白河会津橋から / 阿武隈川と那須連山
春は草木も老人も元気にする
8時30分 朝一番に在宅訪問
愛車キャンバスは走る
青山ツヤさん(85歳)
冬の季節は
好きな草取りも出来ず
外に出ることはなく
ジッと炬燵にうずくまったり寝たりしている
家に閉じ籠りのためか
青白い顔で精気が失せ
もんぺと紙ぱんつはずり落ち
腰とお尻を半分露出したまま
訪問するたびに
「〇月△日で死ぬのだ」と
聞こえるように呟くが
その日に死んだことは一度もなかった
うつと認知症が重なりあい
「死にたい」症候群が
蟷螂の首のようにもたげる
阿武隈川が流れる東北の南外れ
桜の枝を見ると蕾が膨らみ
春の訪れを感じる
ツヤさんの家は農家
野菜畑や畦道は
枯草のなかに青草(みどり色の草)が生えてきた
それはまだ処々の青草でまだ背丈も短い
青草を目にしたツヤさんは
意気揚々と右手に小さな鎌を持ち
(草取りにはまだ早い)幼い草を根こそぎ堀起しとってしまう
春になり
草取りをすることで元気回復
春の陽射しを浴びたことで
顔肌はツヤツヤ
春が来た
土から這い出す虫のように
ツヤさんの心も躰も
蠢いてきた
枯草のなかから青草が生え
木々は蕾を膨らませ
桜が咲くのももう少し
春よ来い