色の組み合わせ(レジストレーション)をコンピュータで記憶するメモリーが内蔵されている。」~ほぉ~bikkuri伝統的な構造に現代の技術が合わさった進化形のパイプオルガンなんですねbikkuri

 「輝くような明るい音色にふさわしく『光』を意味する"ルーシー"という愛称のついた、横浜みなとみらいホールのシンボル」~"ルーシー"と言う愛称がついているなんて、初めて知りましたbikkuri女性なんですね(笑)。確かに優雅で美しい佇まいです…

 果たして、ヘルムート・ドイチュ氏の演奏は素晴らしいものでした。スケールの大きな演奏と言いましょうか。演奏中のその後姿は、まるで目の前に立ちはだかるパイプオルガンと格闘しているかのようでした。演奏中は全身をエネルギッシュに躍動させ、一曲終わるごとに大きく肩で息をし、滴る汗を拭っていました。彼の卓越した演奏技術で、パイプオルガン"ルーシー"もその持ち味を存分に発揮できていたのか、ホール全体に響き渡る多彩な音色は、ルーシーの歓喜の歌声のようにも聴こえました。

 それ以前に、パイプオルガンを人が演奏する姿を見ること自体初めてだったので、いちいち驚くことばかりでした。足だけで演奏したりとか…?!

 耳に馴染み深い「トッカータとフーガ」は、頭の中にカール・リヒター版がこびりついているせいか、ドイチュ氏の演奏は少しテンポが速いように感じられました。あぁ、ここでもう少しためてくれれば…なんて不満もちょっぴりありましたが、それこそ、どんなテンポで演奏するかは演奏者の個性でもあるので、不満を持つ私の方がお門違いなのでしょう。

 しかし、さすが名曲。パイプオルガンの特性を生かした音作りの為せる技か、名手の演奏による「トッカータとフーガ」は、コンサートホールの音響効果も相俟って、音の広がりのスケール感が尋常でなく、コンサートホールにいながらにして、壮大な宇宙空間を感じました。自宅でCD録音の演奏を聴くのとは全然違う体感でした。

 プログラム解説によれば、曲の特徴からバッハ作ではないのではないか、との説もあるらしいのですが、誰の作曲であれ、この曲は素晴らしいと思います。本当に素晴らしい。まさに、パイプオルガンの為の曲だと思います。

 一方、シャルル=マリー・ヴィドールの曲は初めてと言うこともあるし、年代的に現代音楽に近いこともあり、ちょうど生まれて初めて抽象画を見た時の戸惑いにも似た違和感を覚えました。とは言え、もし再度聴く機会があれば、今回とは違った印象を抱くものなのかもしれません。

 今回、不思議だったのは、バッハの計5つの楽曲演奏の時、各楽曲の演奏後に拍手が起きなかったこと。観客が楽曲を知らないからなのか?(知らないので、どのタイミングで拍手すれば良いのか分からなかったのか?かくいう私も、「トッカータとフーガ」以外は殆ど聴いたことがない楽曲でした)それとも、オルガン・リサイタルでは、これが当たり前なのか?未だ謎です。

 しかし、全てのプログラムを終えた後は、横浜みなとみらい大ホールを埋め尽くした観客は、ここぞとばかりに鳴り止まない拍手で、演奏者をなかなか舞台から引かせてくれなかったのでした。


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