こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

愛の始まり

2016年02月04日 00時57分44秒 | 文芸
生まれつき気の弱い男の子だった。

親も認めた内向的な性格は、

成長しても一向に変わらない。

だから友達も恋人も作れなかった。

 三十代のころ

心をときめかす相手と知り合った。

十以上年の差がある彼女。

私に向けられた好意はすぐ分かった。

男の自分が態度を明らかに

しなければならないのだが、

彼女を前にすると、

素知らぬ風を装ってしまう。

 成人式を迎えた彼女が、

式の帰りに私の店を訪ねて来た。

あたりさわりのない言葉で迎えた私に、

彼女はポツリと言った。

「独りで頑張っているあなたを

眺めていられないから、

あたしがお嫁さんになってあげる」

 いつもの冗談かと

本気にしなかったが、

彼女の顔は真剣そのものだった。

その時だった。

自分でも意外な言葉が口をついて出た。

「からかうなよ。

ただ君を幸せにする気持ちは、

俺、

だいぶん前から持ってるんだ」

 内気な男の

精いっぱいな告白だった。

 いまも妻との力関係は

変わっていない。



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