老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

幸せな爺様

2020-09-12 16:28:29 | 老いの光影 第6章 「老い」と「生い」
1673 幸せな爺様


         月1回のネイル(右手親指限定)snoopyです! 皺皺の指ですね。

ショートステイ(短期入所生活介護)の利用は
認知症老人にとり「諸刃の剣」になる場合があります。

認知症老人がショートステイを利用されると
おもらしが増えたり、”ぼ~”としていて認知が進んだような感じがしたり、
自分で「できた」ことが「できなくなった」りする。
混乱や不安が増幅し、自宅に戻ってから介護者の手間が増えてしまう。
介護休息の目的で利用したが、かえって疲れてしまう・・・・。

大森昭治さん(90歳)はアルツハイマー型認知症と糖尿病を患っています。
息子夫婦家族と暮らしています
2世帯住宅のため実質的には昭治爺様は1階で「ひとり暮らし」のような状況にあります。
最近は、間に合わず、掃き出しからドアを開け立小便をしたり、紙パンツを換えずに何度も排尿をしています。
ズボンの前は尿で滲みています。

そんなこんなで自宅での生活は難しくなりつつ、長男、長女は将来は特別養護老人ホームの入所を考えています。
それに先立ち、まず特別養護老人ホームが併設しているショートを9月から2泊3日の期間で利用することになりました。

デイサービスは月、水、土と利用していたのですが
ショートの利用によりデイサービスは月と土となり
ショートは毎週水曜から金曜日です。

最初のショート利用は、スムーズにいくかいかないか、不安でした。(コロナで面会できないだけに状況がつかめないが困る)
子どもたちやケアマネの不安をよそに
本人はショートでの泊り先は、「旅館に泊まってきた、温泉に入ってきた、とてもよかった」、と
デイサービスの職員に話され、満足そうな表情でした。

特別養護老人ホームの風景が、どう旅館に映ったのか
昭治さんにしかわからないけれども、彼に「素敵な仲居(介護職員のこと)さんがいたかい」と尋ねると
ニヤッと笑っていました(施設長は支配人になります)。






”在宅で生活するのは難しいのでは・・・" ➌ ~家で暮らしたい~

2020-09-12 04:03:32 | 老いの光影 第6章 「老い」と「生い」

                雨に濡れ色濃く咲く露草

1672 ”在宅で生活するのは難しいのでは・・・" ➌ ~家で暮らしたい~

春男さん(70歳)は、肺癌であることは理解されているが、
癌の症状が予想以上に進んでいることについての認識は甘かった。
ステージ4の段階にあり、彼自身が癌をどう受けとめているかは、知ることはできずにいた。

東京の下町で定年近くまで働き、定年後に生まれ故郷に帰ってきた。
アパート住まいで独身生活を通してきた。
2階建ての家に憧れ、ひとりで住むにはもったいないくらいであったが2階造りの家を建てた。
映画を見るとか、お茶を飲むとか、旅行に行くとか、そんなふうなことをしたことはなく、
年に2,3回、知人と川釣りに出かけるのと盆正月に実家に帰るくらいであった(実家は甥夫婦が継いでいた)。

担当医からは「覚悟してください」、と言われたが、
いま症状は小康状態にあっても、急激に悪化し命が短くなることもあるかもしれない、という意味なのか。
”命ある間に何をしたいのか” ”やりたいことはなにか” と彼に尋ねてみたくなるが、言えずに抑えてしまっている自分。

「痛み」に打たれ弱いのは彼ばかりではなく、一般的には女性に比べ男性は痛みに打たれ弱い生き物なのであろうか・・・・。
ときどき様子を見にきてくれる実姉やヘルパーに対し
彼から「あれが食べたい、これが食べたい」、と話す人ではないので
「食べたい物」を聞き出したり、果実や饅頭が好物なので、買ってきてあげ食べさせて頂きたい、とお願いをした。

残された晩年、残された時間、春男さんの楽しみは何か、何がしたいのか、
自分が建てた家でどう過ごしていきたいのか。
(この問いかけは彼に対してだけではなく、自分自身への問いかけでもある)
癌も進行し痛みも増し拡がっていく。
自宅と病院の間を往復することも増えてくる。

9月15日に退院し、自宅での生活が始まる・・・・。