はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

ある意味羨ましい…

2016年11月04日 | はなこのMEMO
 朴大統領の親友、崔(チェ)容疑者を首謀者とする大スキャンダルで、韓国社会は今、大きく揺れているようだ。

 今朝のテレビニュースでは、朴氏の退陣を求める韓国屈指の名門大ソウル大生らによるデモの光景が映し出されていた。

 学生のひとりはインタビューに応えて「政府に自浄作用がない以上、我々学生が立ち上がるのは当然だ」旨の頼もしいことを言っていた。

 香港でも、香港の「一国二制度」の存続を危ぶ若者達が盛んにデモを行った光景は、記憶に新しいところ。

 フランスや英国では、国立大学の学費値上げに反対して、学生達が大規模なデモを、これまでに何度も行っている(フランスも英国も米国同様、一部の富裕層を除いて、学生自らローンを組んで学費を用立てている学生が多いのだろう。その意味で、その多くが親に学費を負担して貰っている日本の学生には、学費の高さについての切実感があまりない)

 仮に日本で現首相を巻き込んだ、社会を揺るがすような大スキャンダルが勃発したとして、今の東大生は首相を糾弾するデモを行うだろうか?

 国民性の違いもあるかもしれないが、将来、社会の中枢を担うであろう若者が、社会の不正や矛盾に対して積極的に抵抗する姿、異議を唱える姿が、この日本では殆ど見えないのが日本人としてはちょっと残念であり、kirakira2他国の学生のエネルギッシュな姿が眩しく見えるkirakira2


 昨日、無料ポイントで映画「何者」を見た帰り、エレベーターで乗り合わせた3人の大学生と思しき若者。同じ映画を見たらしく、「身につまされるなあ」「就活大変そうだなあ」と口々に映画の感想を漏らしていた。

 でも、乗り合わせたおばさんは思ったのだよ。
 「就職できる自信ないよ、俺」と言う前に、エレベーターに真っ先に乗ったのなら、そそくさと奥に行かずに、後で乗る人の為に操作盤の「開」のボタンぐらい押してあげなよ。

 それぐらいのボランティア精神と言うか、他の人への気遣いが出来ない人と、一緒に仕事をしたいと思う人はあまりいないと思うよ。もし、たまたまどこかの企業の人事部の人が乗り合わせていたら、君たちは真っ先に選考で弾かれると思うよ。

 まず、自分が置かれた状況で、何をするべきなのか、何をするのがベストなのか、常に考えて行動に移すこと。

 就活云々はそれが出来てからだ!anger


 映画「何者」を見て、改めて就活を巡る問題について考えた。

 自ずと専攻で志望企業が絞り込める理系学生と違って、文系学生は選択肢が多過ぎるが故に、「自分が本当にやりたいこと」を見つけられないと、手あたり次第に当たれとばかりに迷走してしまうのだろうか?極端な例かもしれないが、エントリーシートを50社、100社に出したと言う話も聞いたりするので、他人事ながら大変だなと思う。

 しかし、こと就職に関しては、「下手な鉄砲も数撃てば当たる」と言うものではないのが冷徹な事実。


 私の息子は理系の院生で、3社にエントリーシートを提出したのみで、就活を始めてから実質1カ月程度で第一志望の会社に内定を貰えた。ESを提出した3社の内、1社には2次選考で落とされ、もう1社には最終選考で落とされたが、その結果を知る前に第一志望の会社から内定を貰えたので、息子は就活でそれほど苦しむことはなかったようだ。息子と同じ研究室の学生達も、ほぼ2カ月で全員が就活を終えたと聞いている。

 寧ろ息子にとっては、その後の修論の方が大変だったらしい。春休み、夏休み、冬休みもほぼなく、大学に泊まり込みで実験に明け暮れた学生生活だった(学部時代に教員免許も取得したので、朝から晩まで講義があり、大学・大学院の6年間、本当に勉強漬けだったと思う。私の息子は所謂秀才タイプではないので、身を削るような思いで努力しているのが、傍から見てもよく分かった。)


 エントリーシート選考すら通らない。なかなか二次選考に進めない。最終選考で落とされる。なかなか内定が取れない。

 就活では「内定」が取れない限り、「自分が認められない焦燥感」と「自分が否定されたような絶望感」に苛まれる。そうした内面的葛藤に喘ぐ学生達の姿が、映画ではSNSと言ういかにも現代的な要素を取り入れながら、ある意味、辛辣に描かれていた。

 劇中、「自分の中から出て来た~」と言う、有村架純演じる女子学生の言葉が印象に残った。良くも悪くも「就活」は自分の内面が他人によって(企業だけでなく、周りにいる友人にも)冷徹に見透かされる作業だから、誰もが突きつけられる自身の客観的評価に狼狽するのだろう。

 就活は、「根拠のない自信」が脆くも打ち砕かれる、若者にとっては耐え難い試練の時期と言えるのかもしれない。同時に就活に真剣に向き合った学生ほど精神的成長の著しい、自覚的に責任ある大人へと脱皮する、「通過儀礼」のようなものであるとも言えるだろう。


 私も若者が万年就職難の地方で、高校と短大で就活をしたが、学業成績は良かったので筆記試験は難なく通るのだが(公務員試験は国家、地方と3度合格。公務員模試も校内1位)、面接ではことごとく苦戦ase

 結局、短大2年の時に東京に本社を置く企業に内定を貰い、卒業後就職した(この時は入社試験を受ける前に、学内で成績と面接による選考があり、学校推薦と言う形で入社試験に臨んだ)

 映画に描かれた現代の就活事情を見ていると、特に自分と言う人間を巧みにアピールするプレゼンテーション能力(1分間で自分を表現して下さい、とか)や高いコミュニケーション能力が面接の場面で要求されるので、もし私が今、文系学生であったなら、正直言って就職出来る自信はない。


 日本経済の屋台骨である製造業は、事業をグローバルに展開する中で、近年、新興国の台頭により、殆どの工業製品において価格競争に晒されている(→製品のコモディティ化)

 米マイクロソフト社のように通信業界でOSをほぼ独占的に供給するような(←スマホでは些か事情が変わってきているが)画期的な発明でもしない限り、コストカットの為に人件費の削減をせざるを得ないのが実情だ。

 その流れに沿う形で(特にそれまで文系大卒者が担って来た分野で)非正規雇用を増やし、正規雇用を絞り込んだ近年の企業の雇用体制と、大幅に増えた大学生数(←最早、大学生にかつて程の希少価値はなくなってしまった)のミスマッチは、就"活"難と言う状況を生み出している。

 その意味で、どの大学の学生であるかは関係なしに誰もが志望企業の扉を叩くことができ、企業は建前上すべての学生に対して就活の門戸を開く「エントリーシート」システムは、徒に企業の人事課の負担を増やし、学生に無駄な労力を払わせる罪作りなシステムだと思う。

 率直に言えば、大学受験の段階である程度、学生はふるいにかけられている(最近は大学の入学ルートもさまざまなので、出身大学では本当の頭の良さは測れないと、さらに遡って出身高校までチェックすると言う話もあるのだとか)

 大学時代に学業や部活、或は他の何らかの活動に打ち込んだと自負する者でない限り、就活生は冷静に現時点の自分自身の能力を見極め、自分の能力に見合った企業に最初からターゲットを絞った方が良いのではないか?殆ど努力らしい努力もせずに無為な学生時代を送った者がいきなり高みを目指しても、企業からは冷たく門前払いされるだけだと思う。

 尤も、学生時代に、或は就活を通して、熱意を持ってやりたいことが見つかったのなら、それに向かってがむしゃらにチャレンジすると言う選択肢もあるのだろう。その熱意が、「出身大学」と言うフィルターを突き抜けることもあるのかもしれない。

 また、大学入学後に学ぶ楽しさに目覚め、懸命に努力を続けた学生ならば、たとえ大卒時点で不本意な就職先でも、そこでスキルを磨いて自身の市場価値を高め、ステップアップの機会を窺う転職の道があると思う。実際、既に、その事業規模に関係なく、積極的に中途採用を行っている企業はいくらでもある。

 因みに、息子の大学の研究系部活の先輩で何とも型破りな人がいたが、その人は就活→就職を経て、僅か1年後には退社して「起業」の道へ進んだ。その話に最初は驚いた私だが、いつか、誰もが知る企業家として名を馳せるのではと、密かに期待している。


 それにしても、映画の中の登場人物達が、怒りが沸騰点に達したからかもしれないが、面と向かってずけずけと相手を非難するのにはびっくりした。

 若者の正直さと言うか、清々しさを感じたと同時に、心がヒリヒリするような本音のぶつけ合いは、若者の特権なのかなと思った。その点、大人はズルいもんね。 

 
 ところで、映画「何者」が、ヤフー・ユーザーレビュー評価で2点台の低評価なのが意外だ。ヤフーは時々、実際に見た人が評価しているのか疑わしいケースがある。

 と言うのも最初期に1や2の低評価が集中することがあり、それが全体の評価を押し下げていたりするのだ。そのせいか作品によっては、映画公開から時間が経つにつれ、徐々に評価が上がって行くものもある。だから点数の高低はあまり信用しないことにしている。

 さらに、平均値で低評価ながら、評価分布がはっきり二分されている作品は、作品を見終わった後でレビューを読んでみると、これが結構面白い。中には筆力のある書き手もいてレビューに読み応えがある。「何者」もそれに該当し、レビューがなかなか面白いですgood

chain映画「何者」ヤフーユーザーレビュー欄
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