人生は日々、大小さまざまな選択の連続で、その選択次第でその後の人生は大きく変わることもあるだろうし、これまでの日々の選択の積み重ねが、今の人生を形作っているとも言えるだろう。
そして、“今の自分としての人生”は一度きりで、別の選択の人生など実際は知りようがない。
だから誰しも、「もし、あの時、違う選択をしていたら、どんな人生になっていたのだろう?」と、ふと考えることもあるのではないか?
それをジュリアと言う1人の女性の複数の並行人生で映像化して見せたのが本作である。
1989年、ジュリア17歳の秋、東西ドイツを隔てていた「ベルリンの壁」が正に崩れようとしていた。友人達と共にその瞬間を目撃しようとベルリンへ向かうジュリア。ここから、彼女の“並行人生”の物語は始まる。
ピアニストを目指していたジュリアは幾度となく立たされる人生の岐路で、自ら覚悟を持って、或いは運命のいたずらとも言える偶然に導かれるように、はたまた自暴自棄に成り行き任せで、進む道を選んで行く。
果たして2052年に80歳を迎えたジュリアの前に、どんな人生の結果が待ち受けているのか…
まず、その選択次第で、風貌もまるで別人のように異なって来るのが興味深い。
実際、家庭の事情等で離れ離れになった一卵性双生児の長期に渡る追跡調査で、壮年期に人相や老化の進度が著しく異なる結果が出たケースを目にしたことがある。“生き方”はその容姿さえ変えてしまうようだ。
かと思えば、その直後には誰の目にもベストと思えた選択が、後に思いがけず暗転することもあるのだ。
映画の中で並行して描かれる、それぞれの人生の浮き沈みが、そのまま“自分の思い通りには行かない人生”を物語っているようで、何ともほろ苦く、そして存外味わい深い。
原題は直訳すると「人生の旋風(つむじかぜ)」。時折起こる、波乱を呼ぶつむじかぜに否応なく巻き込まれる人生の理(ことわり)を表現しているのか…英題は邦題と同じ「JULIA(s)」(←これはこれで直接的で分かり易い)なので、原題は「哲学の国」を自負するフランスらしい題名と思えなくもない。
ヒロインを演じたルー・ドゥ・ラージュへのインタビュー記事によれば、撮影は物語の順番に沿って行われた為、彼女は同じ日に2人のジュリアを演じ分けたこともあったと言う。
「新しい場面が始まるたびに、そのジュリアが経験してきたこと、これから起こることに立ち返り、彼女と他の人との感情を重ねながら演じ分けて行きました。」その中で、衣装、髪型、パートナーの違いが助けになった、とも。
「自身を起用した監督の信頼に応える為」とは言え、彼女の役作りに対する真摯な姿勢と巧みな演技無くして、本作の成功はあり得なかったと思う。結局、特殊メイクを施しつつ、17〜80歳のジュリアを4通りに演じ分けたのだから凄い!
たまたま、またもやフランス映画ですが😅、「人生とはなんぞや?」と改めて考えさせてくれる良作です❗️もちろんオススメ👍。