実家は白い砂浜の広がる浜辺から歩いて1分
遠浅でおだやかな波の打ち寄せる浜は夏に多くの海水浴客を呼んだ
浜に面した国道沿いに防風林の松が植えられ台風からの被害を防いだ
そんな風光明媚な景色が続く20キロ程が僕の通った高校までの道程だった
幾つかの港を過ぎ幾つかの岬を回り幾つかの大きな橋を渡った
僕は自転車通学だったが何人かの女子生徒とはバス通学だった
雨の日なんかは僕もバスを利用していて僕の乗るバス停は路線バスの終点だった
バス停の名は浜の前にあって○○海水浴場となっていた
同じバス停を利用するのは一級上のレイコさんだった
おしとやで綺麗なレイコさんは学年のマドンナ的存在で
子憎たらしい中学の先輩連中が皆、レイコさんに惚れていた
レイコさんの家は浜の前の高台にある大きな家だった
レイコさんの家の前に浜に降りる堤防があって
僕はいつもその堤防にボールをぶつけて一人キャッチボールをしていた
必然レイコさんの家を眺めながらボールを投げるんだが
同級生じゃ無いので気に留めなかった
レイコさんとは高校も同じだった
進学校だったので子憎たらしい中学の先輩連中はいなかった。
だから雨の日のバス停はレイコさんと二人だけだった
田舎の路線バスはほとんど乗客がいない
次の町までいつもレイコさんと二人
帰りも途中のバス停で皆、居なくなるので
数キロの道のりはレイコさんと二人だった
あの白い砂浜に面した小さなバス停
バスを待つ間、同じ高校に通う二人だけど
一度も会話をした事がなかった
別にレイコさんが好きだったわけじゃなかったが
ちょっとした思い出だな
レイコさん今頃どうしてるだろう