はなこのアンテナ@無知の知

たびたび映画、ときどき美術館、たまに旅行の私的記録

ダッカのテロ事件に思うこと

2016年07月04日 | 気になったニュース
 7月1日(金)、バングラデシュの首都ダッカで、イスラム過激派によるテロ事件が発生しました。

 外国人や異教徒を狙った犯行と言うことで、銃撃戦で2人のバングラデシュ人警官が死亡した他、イタリア人9人①②③④⑤⑥⑦⑧⑨(男性4人、女性5人、内女性のひとりは近々帰国予定だった妊婦でした)日本人7人⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯(男性5人、女性2人)バングラデシュ人男女2人⑰⑱(男性は米国の大学に留学中で、一時帰省中に、同じ大学に通うバングラデシュ系米国人女性と別の米国の大学に通うインド人女性と共に食事に来たところ、事件に巻き込まれてしまったらしい。女性はアパレル関係企業の人事担当幹部で、複数のイタリア人ビジネスマンと共に来店して、今回被害にあった模様。男女共に、連れの外国人を残して自分だけ助かる道を選ばなかったようです)インド人女性1人⑳(両親の仕事の関係でダッカに育ち、留学先の米国から一時帰省中の悲劇)バングラデシュ系米国人女性1人⑲の計20人が、地元治安部隊突入前に殺害されたようです。

 殺害方法も残忍極まりなく、刃渡り1mほどの刃物で頸動脈を切られたり、身体中を滅多刺しにされたとの報道もあり、被害者の方々が恐怖と絶望感の中で自身の死を待つしかなかった状況を想像すると、あまりの痛ましさに胸が締め付けられると同時に、非情な犯人達への怒りがこみあげて来ます(その場にいたバングラデシュ人人質の証言によれば、襲撃からわずか30分で外国人の人質は、刃物や銃で殺害されたのだとか。「全員、銃で殺害された」との警察幹部の発言とは食い違いがあり、今後、事件の真相がバングラデシュ政府から本当に明らかにされるのか、疑問が残ります)

 今回のテロ事件で亡くなられた皆様やご遺族の皆様に、心からのお悔やみを申し上げたいと思います。

 私自身、夫が専門家として派遣されたJICAのプロジェクトで、イスラム圏に生後間もない幼い息子も引き連れて3年間暮らした経験があるので、今回の事件はとても他人事とは思えません。

 特にイスラム教徒を騙る殺戮集団、イスラム国の台頭以来、イスラム圏やイスラム圏出身の移民が多く暮らす欧州が混沌とする中での現地駐在の難しさをひしひしと感じています(今回の日本人被害者の殆どは事前調査の為の1カ月程度の短期派遣で、帰国間近の打ち上げの席で襲われたのだとか…不運としか言いようがありません)。同時に自分自身の経験を踏まえて、今回の事件には、日本政府や私達日本人の危機管理認識の甘さを思い知らされた気がします。世界は私達が思っている以上に、何処も安全ではなくなっているのだと。

 JICAでは赴任者本人はもちろん、家族に対しても赴任前に研修が行われ、赴任に際しての基本的な心構えや、赴任先の基本情報を伝授されます。JICAの事業の柱が開発途上国への技術支援と言う性格上、赴任先もほぼすべて開発途上国です。先進国の中でも特に治安が良く、あらゆる意味で利便性の高い日本から、そうした途上国へ赴任することは、生活にさまざまな制約が生じるのは当然のことで、赴任者にはそれ相当の覚悟が要ります。

 ただ、私は結婚前にJICAの国内にある研修センターに2年間在籍したことがあり、そこで研修を受けているイスラム圏の人々との関わりも事前にあったので、イスラム文化圏やイスラム教徒に対する不安感は皆無でした。寧ろ一般の人と比べて、彼我の違いを徒に恐れるのではなく、面白がる図太さがあったと思います。

 同時に生来の用心深さもありました。頼る者が殆どいない異国では、結局、最後に自分を守るのは自分自身です。日本にいる時以上に神経を尖らせ、用心して、生活もセーブするしかない(駐在はあくまでも一時的な滞在であり、現地に根付く移民とはやはり違います。ゴールは無事に故国に帰ること)。実際、私は駐在中に現地の水(ミネラルウォーター)が合わなかったのか、ずっとお腹の調子が悪く、それなりに異国生活を楽しんでいながらも、緊張感による気疲れも相俟って、体重が日本を発つ前より10キロ以上減りました。


 今更言っても仕方のないことかもしれませんが、今回はイスラム国側の「ラマダンに乗じて異教徒攻撃を強める」との発言を受けて、米国政府がイスラム圏在住の同朋に対して、声高に夜間外出を控えるようアナウンスする中、ラマダンの最後の金曜日の夜に、多くの外国人が利用することで有名なラストランに、イタリア人や日本人が大挙して訪れたことが、運命の分かれ目であったように思います。

 なぜなら、被害者の中に、現在バングラデシュへの開発援助で日本と凌ぎを削っているはずの中国人は皆無です。現地駐在員がけっして少なくないであろう英国人も皆無。米国人もバングラデシュ系の方がただ一人です。これは即ち、各政府による徹底した注意喚起で、これらの国々の人々は難を逃れたと言うことではないでしょうか?

 (知人の米国人女性の夫が、英国系危機管理会社のアジア地区担当幹部らしいでのすが、日本を拠点にアジア各地を飛び回っているようです。英米に数百社も存在する危機管理会社が高額の管理料<年数億円>と引き換えに、直近のテロ情報と危機管理ノウハウをクライアントに伝授しているようですね。

 これまで英米以外の国で起きたテロによる英米人の死者の少なさが、こうした危機管理会社の暗躍を伝えています。安全はお金で買うもの。それが日本では未だに理解されていないのかもしれません)。


 果たして、日本政府は、JICAはどうだったのか?インテリジェンス(諜報活動)に弱い日本政府は(イタリア政府も日本と同様か?私がイスラム圏駐在中も、有事の危機が迫った時、結局、頼りになったのは現地の大使館より、総合商社の情報網でした)イスラム国の発言に真剣に耳を傾け、現地在住の日本人に十分な注意喚起を行っていたのでしょうか?(因みに同国では昨年から、異教徒殺害が相次いでいました。英BBCによると2013年以降、イスラム過激派による犯行で、有名ブロガーや市民活動家等の同国民を含め、40人以上が殺害されているとのこと。しかし一度に20人以上もの大量の死者が出たのは今回が初めてです。それだけに現地の衝撃も大きい。)
 
 ラマダンは陰暦に従い1カ月間(だから毎年少しずつ日程がずれて行く)、日中の飲食を一切禁ずるイスラム教の宗教行事ですが、日中の絶食の反動もあって、日の入り後には各家庭やレストラン等でパーティのような宴席が設けられます。私達家族も駐在中に知人のイスラム教徒に招かれてパーティに出席したことがあります。

 この期間、イスラム教徒は老いも若きも日中飢餓感に苛まれるわけですが、同時に彼らの中には一種独特の高揚感があり、より宗教を身近に感じる期間でもあるのです。

 そうした宗教の神聖な行事も、自分達の殺戮の為に利用するイスラム国(過激派)の狡猾さ(現地の記者によれば、事件が起きた9時過ぎはこの日の断食が終了し、警察や警備関係者らも祈りの為にモスクへ行く、警備が手薄な時間帯であったらしい。その間隙を狙っての、武装集団の襲撃だったのです。普段は要所要所に警備員が立ち、午後11時にはエリアの出入り口のゲートも閉鎖される、セキュリティのしっかりした地域らしい)

 今回の事件は、爆弾を用いるイスラム国の従来のテロとは手法が異なっており、イスラム国が直接関与したのではなく、イスラム国に感化された現地イスラム過激派の犯行との見方もありますが、それはそれでネットによってイスラム国的な思想が拡散される恐ろしさをまざまざと見せつけるものです。

 しかも近年はイスラム国(シリア・イラク)だけでなく、旧来のアルカイダ(イエメン・アルジェリアを中心に世界各地に拠点を持つ)タリバン(アフガニスタン、パキスタン)をはじめとする、世界中に点在するイスラム過激派組織(他に有名なものだけでもソマリアのアッシャバーブ、ナイジェリアのボコ・ハラム、フィリピンのアブ・サヤフ等々)が、自身の存在をアピールする為に、競い合うように各地でテロを起こす危険性が高まっています

 そして最も腹立たしいのは、こうしたテロの先兵となる者の殆どが自国でうだつの上がらない人間であり(過激派組織は積極的に彼らの受け皿になっている)、彼らがイスラムの名を借りて人々を殺戮し、女性子供を性奴隷にし、インフラや貴重な文化遺産を破壊して、歪んだ自己顕示欲を満たしているに過ぎないと言うこと

 今回の犯人は多くが地元の富裕層の出で、10代~20代の現役の大学生や卒業生、有名高校卒の予備校生とのことですが、こういう形でしか自分の存在感をアピール出来ないこと自体、エリートでもなんでもないのです(ネット環境が整っていない開発途上国に住んでいながら、犯人達は富裕で高学歴の特権階級であるが故に、ネットを通じて容易にイスラム国(IS)の情報に触れられ、感化され易いと言う皮肉。さらに、リーダー格の犯人はマレーシア留学の経験があり、留学先でイスラム国工作員との接点を持ったのではないかと見られています。今回の犯人には、バングラデシュ政府与党議員の息子も含まれているらしい)。その精神構造は、バイクのマフラーを改造して、無駄にふかして騒音をまき散らしている暴走族と何ら変わりありません。

 今回の被害者の中に、息子と大学院で同窓の方もいらしたことを今朝知りました。学生時代から国内外のインフラ整備に情熱を燃やしていた、志の高い若い方が犠牲になられたことが、本当に残念でなりません。生きておられたら、今後どれだけ活躍されたことでしょう。

 そして、3日にもまたイラクで爆弾テロにより、100人4日の時点で200人→6日の時点で250人を超える犠牲者が出ています。ラマダン明け休暇を直前に控え、地元のショッピングセンターに大勢の人が詰めかけたのを狙った自動車爆弾テロです。爆発の後、火災が発生したのが、被害をさらに大きくしたようです。何と言うことでしょう…


 愚かな人間の勘違いな自己満足の為に(そんなに死にたいなら勝手に人知れず死んでくれ!腐った目立とう根性なんてクソくらえだ!)無辜の善良な人々が犠牲になる今の状況は異常であり、世界中で知恵を絞って、この状況を変えて行かなければいけないと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「目から鱗」「うぬぼれ鏡」... | トップ | 今日はUSJに来ています♪ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。