WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

彩(aja)

2015年01月25日 | 今日の一枚(S-T)

●今日の一枚 412●

Steely Dan

Aja

 ジャケットのミステリアスな女性は、世界的に活躍したファッションモデルの山口小夜子さんである。パリコレクションにアジア人で初めて起用され、1977年には『ニューズウィーク』の世界のトップモデル6人も選ばれた人だ。その山口小夜子さんも2007年に亡くなってしまった。

 高校生や大学生の頃、夢中になっていても不思議ではなかった。私がこのアルバムに出合ったのはずっと後のことだ。ラジオでグループの名を何度も聞いた記憶は確かにある。しかし、コルトレーンを中心に生々しい音楽をフォローしていた当時の私にはピンとこなかったのかもしれない。このサウンドに共感するには、当時の私はあまりに子どもで、あまりに貧しかったというべきかもしれない。

 スティーリー・ダンの1977年作品、『彩(エイジャ)』である。スティーリー・ダンは、ドナルド・フェイゲン とウォルター・ベッカーを中心に、その都度いろいろなスタジオミュージャンたちによって構成されたユニットである。高度な演奏技術と複雑なアンサンブル、そして録音技術への深い造詣をベースに、ソウルやファンクとジャズを融合させたサウンドで、独特の世界を形作っている。このアルバムでも、ウエイン・ショーターやスティーヴ・ガットというジャズ畑のミュージシャンが起用され、重要な役割を果たしている。もう30年以上前の、あるいは40年近く前の作品だということに、改めて驚かされる。

 現在でも聴く数少ないロック作品のひとつだ。リアルタイムで聴いたアルバムではないのに、不思議なことだ。ここ数年、時々スティーリー・ダンを聴く。この『彩(エイジャ)』と『ガウチョ』がよく聴くアルバムだ。彼らがやろうとしていたこと、めざしていた方向性、時代の中での革新性と位置づけが、今になってよくわかる。今となっては、リアルタイムで聴かなかったことが悔やまれる。そのサウンドの意義を理解できなかったことが口惜しい。同時代にスティーリー・ダンときちんと出合っていたなら、私の青春は何かもっと違うものになっていたかもしれないと思うことすらある。