安威川の土手に冷たい秋風が吹いた
大体大の陸上部が走っていた。
橋の下でタバコを吹かした
玩具問屋の倉庫でちんたら仕事をしていたら
シゲルと二人、普段は仕事場で見かけない専務か何かに呼び出された
専務は人相の悪いおっさんだった
「ちゃ~でも飲みにいこか」
近くの喫茶店に3人で入って水が運ばれて来て
専務が開口一番こう言った
「お前らはあかんな、将来ろくなもんにならんやろ」
そんな事を言われながら、シゲルと二人コーヒー飲みながら
ただ「えへへ」と聞いていた。
あくる日にシゲルが事務所に呼ばれて泣きながら帰って来た
「わし‘クビ,やて明日はお前や言うとったぞ」
僕はどうせクビになるんだったらと事務所に行って
「僕ぅ~今日で辞めさせてもらいます」って
その日、二人して元のプー太郎の戻った
和歌山のホテルに2か月ほど住み込みのバイトに行って
帰ってから元のプー太郎生活に戻った
ホテルで知り合った大学生たちとの付き合いも無くなり
バイトで貯めた金もパチンコですぐに使ってしまった。
親もだまし尽くして進退が窮まった
そんな時に同じく文無しでパチンコ仲間のシゲルが近くのバイトを探して来た
玩具問屋の倉庫番だった
玩具屋事に注文品を仕分ける
そう言う仕事だった
倉庫には頭が固そうで小狡そうなじじいと
頭の悪そうなよう肥えたオバハンがいた
バイトは5時までだった
バイト初日に5時なった
じじいが
「早う、タイムカード押してこいや!それからまた仕事やで」
「ええ、5時までとちゃいますのん?」
「あほか、給料が出るのんが5時までで仕事は7時までや」
「???」
そんなアホなと思った
しげると二人してとっとと帰った
そんな二人の後姿を横目でけったくそ悪そうにじじいは眺めていた。
よく肥えたオバハンは僕らの仕事ぶりを見て
ニコニコしてよくこう言う事を言った
「あんたら、うちと一緒やな」
‘できない,仲間が増えたと思ったんだろう
頭も動きも鈍いオバハンはここの仕事場にしがみ付くしか生きてゆくすべが無かったのか
「アホ、ボケ」何を言われても黙ってモタモタと仕事をしていた
僕らもあんまし仕事の役に立ってないのがオバハンにも分かったらしい
その頃は僕もシゲルもただ時間を潰したら銭が貰えると言った意識だった
仕事も注文品の玩具を倉庫から探して来るだけだったから‘ラク,だった
大きな倉庫だったんで仕事をしている‘ふり,をしてよくサボった
倉庫の奥でサボる場所を探していたら先にシゲルがサボっていた
そんな処をじじいが見ていた
じじいは倉庫番の監視係でいちいち事務所に報告してたらしい
仕事をクビになってから
シゲルはしょっちゅーこう言う事を言った
「わしらに‘かたぎ,の仕事は無理やで」
「そしたら、どないすんねん」
「軽トラ買って百姓から野菜買うてきて団地で売るんや」
「それに軽トラ持っといたら新聞でも屑鉄でも集められるやんか、アカ(銅線)は高う売れる言うて誰か言うてたで」
弱冠20歳を前に二人して将来を語った
人生が終わっていた