王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

「雷撃深度 19・5」 を読む

2009-08-27 00:00:24 | 本を読む
池上司著 文春文庫刊 「雷撃深度19・5」を読みました。
夏前に「真夏のオリオン」という日本映画が公開されました。見ようかどうしようかと思って「映画案内の公式HP」を見るとこの「雷撃深度19・5」が映画用の脚本の元ネタの様に紹介されていました。
早速図書館に予約を入れたのですが2ヶ月して入手したものです。

小説の縦糸は昭和20年の大東亜戦争中「日本のイ58潜水艦が米国の重巡インディアナポリスを雷撃し撃沈した」事実です。
横糸に「日本戦略物資輸送船団の護衛艦隊司令の少将」「イ58による少将の救助」「同少将による潜水艦の指揮」「特攻兵器回天を攻撃に使わず重巡を雷撃する秘策」が絡みます。

20年3月沖縄戦に参加したインディアナポリスは神風特攻機に突入され修理の為
メインアイランドで補修工事。7月の完了と共に「原子爆弾」の運搬を命じられます。
その内2個はテニアン島のB29基地へ届けます。余談ですがこれが広島と長崎に落とされた原子爆弾という訳。
さらに残りの1個は「」マッカーサーの要求でマニラに届ける 加えてマッカーサーの日本攻撃に関して独断専行を嫌う米軍の首脳部が「7月26日以降マニラ-グアムを結ぶ線に戦略物資を運ぶ大型船舶が航行する」との情報をリークして日本軍の攻撃を期待するとの高度の政略が下敷きになっている。と手の込んだ筋立てになっています。

この3発目の原爆に纏わる話が池上氏の創作なのでしょう。
又如何に船団護衛司令がイ58に移乗するか?
ヒ八八船団の米軍攻撃による日本船団の悲惨な記述は他の例も含めて事実に近いのですが少将が敵潜水艦に乗り上げて沈没した貨物船からイ58に救助される当りも創作でしょう。そして重巡の艦長と少将は少将の駐米時代の知己と言うか水雷理論戦に関するライバルという出来です。

あの手この手で潜水艦が重巡を撃沈します。
この時約900名が海上に投げ出されますが救助に日数が掛かり3百数十名しか
助かりませんでした。映画ジョーズで鮫狩りの漁師がインディアナポリスの乗組員で漂流中鮫に仲間が襲われたのでその復讐だ--見たいなセリフを吐く場面がありました。

さて表題の「雷撃深度」が良く分かりません?
通常「潜望鏡深度」という海軍用語があり「イ58では16メートル」に設定されているようです。恐らく艦底から19メートルになると潜望鏡が波間に2-30センチ出るよう機械的に自動調整されているようです。
少将は重巡雷撃時点で「潜望鏡深度19・5メートル」を命じます。常より50センチ深いのですから「潜望鏡は水面に出ません」

そこで50センチは手動で持ち上げるのですがこの動作を通じて慎重に潜望鏡の海面への突出を避けた配慮を示しているようです。
この時代、潜望鏡に頼らぬ魚雷攻撃は出来ませんでしたから手動で潜望鏡を59センチ上げたとすれば魚雷発射時の潜望鏡深度は19・5メートルで雷撃深度19・5メートルと云い変える必要はなんはてなんでしょう?と本筋と関係ない事を訝って見ました。

さて「真夏のオリオン」はどんな風に脚本が書かれたのでしょう? 
折があったら見たいものです。


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