王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

「終身刑の死角」を読む

2010-12-17 07:03:41 | 本を読む
つい先日も「裁判員裁判」で鹿児島の老夫婦殺しで「死刑か無期か」と想定された被疑者に「推定無罪」が出ましたね。
日本の刑法が「死刑」を規定している事には国際人権組織が非難を浴びせたり09年5月から裁判員裁判制度が始まる事もあり「死刑に替えて仮釈放のない無期懲役」を制定したらどうか?との動きも有ります。
さて浜爺も「そんなに死刑が悪ければ仮釈放なしの無期懲役刑を設ける事には賛成でした」
過日ブログの知人「りゅうちゃんミストラル」の管理人りゅうちゃんが11月22日に「終身刑の死角」について言及していたので図書館から手に入れて読んでみました。
本は洋泉社発行、著者は河合幹雄氏で現在桐蔭横浜大学教授の方です。
さて後書きによれば著者は上述の世相を反映し08年5月から超党派の議員連盟が「仮釈放の無い終身刑」の導入をすべしとの方向に動き出した事を捉え「無謀な法案阻止」を目的として執筆したそうです。

冒頭部分で「犯罪白書」等に言及、犯罪件数は必ずしも激増していないとか「凶悪犯罪」も同様との氏の見解が述べられますが果たしてそうなのでしょうか?
浜爺の生活実感と一致しません。

それはさて置きに知識として日本には交通事故犯罪を除き毎年3万人が刑務所に入り前から入っている受刑者とあわせ7万人が刑務所にいる。

この3万人の多くは再犯者で「知能指数が低い(概ね70前後)、最終学歴が中卒以下、そしてその他のハンデ」が加わっている人だそうです。

又刑務所に入る人の年齢も高齢化して「介護や看護そして治療」を要する人の数が増えているそうですよ。その為「刑務所のバリアフリー化」を真剣に考慮しなければならない現状とか。

さて議連のメンバーは「死刑反対派」と「仮釈放なしの終身刑派」と入り乱れているそうです。これは「死刑廃止」に至る過渡期としても大切なのは「仮釈放なしの終身刑」は問題が多いとの指摘でしょう。

「死刑」に較べて「仮釈放なしの無期懲役」は軽い?或いは優しい様に見えますがそうでもないとの指摘で以下は河合氏の見解です。
日本の少なくとも刑務所の運用は「なるべく入れずに入った者は早く出す」の精神で成り立っています。 
そして「お勤め(刑期)を尽くすか更生を認められて仮釈放される事を収監者に対する餌と言うか希望の光にして刑務所内の治安維持が図られている」が故に刑務の一線は拳銃で武装しなくて済んでいます。
それが「刑務所に入ったら死ぬまで出られないと決まった収監者と刑務員がどう関係を維持するか?」刑務システムを再構築するほどの難事のようです。

その他多くの囚人を収監する刑務所の不足と社会復帰の難しい高齢で無技能の人達の老後を広い意味で「社会保障の最低線と捉えセフティーネットを構成する考え方が必要かも知れません」
安全な社会を維持する為に必要なコストを生活保護と別な形で考える機会を得ました。
1億2千7百万人に対し年3万人の犯罪者はざっと0.0023%で銀行金利並みの低率です。「死刑に替えて仮釈放の無い無期懲役」を考える良い資料です。

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