王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

「パンツの面目 ふんどしの沽券」を読む

2009-07-07 00:39:42 | 本を読む
筑摩書房発行米原万理さんの「パンツの面目ふんどしの沽券」を読みました。
尊敬するブロガー「あれこれ随想録」の和尚様が5月に紹介されていたので本書を知り題名が愉快そうなので呼んでみました。
題名よりずっと中身は真面目でした。

冒頭ソ連邦での1950-60年代のエッセイが紹介されます。
年頃の娘が男と割り無い仲になりたいが「手作りのボロパンツ」が恥ずかしくて越えられない。友人から(東)ドイツ製の繊細で美しいパンツを身に着けて思いをとげる というお話。
情報公開の時代を受けこの手の作品も知る事が出来るようになった由。

そしてプラハのロシア人学校で米原さんが小学生時代「家庭科で最初に習うのが下着のパンツ作り」と言ううその様な本当の話。
そしてロシアでは第二次世界大戦が終了するまで工業生産品は無かったそうです。
戦後と言えどもパンツの工業生産量は十分なものでなく手作りであり続けたと。

戦後のドイツで下着のまま町を練り歩いたソ連人将校夫人の話が出ています。彼女達は綺麗なレースの縁取りがついたシルクのパンツやブラジャーが下着だと夢にも思わなかったのである--と断じている。
爺も若い頃この珍妙な記事を見た覚えがある。そう解説されると納得。

話はシベリア抑留時代の日本人捕虜の話:
尻を拭く紙の配給が無かった事
ソ連兵は将校までパンツを穿かない上に尻を拭かないから紙を配給する発想がなかったらしい。

話はあれこれ跳んで爺が興味があったのはふんどしの話。
ふんどしと言うと日本精神の体現みたいに思われているがそうでもないらしい。
北方系のパンツ、南方系のふんどしと腰布或いは腰巻(loin cloth-この発展系がスカートで中は何もつけない)の混合文化らしい。
昔はふんどしも腰巻もはかまも混在していたらしい。
書中いつごろかふんどしを穿いたかとの見解に「地獄の鬼は下っ端ほどふんどし、その上になるとふんどしの上に虎か獣の皮を腰布風に巻きつけている」そうだ。
爺は毎日新聞社刊「地獄ものがたり」の絵を見た。


確かに地獄の鬼はふんどしを締めている奴もいれば腰布風の鬼もいる。又地獄に落ちた男はふんどしと腰布風のが入り混じる。女は大体腰巻姿。
中世に中国から渡来した仏画の影響は受けていようが下々の下着は当時の日本の姿であろう。
あれやこれや「軽く読んでもしっかり読んでも」軽い表現に見えて重く効いてくる
米原万理ワールドです。
お勧めします。


蛇足:
米原万里さんと言えば父米原昶(いたる)氏が共産党の幹部でありテェコのプラハに5年赴任されたのに家族で行を共にされました。そんな事で一言も判らないロシア語の小学校に入学された由。

帰国後苦労され大学・大学院でロシア語を習得。90年代にはエリツイン大統領の同時通訳として名を上げました。
その傍らエッセイや随筆の面でも才能を示しました。
95年には「不実な美女か貞淑な醜女か」で読売文学賞を受賞しました。
爺も一読してからすっかりファンになりました。
残念ですが06年ガンで逝去されたんです。

写真:
地獄の青鬼(白ふんどし)

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-09-10 16:17:37
ソ連 軽化学は不得意だったんだ。
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なるほど (浜の偏屈爺)
2009-07-13 13:50:21
斉藤様 なるほど感心しました
返信する
女性のふんどし (斉藤)
2009-07-11 15:59:08
最近女性のふんどしがはやっているようですが、この本にも紹介されていますね。

「ふんどしビキニ調査団」

こちらの「女性のふんどし」コーナーも結構本格的に調べてあります。

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