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子どもの頃は親が大病を患い入退院を繰り返したこともあり、実家は貧乏続きで家族旅行もままならなかったのですが、それだけに旅への憧れは強く、日本における旅番組の元祖とも言える「兼高かおる世界の旅」を見たり、小中学生の頃は店番をしながら日本地図や世界地図を眺めては、見知らぬ土地へ思いを馳せていました。
私にとって生まれて初めての旅行は中学校の修学旅行で、海外旅行は新婚旅行と遅いスタートでしたが、以来、国内旅行は43都道府県を訪れ、海外は今回の旅行で20カ国訪問を達成しました。海外は気に入った国を何度か訪れているので、海外渡航数としては30回を数えます。
旅の醍醐味は何と言っても、旅先での人々との触れあいです。現地の人々はもとより、同じ旅行者として現地を訪れた他国の人々と言葉を交わすことは、旅の思い出をより深く印象づけるようです。もちろん、団体ツアーに参加した時には、ツアーメンバーとの触れあいも楽しいものです。
ですから、臆せずに積極的に自分から話しかけることが多いです。
今回訪ねたスロバキアでは、添乗員さん曰く、「スロバキアでは2人しかその存在を知らない現地の日本語ガイド」の流ちょうさに驚き、思わず聞いてしまいました。
「日本語がお上手ですが、どこで勉強されたのですか?」
すると意外にもスロバキア国内で、スロバキア人教師から学んだとのこと。その教師は日本留学を経て、現在はスロバキアの大学で日本語の指導をされているらしい。柔らかく、ユーモアに富んだガイドさんの解説は、おそらく先生譲りの部分とガイドさん自らの人柄によるものなのでしょう。スロバキア滞在は僅か2時間弱と短いものでしたが、彼女の素晴らしいガイドで、スロバキアと言う国の一端が窺えたし、スロバキアと言う国に対して好印象を持ちました。
元々ガイドの方は英語が専門らしいのですが、ひとつの言語をマスターすると、語学学習のコツを掴んで、他の言語も比較的容易にマスターできるのかもしれませんね。私自身、大学でイタリア語を学んだことで、同じくラテン語を源流とするスペイン語やフランス語に、以前より親しみを感じるようになりました。似通った単語が多く、構文も同じなので、例えば(美術用語を多用している)美術館のキャプションなど、何度も目にするうちに、大体の意味が理解できるようになります。
オーストリアはウィーンの美術史博物館のトイレの待ち行列では、前に並んでいた白人女性の方から声をかけて来ました。
"Are you Japanese?"
Yesと答えると、"You remind me of Tokyo. I used to live in Tokyo for years.”と予想外の展開。最近、ヨーロッパでは店でも道端でも「ニイハオ」と声をかけられることが多いので、(中国マネーがヨーロッパを席巻しているのを承知しつつも)正直良い気持ちはしないのですが、日本在住経験者だから、日本人と見分けがついのでしょうか?続けて"Tokyo is well organized city. I love it!" と称賛しきり!こんな風に褒められると何だか嬉しくなりますね。出身が米Indiana州とのことで、それを受けて?、私の伯母のひとりが結婚してMissouri州に住んでいる旨を話すと、"Oh! It's a small world"と返して来ました。さらにトイレの壁の一部が美しい緑の葉の壁紙なのに私が反応すると、すかさず"Kawaii…"と日本語も飛び出し…そして"Have a nice trip"と言う言葉と共に、彼女はトイレの中へ。私も"Same to you!"と返しましたが、ほんの数分のやりとりが、とても楽しく感じられました。
帰りの空港で飛行機への搭乗を待っていると、後ろに並んでいた年配女性が「搭乗にはパスポートも要るのかしら?」と聞いて来ました。国際線なので必要のようですよ、と答えると「ありがとう」と言いながらウィンクです。お茶目だわ。そこから会話が始まって、どうやらオーストラリアから団体ツアーで来たらしいことが分かりました。私が日本人と知ると間髪を入れず、「ああ、訪ねてみたい国だわ」と一言。それが社交辞令でも嬉しいものです。何より、咄嗟にそんな言葉が出るのが素敵です。私も見倣いたい。
以上は英語でのやりとりでしたが、俄仕込みの現地語でも、それなりにコミュニケーションは成り立つものです。外国人の私がたどたどしくも現地語で挨拶すると、皆さん、本当に喜んでくれ、当初は仏頂面だった人も途端に相好を崩したりと、挨拶の効果は絶大でした。
午後の自由行動の時間に訪ねたプラハの国立美術館のひとつで、近代美術を収蔵展示しているヴェルトルジュニー宮殿(と名前が付いていますが、近代的なビルです)では、午前中にガイドさんから教えて貰った挨拶の言葉3つ「ドブリーデン(こんにちは)」「ディクユー(ありがとう)」「ナスフレタナ(さようなら)」を館内の職員と思しき人々全員にかけたところ(目が合ったら、とにかく挨拶!)、皆さん、とても喜んでくれました。中には別れ際に私の肩を叩きながらチェコ語で何かを言ってくれた方もいたのですが、いかんせんチェコ語は俄仕込みの3語しか知りません。しかし満面の笑顔から、その女性がとても喜び、親しみを込めて私の肩を叩いてくれたのは分かりました。
ブダペストの土産物店でも、試飲のトカイワインのグラスを返す時に、覚えたてのマジャール語で「ありがとう(ケセナム)」と言うと、店員さんから「Kawaii」と返されました。
これからも、どこで、どの国の人と、どんな出会いがあるのか、神のみぞ知るですが、できればお互いが楽しく笑顔になれるような出会いにしたいものです。
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