そうなんだ。

外国語で知ったこと。

初めての添乗   番外編(エッセイ)

2013-05-11 13:00:00 | エッセイ
 旅行会社に勤めていたとき、ピンチヒッターとして
カナダまでツアー客を連れていくことになった。
しかし、資格こそ取得しているものの、カナダも添乗も
未経験の私が平常心でいるのは難しい。
そんな折、部長に手招きされた。
 
 盲腸の手術を受けた事があるかと聞かれたので、ないと
答えた。部長はにっこりとうなずく。
「では、盲腸になったとしよう。あなたは執刀医に事前の
挨拶をしますね?」
 
 全く話が見えないながらも、
「これまでに手術を受けたことがないのですが、よろしく
お願いしますとご挨拶するでしょう」
私の返事に再び上司はうなずいた。

 のんびりした口調で話しは続く。その場で医師が打ち明
けたら、患者はどう受け取るか……。
「実は、私も手術を任されるのは今回が初めてです。頑張
りますのでこちらこそお願いします」

ここで、明かしてはならぬ“初めて”が、医師および
添乗員にあるという例え話だとわかる。

 部長が遠回しに釘をさしたのは、先に言い訳をしてしま
った添乗員がいたのだろう。
「カナダも添乗業務も初めてですが、頑張りますので
よろしくお願いします」
この挨拶で、私の気持ちもどんなに楽になることか……。
しかし、お任せと安心を買ったはずの添乗員付き海外旅行
も、肝心の添乗員が初添乗と知れた時点で、お客様は不満
と不安を抱き、ツアーは失敗だ。  

 顧客に対して『知らぬが仏』は失礼な言い様だが、
これも旅のサービスとご容赦頂きたい。

 天候にも恵まれた。満足頂いたツアー客からは、成田解散
時に心付けまで手渡され、ほっと胸を撫でおろす。
 部長の遠回しながら的確なアドバイスのおかげで、私の
秘密の「初」添乗は無事終了した。    
      
 -おわりー

公募ガイドの先生っ、これでどうだっ!
うそうそ・・・、 
これはいかがでしょうか? 
勉強になりました。 ありがとうございます。
コメント (6)
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