ベッドにもぐりこんで微睡んでいると薄らと昔のシーンが蘇って来ることがある
夜更けの電車に一人、僕は乗っている
乗客はまばらで、ガタンゴトンと電車は闇を走っている
街の灯りは人魂を曳くように後ろに流れ、
たまに警笛がピーと鳴りカンカンカンと点滅した踏切を追い越してゆく
ただそのシーンだけが思い浮かぶ
昔、橋が架かってない時代に四国から都会に出るには飛行機か船に乗るしかなかった
高校を出た頃うちの田舎から神戸港行のフェリーボートが出ていた
田舎の港を出航するのが夕方の5時そして神戸港に着くのが夜の10時40分
ドラの音と共に故郷の岸壁を離れる
学校の卒業とともに殆どの若者がこの岸壁から故郷を離れた
兄や姉もそして母も
皆、一人ぼっちで都会に向かい
一人で見知らぬ土地に立ち向かった
そしてある者はまた一人でこの岸壁に戻って来た
神戸港に着くと宝石を散りばめた不夜城のような夜景が僕を迎えた
あの瞬く灯りの下一つ一つにいろんな人生がある
乗船客もまたそれぞれの目的地に向かって船を降りる
僕の場合、阪神の青木駅か芦屋駅で梅田行きの電車に乗り換える
そして梅田から終電間際の阪急京都線に乗った
シャッターが閉まり人通りの途絶えた寂しい商店街を抜け
曲がりくねった路地のどん詰まりのアパートにやっとたどり着く
裸電球のスイッチを入れ万年床に潜り込む
遠くで回送電車のピィーと言う音が聞こえた
人生と言うのは夜空を永遠に走り続ける銀河鉄道に乗ってるんじゃないだろうか
目的地は分からず、まばらな乗客は家族だったり、友人だったり、
走ってる途中で警笛が鳴ったり流星群に襲われたり
誰にもその終着駅は分からない